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デザイナーとしての教師集団のおもしろさ

明日から会議、今日の学校は試運転期間。まだ生徒もほとんど来ておらず、先生もまばら。こんな時だからこそ、3学期の授業について話し合いませんかーと、同じ学年団を持っている先生たちから声かけいただきました。嬉しい!というのも、前任校では1人で単独クラスを20年近く持ち続け、誰かと一緒に授業を考えるということをほぼしてこなかったから。ということで、今日の打ち合わせがどんな風に進み、どう決まったかをちょっとだけご紹介しますね!

学習者中心に授業をデザインする

悲しいのは、「前年度の計画これだったんで、よろしく」と下ろされることだとある非常勤の先生が言っていた。これでは何にもできません、と。そこまで酷くなくても、授業計画は先生が計画し、遂行するだけになっていないでしょうか。今一緒に教えている先生たちはそうではなく、生徒の学びの体験を編み上げていくように授業を一緒に考えられるのがすごく心地よいです。授業はあくまで生徒のもの。だから、ガチガチに計画するのではなくゆとりを持たせて進めながら、生徒の様子を見て変化していくこともあります。

学習者はBefore Afterでどう変化するのか

授業を受ける前と後、生徒にどんな変化が起きるでしょうか。授業が終わった後の会話をイメージしつつ、教科書の内容を片目で追います。文法項目などは意識せず、ひたすらブレストです。今回のテーマは、フードマイレージ。教員3人が3人とも食にはただならぬこだわりを持っているので、生徒の食生活を憂うところから話題はスタート。「あの子達、自分が食べてるものが何かあまり考えていないかもね。」「トランス脂肪酸ってプラスチックみたいなものだけど、この授業家庭科とか社会と横断して進められない?」「こないだ渋谷の店で昆虫食とヤモリの丸焼きが…」と横道にそれつつ、

Beforeは「食について考えていないよね。あって当然のものだと思っている。」「環境への負担とか、小学校で多少やっているけどすっかり忘れている。」「お正月ボケして最初の授業は始まる。」「グルテンアレルギーの生徒がいて、彼は普段から表示をよく見ている」

それがAfterになった時、「食品の出どころをチェックするようになる。」「特に牛肉などは環境への負荷が大きい」「もしあって当然のものがなくなったら?という視点を持つ」「Factを意識するようになる」と意見が山のように出ました。ありがたや。

オリジナルのデザインシート

書き込むのは、わたしのオリジナルデザインシートです。このシートは二学期の授業をデザインしたときに使ったもの。順を追っていくと、

1)タイトルを書く
2)現状をブレスト(変化前)
3)授業後の姿や行動、会話などの状態をブレスト(変化後)
4)コンテンツやキーワード、メソッドなどを書く
5)どう測るかについて書く
6)最後に授業の流れを細かく書いていく。今日の時点では3日分。

知りたい人がいればまた詳しく書きますが、最初から授業計画をするのではなく、入念に調べ、ブレストしてからスタートしているのです。ここが共有できると、授業の根幹がお互い分かっているのでとても楽です。逆に言えば、メソッドやコンテンツは別でも全然OKということになります。

ところで、5)のところで、「タイムライン」とDescriptive Essayとあります。授業をデザインする際には、毎回必ず大きな構造を教えます。ある意味「型」とも言えますね。英語ではこれがとても重要で、身につけるとまとまった文を書くのが楽になります。「タイムライン」では、時系列でまとまった文をかけるようになること、Descriptive Essayでは、自分の意見を書くのではなく、何かをDescribeするのですが、この単元では小説の著者について調べてエッセーを書くという課題としました。新学習指導要領の論理表現にも繋がる学習だと言えるでしょう。

オンライン講座8:21.005

iPadを使ったアウトプットは先を見据えて

アウトプットを必ず前提としているのですが、今回は3学期ということもあり少し複雑なことに挑戦することにしました。ポイントは、先を見据えたスキルの積み重ねです。Numbersは今まで一度も使っていないので、フードマイレージの計算のところで表計算を取り入れることにしました。その時間は30分と多めですが、一度きちんと理解すると次からは自分で使えるようになるのですから、儲けもんです。(大阪的、笑)

Keynoteに関しては最後のアウトプットで動画への書き出しをしたいので、最初の授業でなぞり書きからの短い動画の書き出しをして、最後のプロジェクトでは説明をあまりしないでも進められるようにしました。また、インフォグラフィックスにも挑戦します。フードマイレージのいわゆる文系の生徒である彼らが苦手とする表やグラフの問題を解けるようになるには、自分で作成するのが一番です。

高校2、3年生になったとき、iPadを使ってより高度なスキルを駆使して何かできるように計画しているのではありません。高校1年で基本的なスキルをきちんと身につけ、2年生では複数組み合わせて自らクリエイトし、学年を上がるごとに自分の判断でより複雑で創造的な表現ができるようになればいいのです。また、何を使ってどう表現するか、誰とチームを組むかもこちらで指定しないことにしました。自分にとって最大の力を発揮できるようにするにはどうすればいいか。人数はMax4であとは自由。失敗もあるでしょうが、そこからしか人は学びませんから、それもまた先を見据えた学びのデザインだと考えます。

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生徒にとって必然性がないならどう面白くするか

どんな教科書だろうが授業だろうが、生徒にとっては基本的に勉強する必然性のないことです。レッスン1はパンダがテーマでしたが、パンダについて授業で学びたい人なんてそういません。今回は食をテーマとしたプロジェクトと動画でのアウトプットは決定したものの、どうしたら面白いと思えるのか頭を抱えました。

「小学生の授業に出前するということで製作しては?ちょうど隣にあることだし」「ちょうど文法項目が仮定法過去だし、あって当然だと思っているものがなくなったら?という発想でスタートする?」「こっちがあまり枠組みを作るのではなく、これからの食の問題をダイアログで考えてみては?英語はさておき…」「なんでもできるとしたらどんなことができる?」「いや、それではまとまらないよ、キーワードだけ出してみるか。」「Factfulnessみたいに、知ったら世界が変わるとしたらどんなことができる?」

話は尽きませんが、1人で授業を考えるよりもはるかに創造的で刺激的な時間です。新学期スタートがこの3人で本当によかった。何はともあれ、ワクワクします。まあ、結局決まらなかったのですが。笑

最初の三日が決定し、多読の本も運び出した

Day 1: 冬休みの課題の回収をします。「お正月何食べた?」をテーマになぞり絵を描きます。線描画をアニメーションにして、動画で書き出し、そこにその食事についての情報を英語で吹き込んで提出、というものです。ちょっと今線描画のサンプルがないので、このYoutubeで見てみてください。友人の山下学さんのYoutube Channelはとても分かりやすいです。

Day 2: Factfulnessばりのクイズからスタート。Kahoot!は一度私が失敗しているのでボツとし、生徒はロイロノートで答えを提出するか、その場で調べて早押しします。教科書の最初の1ページを音読しながら理解したら、フードマイレージを実際にNumbersに計算式を入れて計算します。ここで文法事項として比較の表現を多用し、表現できるようになる、はず。

Day 3: 2学期にゆるっとスタートした多読。英語は中2ですっかりわからなくなったという生徒もこれは気に入ってどんどん進めていました。最初は音声を聴きながらワークシートで読んでいたので、一度進捗状況を書き出して仕切り直しです。多読本がある教室からいったん45冊ほど運び出し、スタンバイOK!多読は3日ある授業のうち15-20分を使って行うこととし、あとは楽しく読めるようにアドバイスします。この辺も教員同士、慣れない部分は相談しながら。

前日のNumbersのデータからキーノートでインフォグラフィックスの製作もできるかな…?とまあゆるゆると。全体で使う教員用キーノートと生徒のプリントは私が作ることが決まって、ひとまず終了です。

さいごに

なんとなく、雰囲気はつかんでいただけたでしょうか?授業をデザインするときには、生徒の学びの経験を紡ぐことを意識して。そのためにはBeforeとAfterのブレストが必須です。その単元で何を教えるかというのは最後で十分。テスト自体も知識問題は全体の5割程度に抑えていて、エッセーも含め、何ができるようになったかを問う問題が多いです。また、毎回のふりかえりや学びの過程をとても大切にしていて、結果がどうかというところはあまり追求しません。

授業デザインのミーティングが終わり感じたこと。それは「お腹いっぱい」でした。学ぶことが多くて心が満たされます。授業はもちろん生徒中心ですが、毎回こうして授業を行なっていくと自分の学びを実感できるのが本当に楽しい。新たな挑戦をすることで授業の腕も上がります。2019年は目立った実践はないのですが、こうしてチームで授業デザインしてきたことが私にとって一番大きな成長です。明日から3学期、新たな挑戦が始まります。みなさんのこともぜひお聞かせくださいね!



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