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不況下におけるマーケティング投資

緊急事態宣言が解除され、本日から活動を再開している企業も多いのではないだろうか。

今回はこの情勢において、企業のマーケティング投資(広告費)がどうなるか、リーマンショック時に企業のマーケティング部門に所属していた経験も交え考察してみる。

①不況下では真っ先に広告費が削られる

緊急事態宣言で外出ができない中、経済は急激に変化縮小した。多くの企業は確実にコスト削減が迫られ、マーケティング部門では広告費が大きく削減されることは明白だろう。事実、リーマンショックの際、私は大企業のマーケティング部に所属していたが、その時も大きく広告費は削減された。

なぜなら、メーカーなどにおいては、事業を継続するうえで一番広告費は削りやすい。さらに言えば、大きな社会変化がなくても企業のマーケティング投資には、多くの無駄があると言われている。(そう感じられている経営者やCFO、CMOも多いのではないだろうか)

しかし、広告は企業そのものや商品のメッセージを「広く告げる」ことが目的であり、注意や関心を喚起し、興味を持たせ、消費を刺激することで市場を拡大させる効果がある。その広告・宣伝費が削減されるということは、市場が縮小してもやむなしという判断をとったということになる。

そこで、すぐに対応が求められるマーケティング投資の削減だけでなく、マーケティング投資をいかに中長期で戦略的かつ効率化していくべきか、その課題と解決の道筋に関して、自分の経験をもとに、「不可避なマーケティング投資削減」に際して抑えるべきポイントに関して述べたい。

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②リーマンショック時の広告費の変動

2008~2009年のリーマン・ショック時の日本の広告費はどうなっていたか、以下の表をご覧いただきたい。

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出典:電通「日本の広告費」

2009年、日本の広告費は全体で前年比-12%であった。ほとんどの項目が10%以上のマイナス成長となる中、インターネット(以降 WEB広告)の1%増が目立つ。急成長していたWEB広告は、総広告費全体が大きな打撃を受けた中でも、成長を続けていたのだ。

とはいえ、現在のWEB広告の市場規模はリーマン・ショック時と3倍以上違い、広告費のカテゴリーで最大になる中、今回のコロナ・ショックで、リーマン・ショック時と同様であることはないであろう。

その他のカテゴリーはすべて前年比減だったが、総広告費全体よりは少ない減少率で、「踏みとどまった」と言えるのが、テレビ、DM、POPの3つのカテゴリー。マクロ環境の影響で広告費が減る中でも、まだまだ広告主に「選ばれている」媒体であった。

③減らすべきではない「ブランディング」

今回のコロナ・ショックのマーケティング投資削減においては、費用対効果の低い、つまり成果がみえにくい広告は間違いなく削減の対象となるであろう。

具体的には、細かなターゲティング、効果測定、そして修正が容易にできる「WEB広告」は費用対効果の観点から温存され、テレビCMや新聞、雑誌などの「純広告」などは減らされる。

純広告は「ブランディング」を主目的としているものが多く、また、数字で検証されにくいため、投資が無駄になっているケースは確かに多い。

しかし、実ビジネスに大きな貢献をしている場合は多々あるので、そこをしっかりと見極める必要があると私は思う。そのためには、「マーケティング投資の検証」が重要となってくる。
※リーマンショックの際に、私はかなりの時間を検証作業に実施しました。

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④比較検証

(1)新規顧客の獲得(ブランドの未認知顧客やブランド認知はあるが未購買顧客の初購買)
(2)離反や休眠顧客の再獲得(購買への復帰)
(3)現在顧客の継続購買や購買頻度、単価向上

大きく分類すると上記3つが比較検証の指標となるだろう。

⑴⑵を優先したい場合は、間違いなくWEB広告を残すべきである。
しかし、⑶を目的とした「ブランディング」投資は、大きな顧客基盤を抱えているブランドにとって、リマインダーとしてビジネス貢献している場合があり、この投資は、定期的にそのブランドを想起させる一貫性のある広告メッセージを発信することで継続的な購買を促し、他ブランドへの離脱を防ぐ。

つまりは、ビジネスを中長期で支えている投資であるため、削減すると短期で売上減になるリスクがあると考えられる。

実際に私が当時所属していた企業においては、一部のエリアで、この「ブランディング」投資を少量継続し、後にその効果を比較検証できる状態にしていた。

目先の投資削減は避けられないものの、この比較検証を行うことで、今後の「中長期のマーケティング投資の優先順位変更」につなげることができるのではないだろうか。少しでも参考になれば幸いである。

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