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アイドルと契約期間


<参考資料>
日本加除出版「地下アイドルの法律相談」
深井剛志・姫乃たま・西島大介/著 
https://idol-horitsu.com

深井剛志 X アカウント @TSUYOSHIFUKAI
https://x.com/tsuyoshifukai

寺嶋由芙 Xアカウント
@yufu_0708
https://twitter.com/yufu_0708


寺嶋 podcast「アイドルと法律」!
この番組では、ソロアイドル10年目、フリーランスのアイドルとして働く、ゆっふぃーこと寺嶋由芙が、アイドルの労働問題に詳しい弁護士としてご活躍の深井剛志先生から、アイドルが知っておくべき法律を学びます。

日本加除出版株式会社から発売されている「地下アイドルの法律相談」著者でもある深井先生が、働くアイドルゆっふぃーに、アイドルが直面しがちな労働問題を、わかりやすく説明してくれます。

整えよう、あなたの推しの労働環境!

ということで、今回第5回目でございます。よろしくお願いします。古き良き時代から来ました!まじめなアイドルまじめにアイドル!ゆっふぃーこと寺嶋由芙と、


深井 弁護士の深井剛志です。よろしくお願いします。

寺嶋 よろしくお願いします。
では、本日のテーマはアイドルと契約期間です。契約期間って何ですか。

深井 マネジメント契約とかね、専属演出家契約とか演奏家契約とか、そういう内容の契約を結んでると、第1回に言ったと思うんですけど、その契約の有効期間ですね。いつからいつまでこの契約は有効ですよ、ということが書いてあるものですね。

寺嶋 この契約期間は契約書に書いてあって、結び始めた時から効力が効いてる間の期間が決まってて、切れちゃったらアイドル終わりですか(´°ω°` )?

深井 そうですね。原則的にはその契約書に書いてある期間が有効期間になるので、その期間が終わったらその事務所との間の契約は終了ということになるので、もう基本的にはアイドル(活動)はその時点で終わりと。


寺嶋 「でもまだやりたいんです(´°ω°` )‼︎」


深井 っていう場合には、やっぱりその契約の有効期間を延ばすということが必要になりますよね。それが契約の更新という風なやり取りになりますね。

寺嶋 でも、「(契約を)延ばしたい。まだここで頑張りたいんですけど、ちょっとお給料のことだけもう1回相談させていただけないですか…(´°ω°` )?」

深井 ていう場合は、それまで書いていた契約書の内容を変えることになるので。その契約書を新たに作り直して、 新たな契約書で、その契約期間が切れた後にまた契約を結び直すと。契約の内容を見直して、新たに契約書を作ると。そういうこともやったりしますよね。


寺嶋 アップデートしていってもいいってことなんですね。

深井 そうですね。それは別に契約切れる前でも大丈夫ですよ。

寺嶋 あ、そっか!途中で変えてもいい。


深井 契約切れる前に、お給料のところ見直して結び直すということをしても、全然それは問題ないです。

寺嶋 確かに、覚書が途中で追加されるとかありますもんね。

深井 うん。それ、「覚書き」っていうタイトルになっていたとしても、双方が約束したものであれば、それも契約なんですよね。
第1回で言った通り、法的な権利義務が発生する約束事が契約なので、覚書というタイトルであっても、「この内容で合意しましょうね」という約束がされれば、それは契約。契約のひとつです。

寺嶋 うん、なるほど。この契約更新は、アイドル側から今みたいに「更新してください」とか「条件ちょっとだけ相談させてください」とか申し込んでいくことは…

深井 はい。それはももちろん問題なくて。基本的には双方がね、「まだ続けたい」、もしくは「続けたいと思いますか?」っていうことをアイドル側に聞くとか。そういう意思を表明して更新していくことが普通かなと思いますけど。

寺嶋 「普通かな」ってことは、普通じゃないことが横行しているっていうことなんだっていうのがね、もう分かるようになってきましたよ、私は( •᷄ὤ•᷅)
自動更新の話になるんだな。自動更新になってる契約書多い気がするけど。そんなことないですか?

深井 自動更新っていうのはね、契約書の中に「双方から更新する」という意思の表明がなかった場合、もしくは「もう契約更新しませんよ」っていう意思の表明がなかった場合には、その契約は以前と同じ条件で自動的に更新されますよと、そういう情報を入れてる契約書がほとんどですよね。で、契約書作り直してる例が、そんなに僕の経験にもないかなと思ってるんですけど、じゃあ、自動更新されてるかっていうとね、それもどうかなと思って。どういうことかっていうと、僕が1番多く感じるのは、やっぱ契約期間が満了する前に辞めちゃってる子が1番多いんじゃないか。

寺嶋 そういうことか!

深井 だから、2年だったら、2年。2年が1番多いんですかね、アイドルの契約書で。大体契約期間って定められてるのは2年ぐらいですけど。じゃあね、デビューしたアイドル2年丸々続けた人ってどんくらいいる……?

寺嶋 そうなんですか!?10年続けちゃった!!!

深井 いや、だから寺嶋さんはあれですよね。事務所変えたから。

寺嶋 そうだそうだそうだった!

深井 うん。だから結構、途中で辞める子って多いじゃないですか、アイドルの中で。それってどういう理由なのかは人によるとは思うんですけれども、やっぱり 契約期間2年間満了しないで話し合いでやめるとか、ちょっと体調不良でね、辞めるとか、そういう人が僕のとこに相談に来る子は大体そういう子が多いんで、「2年間丸々勤め上げました」っていう人ってあんまいない。どうなんですかね、これ。ファンの方の方が詳しいのかもしんないけど。デビューしましたと、で、そのデビューしたアイドルが 2年間同じグループで続けますよっていう例って多くありますかね。

寺嶋 少ないのかな?でも多分残ってる子よりはやめていった子の方が多いんだろうな。うん、どっちもそれなりにいると思うけど。

深井 っていうことになると、そもそもね、3年も4年も同じ事務所でっていう人が、そんなに多くないのかなって。

寺嶋 じゃあ、この自動更新という言葉を自分事として捉えてるアイドルは、意外と少ないかもしれない。

深井 かもしれないですね。どうなんですかね。1年とかね、短い…まあ短くはないかもしんないですけど、契約期間を短くしておいて何回か更新してるってアイドルも、いないわけじゃないので。

寺嶋 でも、この自動更新を更新するっていうことは、自動で更新されるってことなんだから、1年なり2年なり、最初の約束の期間が終わっても、辞めるって言い出さない限りは同じ条件で同じ契約が続いていくっていう約束?

深井 そうですね。ただ、その自動更新が成立するための条件みたいなものが、契約書に書いてあるんですけど、それがちょっとね、アイドル側に不利なことが書いてあったりすることがありますね。例えば、普通だったらアパートとかの自動更新とかもあると思うんですけど、契約の当事者のがいるわけじゃないですか。

寺嶋 はい。大家さんと自分。

深井 うん、そのどっちかが言い出さない限り、どっちかが辞めますよっていうことを言わない限り、自動で更新される。
でも、そのアイドルと事務所側の契約で、どういう風に書いてあるかっていうと、アイドル側が更新を希望しなかった、もう本当は辞めたいですという場合であっても、事務所がやめますよということを表明しない限り、事務所が何も言わなかった場合には、自動的に更新されますよっていうていなってることがあるんです。

寺嶋 それはダメでしょう(´°ω°` )‼︎

深井 アイドルは更新しないって意思を表明してるんですよ。

寺嶋 そんな事務所にしか決定権しかない契約書、一方的すぎません!?

深井 うん。そう、一方的な例なんですけども、そういうのが結構散見されます。

寺嶋 ほんとに!?え、それ誰が作ってるんですか!?!?

深井 基本的に事務所側が。

寺嶋 いや、その事務所には弁護士さんとかいないんですか?見てくれる人。

深井 よくその問題になると、「いや、この契約書は弁護士にちゃんと見てもらってる契約書だから問題ないよ」みたいなことをね、言う運営さんもいるんですけど。

寺嶋 すごいひどい弁護士がいるってことですか、じゃあ( •᷄ὤ•᷅)

深井 いや、僕は見てもらってないんじゃないかなって思ってますけど。

寺嶋 架空の弁護士か!

深井 だから本来はね、自動更新って、双方から意見が出なかった場合の条項なんだから……

寺嶋 そうですよね、「これでいいよね」って思ってることが続くってことですもんね。

深井 アイドル側がね、「もう契約更新しませんよ」と、続けませんよって意思を表明してるにも関わらず、事務所がそれを承諾しなかったり、事務所が何も言わなかった場合には自動で更新されますって、それはおかしな話ですよ。でも、そういう条文は見たことありますね。何回か。

寺嶋 じゃあ、そういうちょっと辞めづらくされてる契約書もあったりするらしい…悲しいですけど。辞めたい時に、「もうこの契約は終わりにしましょ」って、「契約期間を終えましょ」ってするときにも、またいろいろパターンがありそうです。

深井 そうですね。よくあるのは、 さっき言った自動更新の条件が、例えば契約期間満了の3か月前までに、契約を更新しないことを申し出た場合、その場合は、契約は更新されないと。でも、3ヶ月以内、3ヶ月より前に申し出なかった場合には自動に更新されますよという風になっちゃうと、その3か月以内にね、契約満了から3か月以内に、

寺嶋 何かトラブルが起きた時に…

深井 とかね、「辞めたいです」って思った場合であっても、「もう自動更新されてるよ」とかね、そういうこと言われかねないということになっちゃうので。そうなると、基本的には「もう自動更新はされちゃってるよ」ということになって、辞められないと、そういうことがあり得ますよね。

寺嶋 それはやっぱ辞められないんだ。

深井 うん。だから、そういう話を基本はやっぱ運営としっかりするってことですよね。自動更新になっちゃっていたとしても。

寺嶋 3ヶ月前過ぎちゃってても。

深井 3ヶ月のラインを過ぎていたとしても、双方が合意すれば、別に自動更新にしないで、契約をもうそこで打ち切るという話し合いをすることは可能ですから。うん。やっぱり基本は合意ですからね。基本、「合意でやめる」というのが約束事ですから。そういう話をやっぱ運営とできるかどうかってのがやっぱ重要になってきますよね。

寺嶋 そうですよね。「でもな~」って思うな。なんかいろんなパターンがある。全部をおひとりでやってる事務所の方とかの場合は、その方が契約とかにあんまり明るくなくて、建設的な話ができないまま時間が過ぎちゃってたとか、辞める時になって揉めちゃったとかっていうパターンもあるし。ある程度規模が大きい事務所だと、「契約のことは社長と話して」とか、「契約のことはなんとかさんと話して」って、普段全然コミュニケーション取ってない方、現場で会ってない人と その時だけ話さなきゃいけなくて、うまく意思疎通過できないとか。いろんな、「難しいよね」って、アイドル側として思うパターン、想定できます。どうしたらいいんだ。この話は、もっとアイドル側、我々が知識をつければ解決できることなのか???

深井 そうですね。ただ、やっぱり事務所側が、ちょっと言葉悪いかもしれないですけども、 アイドル側にあんまり知識がないと見下してるというか、ちょっとそういうふうに下に見ている部分はあると思うので、そもそも建設的な話し合いをしようとしてない、そういうケースもありますよね。だから、そうなると、アイドル側が知識つけたりとかしたとしても、やっぱその、力関係とか。そういうもので、あまりうまく話し合いできないとか、そういうこともあるんじゃないかなと思いますけど。

寺嶋 そうなんですよね。やっぱりあれですよね、信頼関係ができてないと、何もうまくいかないですね。

深井 うん。やっぱり基本はそうなんですよね。だから、その信頼関係がしっかりできるっていうのは、お互いが、お互いにね、きちんと法律守って、誠実な対応してるってことが信頼関係の基本ですから。やっぱりちょっとね、そういう、アイドル側に一方的に不利な契約書を…

寺嶋 作っちゃってる時点で…

深井 僕はそう思いますよ。それはやっぱり信頼関係がね、最初からないんじゃないかということになるんじゃないかなと思いますけど、

寺嶋 やっぱり、第1回で話したことに戻るけど、契約書をちゃんと読んで、契約書の書面で「あれ?」って思うことがあったら、もう その時点でそれは判断材料になっていく…

深井 ってことなのかもしれません。

寺嶋 で、いろんな問題はありますが、とにかくもう辞めますってなった時に、契約期間を満了で辞めるにせよ、途中で、契約もうここで終わりにしてくださいってお願いするにせよ…辞める時って、辞められますか?

深井 辞める時、契約期間が満了するときについては、 基本的には契約期間終わってるのでアイドルが「辞めます」と、「もう更新しません」と言えば、基本は契約そこで終わりですよね。 だけどね、ちょっとここもまた契約書が事務所に有利なことになってる例なんですけれども、「アイドル側が契約の更新を望まなかった場合でも、事務所が許可しなければ、その場合は1回に限り更新する」。

寺嶋 なんで!?!?!?

深井 できるって書いてある契約書が…

寺嶋 ダメだよ!

深井 あるんですよ。いや、本当にありますよ。見たことありますよ。それ。

寺嶋 笑っちゃった。なんでだよ!!!

深井 ありますよ。

寺嶋 え!?1回に限り!?1回ならいいだろうって思ってんのか???ダメだぞ!!!

深井 1回はアイドルが拒否しても更新する。

寺嶋 ひど。

深井 それありますよ。結構。何回も見たことある。

寺嶋 なんでー

深井 うん。だからそういう手法がはびこってるんじゃ…

寺嶋 誰かが思いついたやつが広まっちゃったんだな。

深井 誰かが思いついてね。

寺嶋 ひど。

深井 だからその場合だと契約が期間満了してもその場でやめられないと いうことになっちゃいますよ。

寺嶋 やば。

深井 うん。

寺嶋 でも、辞めさせたくない事務所の気持ちもわからなくはない。特にそれが人気メンバーだったりとか、 センターの子だったりとか。

深井 まあね、うん。事務所側としてはねね、せっかく人気出てきて、例えば2年だったら2年やってもらって、人気出てきて、そこで辞められたら困るということで、事務所側が1回に限り更新することができるとかでしょういう気持ちなんでしょうね。

寺嶋 そんなに大事で辞めさせたくない子なら、もっと最初から大事にしなきゃダメ。「辞めたい」って言わせちゃダメ。

深井 だから、そこはね、待遇面で、「もうちょっと続けたいな」って思わせる事務所側の努力も必要だし、一方でね、やっぱりアイドル側の将来設計とかもあるでしょうから。

寺嶋 そうですね。それを共有しておける事務所なり運営さんだといい。

深井 うん。それも信頼関係ってことなんでしょうかね。

寺嶋 もう全ては信頼関係だ。どうやって築いたらいいんだ、信頼関係!

深井 やっぱりね、最初のところからきちんとした説明と、法律、コンプライアンスに合致した契約内容をちゃんと結ぶというところからがスタートじゃないかなと僕は思いますけどね。

寺嶋 ですね、ルールを守る人がいいですもんね。じゃあ、今は契約満了の辞める時の話ですけど。契約の途中で、もうほんとに体調不良ですとか、トラブルが起きてしまったとかで、途中で辞める場合って、辞められますか?

深井 ま、これが結構難しくて、やっぱり、「辞めたいんですけど…」っていう話をしたら、「いや、まだ契約期間残ってるから」というふうに言われてしまうケースが非常に多いですよね。
で、「別に辞めるのは構わないけど、辞めるんだったら、じゃあ損害賠償だよ」っていう風なこと言ってきて、それは次のね、第6回ですかね、損害賠償の話は第6回でしますけど、そういう風に言われて辞められないとか、契約期間が残ってるから辞められないとか、損害賠償払えないから辞められないとか、そういうことで、 辞めたいんだけどなかなか難しいという例は結構ありますよね。

寺嶋 あと、辞めたい子が複数重なってると、「ちょっと待って」って言われるとか。

深井 なるほど。

寺嶋 一気にバッてやめちゃうと困るから。卒業にも順番があるっていうこととかもあります。アイドル側の個人的な気持ちとか体調面以上に、グループとしてのブランディングとかが優先されちゃったり。

深井 っていうね、そういった理由で事務所側としては辞めさせられない。辞めることに同意できない。 で、じゃあ一方的に辞められるのかという話に繋がっていくことになるわけですね。そういう風に、事務所が辞めることに同意しない、辞めさせるのを許可しない時に、アイドル側で一方的に辞めることができるかという問題になります。それがですね、言葉の問題なんですけど、「合意解約」っていうものと、「解除」っていうものの、言葉の違いになります。「合意解約」ってのは合意なので、 アイドルとアイドルと事務所が双方話し合って、合意の上で契約やめましょうねといそういう覚書きを交わしてやめるケースもある。それが合意解約ですね。で、「解除」っていうのは、これは一方行為です。

寺嶋 うん。

深井 一方的な行為なので、相手の承諾はいらない。

寺嶋 へえ!(そんなこと)できるんだ!

深井 うん。だけど、その有効性はもちろん問題になります。どんな場合でも解除が許されるわけじゃないんです。解除するためには、法律上の要件をきちんと満たしているかという点が問題になってきます。

寺嶋 例えばどんな?

深井 解除ができる場合っていうのを契約書に書いてる場合もありますよね。

寺嶋 「こういう事情だったらもうしょうがないよ」?

深井 うん。こういう事情だったら、そのどっちかがどっちかに解除することができると。

寺嶋 でもそれってアイドルの契約書で言うと、往々にして「アイドル側がこんなことやこんなことやこんなことをしたら解除ですよ」っていう、前にも話した 禁止事項の話と重なるようなことになってきちゃって、アイドル側の都合を考えて、「アイドル側が解除する」っていう前提で書いてくれてる契約書、少なそうだな。

深井 うん。まさに今ね、言おうとしたことを…

寺嶋 先に言っちゃった!

深井 感じなんですけど。まさにその通りで。アイドルの契約書に、「こういう場合には契約を解除できますよ」と書いてあるケースって、ほとんどが、「アイドル側がこういうことやったら事務所は契約を解除できますよ」って書いてあるものばっかりです。なので、アイドル側が契約を解除できるケースっていうのが全然書いてないことが多いですね。

寺嶋 そういう書き方をされた書類を最初にもらっちゃったら、もうその時点からちょっと力関係を感じちゃう。力関係に差があることを、アイドル側も刷り込まれちゃうなって思う。

深井 そうですよね。うん。だけど、やっぱ基本的にはね、これから契約結んでアイドル活動頑張っていこうっていう時に、辞める時のことをしっかり見ておこうってアイドルもそんなにいないですよね。

寺嶋 そっか、そうだよね(´°ω°` )

深井 なので、契約書に書いてある条項を使って契約を解除するというのは、結構アイドル側からは困難なケースが多いです。

寺嶋 うん、そう思います。

深井 じゃあどうすんのかっていうことで。これもね、第2回でしたかね、アイドルが労働者なのか、それとも業務委託なのかという点に関わってくることなんですけど、 労働者であれば基本的に「辞める自由」ってのがある。労働者は会社を辞める自由があるという風に言われていて。

寺嶋 ある日突然辞めてもいいんですか!?

深井 基本的に、辞めるのに会社の承諾は不要であると言われていて、だから辞表を、もしくは退職届とかね、そういうのを出したら、その出した時点で、退職の効力は発生すると。ただし、期間はあけなきゃいけないんですけど。

寺嶋 期間をあけるっていうのは、次に就職するまでの期間?

深井 ううん。会社に退職を届け出てから退職の効力が発生するまでに2週間あけないといけない。

寺嶋 じゃあ、退職届出してから2週間は働かなきゃ。

深井 そういうことです。

寺嶋 だから、「最後は有給を使ってやる!」って言うんだ(※偏見)!

深井 そうそうそう。その2週間を、有給使ってもう(会社には)出ないっていう人もいますけどね。ちょっと話が逸れましたけれども、 そういう風にその退職届を出せば、基本的には退職の効力は発生するというのが通常の場合です。だけど、今回問題なのは、期間が決まってるわけですね。いつからいつまでっていう風に期間が決まっていて、その期間働いてくれることを会社も期待して雇ってるわけですよね、労働者を。例えば2年間ですと。でも、その2年間経つ前に、まだ1年しか経ってないのに、労働者の方が「辞めたいです」と言えますか、っていう話なんですけども、それもやっぱり条文があって。そういう風に、期間が定められた労働契約の場合は、「やむを得ない理由があれば契約を解除できる」と。

寺嶋 「やむを得ない理由」ってなんですかね?

深井 ていうのがやっぱり問題になりますね。

寺嶋 人それぞれじゃないですか?そんなの。

深井 で、これが結構問題になるんですけど、その期間の満了を待たずに、もうその時点で契約を破棄する、解除することが許容されるだけの重大な信頼関係の破壊とか、もう雇用関係を継続し難い重大な事情だから、結構ハードルは高いです。で、そういうのがあれば、契約を期間満了前に解除することができると言われております。 アイドル側にどういう事情があれば、その「やむを得ない理由」があると言えるのかって言うと、これは裁判例があって、アイドルの問題で言うと、もうそもそもね、アイドルの契約っていうものがアイドル側に不利すぎると。お給料の点とか、さっき言った、どっちが契約解除できるかとか、契約更新の権限がどっちにあるかとかっていうので、 アイドル側がすごく不利になってる契約書ですと。で、それで最低賃金にも満たないお給料しか払われませんと。そのこと自体がもう「やむを得ない理由」だという風に判断した事例もあります。

寺嶋 だから、そうなんですよ!一歩アイドルムラを出たら、見える世界は違うんですよ!私たちは、「そういう契約書ひどいよね。なんとか飲み込まれないようにしようね、うまくやろうね」みたいに思っちゃうけど、「そもそもそれがダメ」って言ってくれる人が、ちょっと視野を広げるといる!そういう人を巻き込みやすい業界にしていくべきだと、私は思います!!

深井 ね。だから、そもそもそういった契約を結んでること自体が、もう契約を継続しがたい理由だと。

寺嶋 すごい!

深井 という風に言ってくれたので、これ、結構強い。

寺嶋 うん、すごい!

深井 別に、事務所側がなんか悪いことしたとか、そういうことなくても、

寺嶋 「こっちが病気になりました」の診断書とかもいらないんだ。

深井 というね、裁判例はあります。で、あと、これ、第3回だったかな、アダルトビデオに出演を強要された人が、 アダルトビデオに出る義務はありませんよっていうような判断がされた裁判例があるって言いましたけど。

寺嶋 はい。

深井 その事案でも、その、アダルトビデオに出演を強要されたことが「やむを得ない理由」だと、契約解除していい理由なんだよという風に言ったりしました。なので、やむを得ない理由としては、あと考えられることとしては、やっぱりパワハラとか、給料が全然払われないとか、そういったことがあれば基本的にはやむを得ない理由ありってことでアイドル側から解除することはあるんじゃないかなと思います。

寺嶋 ふーん!結構、我々が思っている常識というか、「ここまでは我慢しなきゃ」って思ってるライン、実は勝手にすごく高く設定しちゃってるっていうことってあるんだろうなって、今聞いてて思ったので、「なんか変だけどこれぐらいは我慢しなきゃいけないよな」って思ってる人がいたら、「そうじゃないかもしれないよ」っていうのは、こういう番組とかで気づいてもらえたらいいなって思いますね。

深井 そうですね、結構ね、「こんなことでやめられないんだ」とか、「そんな理由で辞められたら困るんだよ」っていうことを事務所側に言われるというケースも結構あるんですけど、そんなことはなくて、そもそもの契約自体が不平等なものであるということであれば、辞める理由っていうのが認められておりますので、基本はね。そういったものがあるんだということを知ってもらって、 ちょっと不安があれば弁護士に相談してもらって、で、「この場合解除できますか」という風に聞いてもらえればなと。

寺嶋 ありがとうございます。

深井 余談ですけど、僕んとこに来る相談で1番多いのは、「辞めたいのに辞められない」なんですよ。

寺嶋 そうなんだ。

深井 うん。アイドルの方から来る相談で1番多いのは「辞めたいんですけど」と。「でもまだ契約期間残ってんですけど、どうすればいいですか」というケースが1番多いんで。そういう方は、僕が依頼受けたら、「アイドルですけど労働者です」と。 今の話、全部アイドルが労働者であることが前提ですからね。

寺嶋 はい。

深井 アイドルが労働者ですと。で、労働者なので、やむを得ない理由があれば契約解除できますよ、パワハラとか受けてたんで、やむを得ない理由があるので契約を解除しますっていう文章を何回も送ったことあります。

寺嶋 へぇー

深井 そうやってアイドルが辞める手助けをしてあげております。

寺嶋 本当に、そういうところからはなるべく早く離れないと。ほんとにね、精神的に調子が狂っちゃってからだと、治すのすごく大変じゃないですか、病気になっちゃったら。っていうのがあるから、なるべく早く判断した方が いいと思うし、「地下アイドルの法律相談」のこの章のページの最後に姫乃ちゃんのコラムが載ってるんですけど、そこにもあるように、アイドルっていう仕事は、日々こうやってないと自分の居場所がなくなっちゃうんじゃないかって不安になる仕事でもあるから、こんなことで辞めちゃダメかなとか休んじゃダメかなとか思っちゃう気持ちすごいわかるけど、なんか 休める時に休むとか、離れられるときに離れるっていう判断をちゃんとできないと、自分が戻ってこれなくなっちゃう。自分が壊れて戻って来れなくなっちゃうっていう可能性があるから、それが1番もったいないから、 ほんと、皆さん、自分を大切に頑張ってくださいと思っております。

深井 そうですね、確かに、激務でメンタル病んじゃうアイドルさん非常に多いんで、 そういう状態で、まだ契約期間が続いてるから辞めらんないみたいな感じになっちゃうと、うん、ほんとにね、今後の人生…

寺嶋 そう、人生に関わる。

深井 支障が出てきちゃうことになりますので、やっぱりそこはね、思い切ってしっかり休むということも大事かなという風に思います。

寺嶋 ほんとそう思う。自分の人生が1番大事ですよ。では、 今日はこういうお話でございました。アイドルと契約期間の話でした!話の中にも出てきましたけど、深井先生に何か相談したいことがある場合はDMしていいんですよね。

深井 はい。

寺嶋 ぜひDMでご相談いただければと思いますし、もし私と話したい人がいたら…話したい人がいたら?話したいアイドルさんがいたら!私はinfoのメールアドレスがアドレスがあるので、そちらにいただいても大丈夫です。
で、この番組のご感想は「#アイドルと法律」でぜひツイートしてください。また、noteにコメントやメッセージをいただけましたら、ご紹介することもあるかと思いますので、ぜひよろしくお願いします。
それでは、今回もありがとうございました。次回のテーマは、アイドルと損害賠償です。次回もどうぞお楽しみに。

ここまでのお相手は、ゆっふぃーこと寺嶋由芙と

深井 弁護士の深井剛志でした。

深井・寺嶋 ありがとうございました~



以下、有料部分では、収録を終えた2人の感想やお役立ちコラムが読めます(2663字)。

深井先生からは、契約が守られることの大切さと、不合理な契約からの脱却の大切さという、矛盾した2つをどう両立させるかについてのお話。ゆっふぃーからは、それを受けての感想です。結局「みんなで空気をつくる」ことが大事なんだなと思うので、このnoteやpodcastの拡散にもご協力いただけたら嬉しいです!

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