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個人事業主としての心得

https://open.spotify.com/episode/5nCEOzlxhDunwZ8ffImmRO?si=teLhWBOkTNy0aOnvwLDLtQ

<参考資料>
日本加除出版「地下アイドルの法律相談」
深井剛志・姫乃たま・西島大介/著 
https://idol-horitsu.com
深井剛志 X アカウント
@TSUYOSHIFUKAI
https://x.com/tsuyoshifukai
寺嶋由芙 Xアカウント
@yufu_0708
https://twitter.com/yufu_0708

イベントのお知らせ
7/26(金)「#プレミアムゆーふらいでー」
会場観覧、配信どちらでもお楽しみいただけます!



#プレミアムゆーふらいでー
でお待ちしてます!




寺嶋
 podcast「アイドルと法律」!
この番組では、ソロアイドル11年目、フリーランスのソロアイドルとして働く、ゆっふぃーこと寺嶋由芙が、アイドルの労働問題に詳しい弁護士としてご活躍の深井剛志先生から、 アイドルが知っておくべき法律を学びます。

日本加除出版株式会社から発売されている「地下アイドルの法律相談」著者でもある深井先生が、働くアイドルゆっふぃーに、アイドルが直面しがちな労働問題をわかりやすく説明してくれます。


整えよう、あなたの推しの労働環境!

というわけで皆様こんにちは。古き良き時代から来ました、まじめなアイドル、まじめにアイドル!ゆっふぃーこと寺嶋由芙と、

深井 弁護士の深井剛志です。

寺嶋 よろしくお願いします〜。

深井 お願いします。

寺嶋 お願いします。イベント決まりましたね。

深井 そうですね。7月末に。

寺嶋 7月の26日に、深井先生をゲストにお招きして、私が毎月末の金曜日に開催している「#プレミアムゆーふらいでー」というイベントに、深井先生に来ていただくことが決まりました!結構出てますか?トークイベント。

深井 トークイベント。あの、「地下アイドルの法律相談」出版後はですね、結構出ましたけど。

寺嶋 じゃあ、もう慣れてらっしゃる?

深井 結構久しぶりなんで。

寺嶋 是非。配信でも、そしてもちろん会場でも見られます。Loft Heavenで行います。深井先生の他に、姫乃たまちゃんと里咲りさちゃんも来てくださいますので、皆様どうぞよろしくお願いします。
というわけで、今日のテーマは?

深井 個人事業主の心構えですかね。

寺嶋 はい。私、個人事業主です。

深井 そうですね。寺嶋さんはおそらく個人事業主ということになると思いますね。

寺嶋 多分もう10年ぐらい。開業届け出してから10年以上経ってるか、アイドルを始めてからずっとなので。

深井 そういうことですか。なるほど。ただ、あれですよね。確か事務所にいた時期もあるんですよね。

寺嶋 あるけど。でもずっと個人事業主ですよね?

それは第2回ですかね、業務委託契約なのか労働者なのかという論点があったと思うんですけど、そこで労働者だと認められれば労働者になれたかもしれないですね。

寺嶋 そっちの道もあったのか!…どっちがいいんですか?

深井 それはね、どっかで多分、リスナーの方からの質問で、一長一短なのかなみたいなのもありましたけど…

寺嶋 裁量性が高いようで実はあんまりないのがアイドルだから、労働者と言ってもいいけど、労働者にしちゃうと 時間とかがめちゃめちゃ…めちゃめちゃなって、言い方あれか、アイドルの、その…夜までライブして、みたいなのがちょっとやりづらくなっちゃうよねとか。

深井 そういうのもありますよね。あとは、やっぱり事務所の命令権みたいなものがすごく強くなっちゃうっていうことですよね。

寺嶋 でも、一般的にはどっちがいいとかあるんですか?私、会社勤めをしたことがないので、わかりやすい「労働者」っていう立場にいたことが多分ないんですよ。バイトしてた時は労働者?

深井 それは労働者。

寺嶋 じゃ、その時だけだ。

深井 前にもちらっと出てきましたけど、地下アイドルさんのレベルって言っちゃうとちょっと悪いですけど、そのぐらいの活動であれば、労働者として認められた方がメリットは大きいかなと思う部分はありますね。

寺嶋 守ってもらえることも増えますし。

深井 そうですね。お金の点とかね、労働時間の点とかで 認められた方がいいのかなと思います。

寺嶋 労働者だけど、歩合制ってあり得るんでしたっけ?

深井 それはありえます。

寺嶋 あるんだ。

深井 はい。それは別に禁止されてはいないです。

寺嶋 そうなんだ。

深井 はい。

寺嶋 じゃあ、そういう、なんかいろんな「アイドルっていう働き方に合わせた労働者バージョンの働き方れみたいなのも、今後はもしかしたら出てくるかもしれない。

深井 それ、あってもいいんじゃないですかね。僕この前「雇用契約書」って書いてある、事務所とアイドルの契約書見たことありますよ。

寺嶋 雇用!

深井 うん、雇用って書いてありましたよ。

寺嶋 へえ、じゃあもう労働者なんだ。

深井 うん、労働者なのかなと思いますけど。

寺嶋 ボーナスとか出るのかな(゚ω゚)労働者はボーナスが出るって思ってるんですけど、あってますかね?

深井 ボーナスは必ず払わなければいけないものではないです。

寺嶋 そうなんだあ(´°ω°` )会社がうまくいってなかったら払われない?

深井 別に構わない。

寺嶋 そうなんだ。前、コロナ禍に業績が落ちちゃった友達が、お勤めしてる友達が、「会社の業績が落ちちゃったから、ボーナスが全然なかった」って言ってて、「そういうことあるんだ」って思った。

深井 うん。それ、まあまあ、ありますよ。ボーナス全然出ない年とかね、時期とか。うん。そういうのはあってもおかしくない。

寺嶋 じゃ、必ずもらえるとは限らない。

深井 そうですね。

寺嶋 うん。なるほど。どっちがいいのかなっていうか、私はあんまり自分が個人事業主としてやっていくことに疑問がなかったというか、事務所にいた時期も。だって、自分で確定申告とかしてるし。自分でいろんな、経費の計算とかも、税理士さんに頼んでやってもらって。あんまりそこに疑問がなかった。「だってこういう仕事を選んだからしょうがないじゃん」って思ってたんですね。

深井 そうですね。

寺嶋 でもやっぱりそこまで、税理士さんわざわざ頼むとかしてる子ばかりじゃないんですよ。アイドル。

深井 そうですね。持続化給付金ってね、寺嶋さんも動画で確か呼びかけていたっていうのはね、見たことありますけど。

寺嶋 ありがとうございます。

深井 あの時に僕も結構ね、「アイドル皆さんもこれもらってくださいよ」ってツイートしたら、「私確定申告してないんですけど」ってね。

寺嶋 そうなのよ〜。

深井 結構来ましたね。

寺嶋 あと、アイドル事務所が確定申告の仕方を教える場面みたいなのに遭遇したことあるんですけど、その社員さんというか事務所の方が、「よくわかんないけど、とにかくレシートをとっとけばいいんだよ」みたいなことを伝えてて、「それじゃ誰も何もわからないのでは…」って思ったんですけど。

深井 なるほど。

寺嶋 多分、その事務所の方は会社員だから確定申告しないから、わかんない人がわかんない人に教えちゃっても…ねえっていうの、すごく、それ見てて思ったんですよね。

深井 はいはい。

寺嶋 「由芙ちゃんはわかってると思うから来なくていいよ」みたいに言われて、その説明会は(私は)不参加枠だったんですけど、なんかせっかくそうやってみんなで勉強しようっていうモチベーションがあっても、そこに知識がある人が入ってくれてないと 「わかんなかったねー」って言って終わっちゃう。なんとなく、かたち上それっぽいことをして終わっちゃって、蓋開けてみたら、すごいこう、なんていうのかな、ざっくりしたことになっちゃってましたとか。本来だったら得られる権利とか、還付金とかみたいなものとかがもしかして受けられてないんじゃないかなとか。

深井 そうですね。それは多分あると思います。やっぱり還付金は、確定申告ちゃんとしてる人だったら発生すること多いんで。

寺嶋 なんかそういうのがもっとアイドル側もわかるようになってた方が自分のためにもいいのになって思ったから、あの時は動画を出したのはありましたね。うん、そうなんです。でもアイドルはとはいえ、その働き方的には労働者っぽいことが多いけど、でも、私みたいにフリーになる子が増えてきたりとか、あとセカンドキャリアで起業する子とかが今増えてきたから、そういう方は、多分、「事務所を離れて独立して自分でやります」ってなった時に、改めて「個人事業主っていうものになったぞ」っていうか、「それ(個人事業主)として自分はやっていくんだぞ」っていうタイミングの子も多分今多いと思うので、今日はこういう話を聞けたらなと思ってます。

深井 うんうん、起業する子がいるのかなという風に思いますけど。起業して、企業…うん、起業して企業を作ると。企業を作った時に、そこで人を雇ったりとか、うんうん、人を使ったりしたら、うん、それはですね、法律上の個人事業主ではないですけど。

寺嶋 経営者になるから?労働者を使う人になる。

深井 個人事業主ってね、後で出てきますけど、「フリーランス新法」っていう法律ができたんですけれども、そこで定義されてる フリーランス、保護されるべきフリーランス、個人事業主っていうのは、「従業員を使用しない人」という定義があるので。起業して、仮に人を使っていたとしたら、その人はフリーランスもしくは個人事業の人とは言わない。

寺嶋 人を使うっていうのは、人を雇うってことであって、単発で業務委託をするとかは違う?

深井 違いますね。

寺嶋 そうですね。そのフリーランスになったアイドルさんだったり、あとはスタイリストさんとか、振付師さんとか、あとは曲書いてくれる作家さんとか、演奏してくれる、演奏するプレイヤーの皆さんとかも個人事業主として働いてる方が多いから、アイドル本人もそうだけど、アイドルの周りにも個人事業主の人って多いんですよ。とかいうことを考えた時に、結構その個人で働いてる人たちがどういうことを勉強していくべきかとか、どうやって考えたらよりよく働けるのかな、みたいな話が今日聞けたらいいのかなとは思ってます。

深井 はい。

寺嶋 じゃあ、そういった個人事業主が仕事を引き受ける時に気をつけた方がいいことは何ですか?

深井 やっぱりこれ、アイドルの契約の時にも言ったと思うんですけど、やっぱりまずちゃんと契約書を作るってことですね。契約書作んないで、なんか口約束とか、なんかなあなあで、「この仕事やってくれる?」みたいな感じで、金額も決めなければ、細かい条項も決めないで、ぬるりと…

寺嶋 ぬるりと…(゚ω゚)

深井 仕事が始まって、「じゃあ請求書出しといて」みたいな話になって。で、後で金額で揉めるとか。そういうこと、普通によく見るので。

寺嶋 ありますね。

深井 だから、そういう時は、金額と、あと途中でね、例えば契約が遂行できなくなった時の負担はどうするのかとか、そういうことを書いとくのが普通なんですよ。

寺嶋 そうですよね、うん。

深井 危険負担とかっていうふうに言ったりするんですけど、法律用語ではね。そういうのが決まってないで、ぬるりと始まっちゃうから、後で揉めるということがありますから、まずは何よりも契約書を作るというのが先に来ると思います。なんかよくね、仕事終わってから契約書作るとか、うん、請求書だけ出してもらって終わりにするとかよくあるんですけど、それはなかなかトラブルのもとかなと思います。

寺嶋 そうですよね。メールでもいいんですよね?メールとかLINEでお約束しとくでもいいんですか?

深井 最低限のね。こう、最低限。

寺嶋 なるほど。結構私が仕事受ける時はメールで「この案件です。この日です。こんな内容でこの金額です。よろしくお願いします」っていうのを 書いてもらってて、「じゃあお願いします」って自分も返信をして、最後終わった後、改めてその時もらったメールを確認して、金額確認してから請求書を出すっていう風にしてるんですけど。でも、終わった後、向こうからもう1回言ってくれることが多いかな。「今回ありがとうございました。お約束通りこの金額で請求書をください」みたいな。

深井 うん、それは契約書という形を取ってないけれども、ちゃんと事前にその仕事の内容と 金額について合意してるということになるので、最低限の合意はできてますよね。

寺嶋 そうですよね。それで、あんまり揉めたことはないかな。そうね。でも、時々、間に人が入ってくれてる場合とかだと、なんかこう、私が知らないまま終わってから、「あ、その金額だったんだ」っていう時はあります。

深井 そうね、金額が不明なまま進んじゃって、後になって金額知るとかね。いや、それ僕もありますけど。いや、ほんとはダメなんだよなって思ってるけど。

寺嶋 それがね、なんか、めちゃくちゃ危ない仕事とか、めちゃくちゃやりたくない…やりたくない仕事はやらないけど、やりたくない仕事だったら、「あー(´°ω°` )」ってなって断ってたと思うけど、結構 やりたい仕事というか、「楽しそう!」って思って受けるから、なんかこれはね、真似しちゃダメなモットーだと思うけど、私は「最悪0円でもやる」みたいな仕事をなるべくやるようにしてて。お金もらえなくても、特にゆるキャラの仕事とかは「どうせ行くから、私!」っていうのが、ちょっと気持ちの保険にはなってるんですけど。とはいえ、なあなあにしちゃダメだし。ゆるキャラの皆さんはお役所の方が多いんで、結構ちゃんとやってくれます。

深井 なるほどね。うん。地方自治体が依頼主になることが。

寺嶋 そうそう。そうすると、すごくしっかりしてらっしゃるから。

深井 そうだろうね。うん。

寺嶋 そうなっていくといいなと思ってるんです。自分がいる側の業界も。他に気をつけとくことありますか?

深井 そうですね。 あとはですね、これ、アイドルさんにはあんまないのかもしれないんですけれども。うん。イベントに出るみたいな、そういう仕事であれば、1回出れば終わりじゃないですか。そのイベントにね。だけど、継続的に何か仕事をするみたいな契約をする時に、結構問題になるんですけども、契約を途中で切られる恐れがあると。

寺嶋 へー。

深井 例えばですね。じゃあ、なんだろう。アイドルさんが…今録音してますけど、レコーディングしましたと。で、そのレコーディングした音源を編集したりとか、あとは、画像とかを編集したりとか、そういうのをフリーランスの編集者、編集するクリエイターさんに頼んだとするじゃないですか。で、毎週1個動画を撮るから、それを編集してください。で、それを1年ぐらい続けるみたいな契約にしていて、「年額いくら」みたいなね。「月額いくら」とか。そういう契約してた時に、編集するクリエイターさんは、「このアイドルから継続的にこれだけ仕事が来る」と思って、その収入を見込んでるわけじゃないですか。だけど、その契約期間が切れる前に、その契約を切ることを許す契約になってるかどうか。

寺嶋 あー!

深井 契約を1年経つ前に切ってもいいかどうか、その辺がすごく問題になることがあります。

寺嶋 そうなんだ!

深井 うん。で、大体の契約書には、「1ヶ月前に言えば契約切れる」とかね、「いつでも契約解除できる」とか、そういう風になってることがあって。で、これ今ね、アイドルとそのクリエイターさん、対等の関係ね、1対1の関係で言いましたけど、例えば、会社対クリエイターとかだったりすると、そのクリエイターが、その会社から依頼を受けて、なんか、編集をしたりとか動画作成したりとか、そういう時に、やっぱ会社の方が立場強くなるじゃないですか。そうすると、会社が一方的に契約切ってきたりとかして、で、ほぼその人にとっては、個人事業主として 業務委託契約をしてるか、労働契約してるかの違いだけであって、その会社からの仕事で生計立ててるっていうのは変わりないじゃないですか、労働者であろうとクリエイターであろうと。そうすると、やっぱそのクリエイターにとっては、その会社からの仕事を切られると、もう死活問題になることあるんですよね。それなのに、いきなり一方的に切られちゃうとか、その契約解除、契約を終了させる権限がどちらにあるのかというのが、結構、フリーランスの 個人事業主の契約では問題になりますね。

寺嶋 契約を一方的に切られちゃったら、じゃ、そういう時は「切らないでください」って言っていいってこと?

深井 だから、「切らないでください」って言う権利がないから、切られちゃうってことです。で、なんでね、そんなことが問題になるかっていうと、今、僕が問題にしているかっていうと、労働者であれば、労働者が会社に入社して、働いてますよと。ずっと何年間か働いてましたよと。いきなり契約を切る、労働契約を切る。それを法律用語で解雇といいますね。

寺嶋 クビだ!

深井 うん、クビです。クビにすることは、じゃ、そんなに簡単にできるかと。

寺嶋 できないねぇ。

深井 できないんですよ。解雇って、簡単にしちゃいけないんですね。

寺嶋 そうだ!

深井 うん。解雇っていうのは、客観的に合理的だと認められる事由がないと解雇はしてはいけない。

寺嶋 そりゃそうだ。

深井 うん。だから、漫画とかね、 ドラマとか映画とかで、「お前はクビだ!」みたいなの、ダメ社員に言ってる上司がよく描かれてますけど、それはやっちゃいけないんです。

寺嶋 あなたにそんな権限はないよ(゚ω゚)

深井 ということなんですよ。ましてや、期間が決まっていた場合は、例えば、契約社員で3年間の契約ですと。で、それを「業績悪化してきたから、じゃあ1年半で終わりにしてよ」とかね。

寺嶋 それはひどいわ。

深井 うん。「2年で終わりにしてよ」とか、それはダメなんです。期間が定められてるから。その期間より前に契約を解除するには何が必要なんでしたっけ。覚えてます?

寺嶋 契約期間前に契約を切るためには…?契約で、契約期間前に、切らなきゃいけない???え?あったっけそんなの…強いやつですか?

深井 めっちゃ強いカードって書いてたやつ?それじゃないそれじゃない。

寺嶋 労働契約で事前に切ることなんかできるんだっけ…?会社潰れるとか?

深井 やむを得ない事由がある場合。

寺嶋 「会社潰れる」はやむを得ない事由ですか?

深井 そうだね。

寺嶋 そうなんだ。

深井 だから、そういう風にやむを得ない事由が必要であると。期間の定めがある労働契約で、その期間満了前に契約を切る、解雇するというためには、やむを得ない事由が必要であると。

寺嶋 じゃあ、会社側が潰れてなくなるとか、あるいはその労働者側が、雇われてる側がめっちゃ悪いことするとか。

深井 そうですね。で、それぐらいその解雇って厳しいんですよ。うんうん。さっき言ったみたいに、期間の定めのない雇用の社員であっても、 期間の定めのある有期雇用の社員であっても、そんなに簡単にできないんですね、解雇って。だけど、フリーランスの場合は、個人事業主の場合は、契約の中でいつでも解除できるとかね。

寺嶋 悲しいな(´°ω°` )

深井 そういう風に書いてある契約書が多いし、法律もその解除をできないという風に保護するような法律もない。だから、すごく問題になってた。だから、フリーランスは保護が薄いとか。うん。個人事業主はすごく立場が不安定だとか。うん、そういう風に言われていたということになりますね。

寺嶋 それはすごく見聞きする。「フリーランスは不安定」っていうけど、 「それも覚悟でフリーランスにみんななってるんだからしょうがない」って思ってたけど。

深井 うん。じゃあ、それでいいんですか?

寺嶋 そうですね。「それでいいんですか?」を考えなきゃいけないんだな。

深井 うん。自己責任で片付けていいのかっていう問題になると思います。

寺嶋 はい。「いや、それじゃ良くないぞ」って気がついたこのタイミングで、どんなことを気を付けたらいい、勉強してたらいいですか?

深井 やっぱりアイドルの契約の時にも言ったかもしれないですけど、契約する時って、揉めた時のこととか、うまくいかなくなった時のことなんて、あんま考えないで契約しますから。やっぱりこの契約が例えば1年って決まっていたら、その個人事業主の人は「1年間は契約続くんだな」と、そういう前提で契約しますよね。

寺嶋 しますね。うん。

深井 で、途中で切られることなんてないと。

寺嶋 うん。

深井 そうならない可能性があるんだと。最初から相手を疑うじゃないですけど、何かトラブルが起こった時に、何らかの手段がないかどうかと、何らかのいう権利があるのではないかと、そのために契約書ってあるわけですから。契約で権利を決めているわけですから、何か起こった時のためにきちんと契約書に書いておく。だから、まず契約書をきちんと作ること。そこが出発点で。で、その契約書の内容についても、「ここに『いつでも解除できる』って書いてあるけど、こんなことにはならないだろうな」っていう風に思うんじゃなくて…

寺嶋 思っちゃいそう〜〜〜

深井 やっぱりそういうこともどっかであるんじゃないかという風なことを考えて、契約するんだから、「『いつでも解除』はできればやめてください」と。

寺嶋 私が、例えば、すごいおっきい会社からお仕事もらって、「1年間、例えばこの番組に出てください」みたいに言ってもらって、「ありがとうございます!」って契約書見た時に、「いつでも辞めさせられるよ」って書いてあったとして、「この『いつでも辞めさせられるよ』って書いてあるのは、ちょっとなしにしてもらっていいですか」って、めっちゃ言いづらいです〜〜〜。

深井 そうですよね。これがね、個人事業主とかね、フリーランスの方の1番根本的な問題ですよね。会社との交渉能力、立場の差が強すぎる、高すぎると。

寺嶋 すっごい強いフリーランスっているんですかね。もうめちゃ強フリーランス。そういう人は会社作るか?

深井 もう引く手あまただと。この人にもう何がなんでも頼みたいと。そうですね、どんな業界…どうなんすかね。なんかカリスマカメラマンとか、なんかそういう人ってフリーランスなんですかね。

寺嶋 個人事務所のカメラマンさん多いですけどね。

深井 個人事務所であっても、さっき言った通り、会社にしてたら社会社にして人を雇っていたら経営者になるので。

寺嶋 雇っていなかったら?自分だけ会社だったら。

深井 雇ってなくて自分だけだったら法律上は個人事業主です。

寺嶋 じゃ、個人の方もいるかもですね。

深井 で、そういう人って、多分、会社側としては、なんかいろんな撮影とかするのに「ぜひお願いします!!!」みたいな感じになるのかな?

寺嶋 とか、すごい売れっ子タレントが、「あの人じゃなきゃ嫌なんです」みたいに言って、そのカメラマンさんを必ず使わなきゃいけないみたいな、なんかこう、理由があって、立場が強いというか、ちゃんと主張がしていける人も、たまにはいるのかな。

深井 そういう特殊な例ですね。要するに。

寺嶋 特殊だわ。

深井 会社と対等な立場で交渉できそうとか、そういう場合だけですよね。だから、やっぱりね、これは、労働法っていうものを説明…noteでしたのかな、noteでした時にちょっと言ったことがあるんですけれども、労働法っていうのがね、なんでそんなに労働者を保護してるのかという点なんですよね。要するに、会社との間で立場が違いすぎるし、交渉能力の差もあるから、労働者を保護しましょうと、そういうためにできたのが労働法なわけですよね。だから、やっぱり会社ってものと個人ていうものが対決するには、すごく能力の差があるもんなんだと。そういう前提に立たないと、「労働者だから保護されるべきだ、個人事業主なんだから保護されなくていいんだ」っていう風にはならないですよね

寺嶋 そっか。

深井 うん、やっぱりね。契約って対等の立場で結ぶものですから、個人事業主であっても、そういった保護はされないといけないということになるんじゃないかなと思います。

寺嶋 うーん、でも、それになかなか個人事業主本人が気がつくまでにも時間がかかるっていうか…。

深井 交渉していいんだと思ってない人もいるかもしれないですよね。

寺嶋 あとは、私は…私もそうなのかな、その、自分のやりたい職種が、いわゆるその会社勤めをして成立するものと違ったから「自分がやりたくて選んでる道だからしょうがないじゃん」っていうのを結構思っちゃってる人は多い気がします。フリーランスの人とか。

深井 そうですかね。うん。アイドルは確かにちょっと特殊ですけれどね。

寺嶋 あとはほら、「会社勤めの9時17時が自分にはできないから」とか、「しがらみが嫌だから」とかで、「フリーでのびのびやるんだぜ!」みたいな フリーランスの人もきっといるじゃないですか。

深井 そうですね。

寺嶋 とかっていう、負い目って言ったら変なんですけど、なんか「自分で選んでるんだしな」みたいなところで、結構はブレーキかかっちゃうのはあるかな。うんうん。

深井 アイドルはね、事務所に所属して、僕から見ると、労働者的にね、働いてる人もいるなと思っているんですけど。例えば、さっき例に出してくれたスタイリストさんとか、振付師さんとか、そういう人って、 別になんか事務所に所属してない人もいるじゃないですか。

寺嶋 そうですね。振付師事務所みたいな時もあるけど、個人でやってらっしゃる方も多いです。

深井 そういう時に、そういう人たちが取引相手にしてるのって、基本アイドル事務所とか、そういうことですよね。そうなると、やっぱ事務所対個人そうっていう風になってしまって、立場弱いっていうこともあり得ますかね。

寺嶋 なんか、私はもちろん事務所とかレーベルさんとかにもめちゃくちゃお世話になっているけど、同じぐらいこういう振付師さんとか作家さんとか、 自分の仕事や作品を作ってくれる人たちにめちゃくちゃ支えてもらって日々をやってるから、その人たちが自分に関わる仕事のことで嫌な思いしてほしくないんですよ。でも多分何か起こっても、それってアイドル本人には伝わらないっていうか。みんな、本人が心配しないようにって気を遣ってくれるから、アイドルが気がつけてないところで、アイドルに関わってる人が嫌な思いをしてたら嫌だなっていうのはすごい最近思ってることです。だからこの番組は「アイドルの」っていう話だけど、 アイドルも健やかでいてほしいし、アイドルの周りの人たちも健やかでいてほしいなと思って、今日は個人事業主の話をしております。

深井 はい。

寺嶋 でも、対会社というか、自分より力がある、自分より自分に仕事をくれる側の人と交渉するのって難しいよねっていうことは、もう本当にその通りなんですけど、その、フリーランス新法?新しい法律ができたことによって、その辺って多少は助けてもらえたりしないんですかね?

深井 はい。今、じゃあフリーランス新法の話題が出たので少し説明しますけど、これ2023年でしたかね。

寺嶋 めっちゃ最近!

深井 うん。2023年4月にできて、まだ施行されてないです。

寺嶋 え、そうなんだ!

深井 うん。施行されてなくて、今年の11月から施行予定です。

寺嶋 法律って、「その法律を作ることが決まりました。」、「実際、法律の文面ができました。」、「はい、今日から施行です。」っていう段階を踏むんですか?

深井 それはもう成立後即施行の法律もあれば、成立後施行まで期間を空ける場合もあります。

寺嶋 それは何が違うんでしょう。

深井 激変緩和措置ですよね、簡単に言うと。いきなり制度が変わると混乱するから、まずその周知をして、「こういう風に変わりますよ」っていう期間を置いて、 そのための整備、法制度の整備とか実務の整備をして、それから施行すると。そういうことになりますね。

寺嶋 今回のこのフリーランス新法は、フリーランス新法ができることによって、フリーランスの人やその人とお仕事をしている会社の人たちが、事務処理とか経理の処理とか、なんかこう、契約のこととか、変えなきゃいけないことがあるから、その猶予を作ってくれたってこと?

深井 そうですね。契約書の内容自体に影響するような条文もあるので、やっぱりその契約書をいきなり明日から変えなきゃいけないってなると困るから。で、あと、その法律の中身についてもね、きちんと理解しないと。周知、理解のね、期間が必要なので、施行まで、ちょっと時間が空くということになりますね。だって、日本国憲法だって、公布から施行まで時間が空いたでしょ。

寺嶋 そっか、うん。それを理解して「今日からこれでいこうね」ってするまでの時間はやっぱり必要なのか。

深井 ということになりますね。で、今年の11月から施行されるという話でしたね。

寺嶋 もうすぐだ。

深井 うん。その内容としては、大きく分けて2つあります。まず、取引を適正にするための規制、法律、条文が1つで、もう1つが、フリーランスの人の就業環境をよくするための法律。条文はその2つに分かれてます。で、1つ目の「取引の適正を図る」っていうのは、例えば、さっき言ったみたいに、契約書が作られてませんよと。で、どういう内容で契約したのかがわかんないで、仕事終わった後に金額知らされて困るとか。そういうことのないようにするために、取引を適正にする、そういうような条文があります。例えばなんですけど、「契約を締結するときに、条件をきちんと明示しなければならない」というような決まりが書いてあります。

寺嶋 はい。

深井 他には、フリーランスの人がやった仕事に対して、その報酬を支払う日、支払い期日、それを明確にしなければならない。「『いつ払うのかわかりません』みたいなのはダメですよ」という風に決められてる決まり。

寺嶋 はい。

深井 あとは、様々な行為を禁止されてるんですけれども、例えば、「報酬を勝手に減額してはいけませんよ」とか。

寺嶋 そりゃそう!でも、それあります。

深井 あるでしょう。だから、そういうのは駄目ですよ。

寺嶋 うん。私はされたことないけど、「終わった後に値切られた」っていう話、最近聞いてげんなりしました。

深井 で、あとはね、「そんなことあるんですか」って言うかもしれないけど、例えば、「納品したものを受け取らない」。勝手に返品してくるとか。

寺嶋 「そんなんじゃダメだ」みたいな?ひど。

深井 それを禁止する条文なんかもあります。ただ、正当な理由があればダメですよ。

寺嶋 めちゃくちゃ欠陥品とかだったらダメだけど、「気に入らない」とかじゃダメなんですね。

深井 そうそう、うん。でも、「これじゃあちょっとさすがにね、動画の編集、こんなんじゃぜんぜん発表できない」みたいなものであったら、 もちろん、受領を拒否するってのはできますけど。

寺嶋 クオリティがちゃんと達してるのに受け取ってくれないとか、「やっぱ使わないことになりました」とかは、ダメ。

深井 そうですね。で、そのあたりが、取引を適正にするための法律条文ですね。それが前半に書いてあって、で、フリーランス新法の後半が、働く環境ね。就業環境を整備するための条文があります。例えばなんですけど、出産とかね、育児とかになったときに、労働者だったらきちんと育休とか産休を取る権利が認められております。

寺嶋 あれって、育休中の給料って国が払ってくれるんですよね?

深井 そういう補助の制度はあります。

寺嶋 うんうん、それすごいなと思ってる、うん。

深井 でも、もちろんフリーランスの場合はそれまでなかったわけですけれども、この法律の中では、妊娠とか出産とか、あとは介護の時とかにもきちんと配慮しなければならないということが書いてあります。ただ、具体的に育休を何日間とか、残業何日間とか、労働者に認められてるぐらい具体的に書かれてはないんですけど、「配慮しなければならない」というような努力義務がね、

寺嶋 努力義務(´°ω°` )

深井 書かれております。

寺嶋 私はほら、単発の仕事が多いじゃないですか。「この日にイベント来てください」って言われて、そこに行って出るとか。だから、例えば自分が育休や産休に入ってたとしたら、「いや、その期間はちょっと子育てしてるんで仕事できないんです」って断って終わっちゃいますよね。でも、継続的に仕事してる人…誰だ?漫画家さんとか?ずっと連載してる漫画家さんとかが「この期間ちょっと休ませてほしい」と、「休載させてほしい」とかって申し出た時に、「それならもうおしまいです」みたいにしちゃいけないということですかね?

深井 配慮をしなければならないとかね。あとは、例えばね、セクハラとかパワハラとか、そういったことで、フリーランスの人、 個人事業主の人の働く環境が害されないように、そういう体制を整備しなきゃいけないとか、そういうような条文があったりします。

寺嶋 それ、逆に今まであんま気にしてもらえてなかったんですね。

深井 うん、そういうことになりますよね。

寺嶋 そうか。社内でね、「上司が部下にセクハラしちゃダメよ」とかは今すごい言われてるけど、「外部の人に対して」っていうのはなかなかなかったのか。

深井 そうですね。今ね、結構カスハラなんかも叫ばれてますけど、社外の人に対しても、もしくは社外の人に人からなんかハラスメントされるってこと、結構増えてますからね、最近。

寺嶋 そうですよね。ええ、大変だ。でも、じゃあ、できてよかったね、フリーランス新法。

深井 で。ここが1番のポイントであり、問題点なんですけど。さっきの契約解除の話をしたじゃないですか。途中で一方的に解除させられることがありますよと。で、その話、今、一切出してないんですけれども、ここがポイントで。

寺嶋 はい。

深井 このフリーランス新法の中に、その、契約の一方的解除を禁止したり、制限するような条文がない。

寺嶋 なんで!?

深井 だから問題だと言われてる。

寺嶋 それが大事だから法律作ったんだと思ってた!

深井 と思うんですけど。で、これは結構ね、業界団体とか。うん、労働組合とかも、この法律が審議されてる時、まだ成立してない時に、結構意見を言ってたんですけど、結局、条文に書かれることはなかった。

寺嶋 なんでー???

深井 だから、不十分な法律だと言われてます。

寺嶋 誰が作ったんですか。

深井 国会。

寺嶋 国会頑張ってよー!!!

深井 ということになっていて。

寺嶋 なんでだろう。ちなみに国会議員って個人事業主ですか(゚ω゚)

深井 公務員じゃない?

寺嶋 そ、そっか。そっかそっか。じゃあ関係ないのか。

深井 書かれたのは、「契約を解除する時にはきちんと30日前に予告しなきゃダメだよ」と。

寺嶋 30日前。

深井 うん、予告義務が必要ですよと。

寺嶋 予告したら切ってもいいってことじゃない!

深井 そう、だから、それだけしか書かれてないです。

寺嶋 そんな、30日で心の準備できないよ。

深井 うん。だから、このフリーランス新法ね、ある程度はフリーランスを保護する法律になってるんですけど、肝心な、契約を解除することを制限するような条文がないという点で「不十分だよね」という風に言われちゃっています。

寺嶋 なんでそこ書かなかったんだろう。そこ書いたら「すごいじゃん!」って言われたのに。

深井 まぁ、そうなんだけどね。

寺嶋 書いたら不利益を被る人がいるのか???でも、その労働組合とかは「ちゃんと書かなきゃダメだよ」って言ってくれてたんですね。

深井 そうですね。フリーランスでできた業界団体とかね。

寺嶋 あと、「フリーランス駆け込み寺」みたいなのも最近ありません?駆け込み寺だっけ。なんか相談窓口みたいな団体さんとか。

深井 そういうのありますよね。あと労働組合が、フリーランスの支援してるとこもありますし、だから、そういうところが結構意見を言っておりました。

寺嶋 労働組合って何ですか?

深井 労働組合って何ですか。

寺嶋 私が知ってるのは、ユニオニオンがいるところ。

深井 あ、ゆるキャラね、玉ねぎのゆるキャラ。あれは連合っていう、労働組合の連合体というか、労働組合がさらにいろんな労働組合を組織して、さらに大きな団体を作ってるのが連合っていう団体なんですけど、そこのゆるキャラがユニオニオン。

寺嶋 そう、あの子かわいいですよね!ってことです。

深井 ですよね。で、労働組合って何ですか。と。会社と対立する時に、1対1だと、さっき言ったようにぜんぜんね、立場の違いとか、交渉能力の差があるから、労働者が団結して、集まって交渉することにより、交渉能力を高めたりとか。あとは、狙い打ちされないようにね。されるじゃないですか。1対1で交渉すると、「こいつ逆らってきたぞ」と。

寺嶋 「潰してやれ」とかね。

深井 うん、ならないように。団結することで、その責任とか、そういうものを分散させる。一揆みたいなもんですかね。日本史でいう。

寺嶋 ちょっとテンションが上がってしまいますね。でもそれって、社内で同じ志を持つ人がいてくれたらできるけど、そんな集まるもんですか。

深井 社内に労働組合ってものが ある会社はそこに入ればいいんですけれども、そんな人があんまりいないということであれば、社外に、あらゆるいろんな会社から、「組合を作りたい」って人が集まってできる「社外組合」と呼ばれる組合もあります。それがユニオンと呼ばれるものです。

寺嶋 だからユニオニオンなのか。

深井 うん。ユニオンって団結するって意味ですね。元々は。

寺嶋 やっぱ一人だと大変だもんな。

深井 そうですね。その労働組合が、なんで使われたりしてるかっていうと、労働組合を作るのって、憲法上の権利なんですよ。

寺嶋 へー。

深井 労働三権とか覚えてますかね。

寺嶋 はい。うん、あった気がする。

深井 団結権ありましたね。労働組合を作る権利があると。で、団体交渉権。

寺嶋 あった!

深井 うん。団体で交渉するとか保障されてる。憲法で保障されてる権利なんです。だから、組合が会社に対して交渉を求めた時には、会社は従わないといけません。その交渉にね。交渉内容を飲まなきゃいけないって意味じゃないです。

寺嶋 交渉をしようねってことだ。

深井 交渉を断ることができないってことです。1対1の交渉を申し入れられた時は、交渉に応じる義務はないです。

寺嶋 そうなんだ!

深井 うん。会社に限らず、1対1で交渉を求められた時に、交渉に応じる義務は普通ないんですけど、労働組合が会社に交渉も求めた時は、会社は交渉に応じる義務があります。それをもし断ったら、違法行為になります。だから、必ず交渉に応じてくれると。

寺嶋 はい。

深井 で、その時に、なんか不誠実なことを言ったりとか、不誠実な対応をしたら、それも違法になります。そういう風にね、かなり、その交渉のテーブルというか、交渉の権限が認められている。それが労働組合なんですね。だから、まず、交渉がスムーズに行く。交渉するかしないかで揉めることはない。で、団結することによって、要求を通しやすくなる。そういうのが組合のメリットですかね。

寺嶋 そういうの、フリーランスが組むのは難しいです?

深井 そうですね。労働組合って、さっき言ったように、 権限が認められてるんですよね。交渉する権限というか。

寺嶋 そうですよね。

深井 うん。で、そういった法律上の効果を得るためには、労働者である必要があります。

寺嶋 そうですよね。うん。

深井 もちろん、団結することは誰だってできますよ。団結して団体作ること自体は、どんな人にだって認められてる権利なので、それは禁止されませんけど、

寺嶋 その団体のことを大事にしてもらえるか分からない。

深井 そうですね。法律上、労働組合に認められる権利や、交渉する権利とか、そういうものを認められるためには、労働者で作った組織であることが必要です。

寺嶋 そっか。

深井 うん。だからちょっと労働者とは言えないフリーランスの人が集まったところで、労働組合と同じような権限をもらうことはちょっと難しいです。

寺嶋 そうですよね。結構その、アイドルとして働いていると、 場所は違えどみんな似たような問題に出くわす。で、そうなった時にみんなで「これはこうしていこうね」みたいな話ができる場とか、1人だとちょっと困っちゃうけど、何人かで言ったら事務所の人も「これは大事だぞ」って気が付いて改善してくれることとか、きっとあるから。そういうことができるようになるといいなってすごく思うんですけど、なかなかアイドルが団結するの難しいですよね。

深井 アイドルはね。個人事業主なのか労働者なのかってのはもう冒頭でも行ったし、これまでの大きなテーマの1つではあるんですけど、会社はね、当然個人事業主扱いにしてきますよね。労働者だった、労働者だっていうと、事務所に都合が悪いことばっかりなので。最低賃金払わなきゃいけないとか、休み与えなきゃいけないとか。だから個人事業主の扱いするんですけど、僕はアイドルはもうほぼ労働者に近いのかなと思っているので、同じ事務所の子が団結して「ちょっとここのとこ交渉したいです」っていうのは、もしかしたら認められるかもしれない。労働組合を作ればね。労働組合って別に単に団結すればできるわけじゃなくて、ちゃんと申請が必要な、成立するための要件があるんですよ。

寺嶋 何だろ。

深井 規約をちゃんと作ること。事務所を作ること。役職者を決めること。

寺嶋 事務所というのは場所が必要なんですか?

深井 所在地で。だから、代表者の家にすりゃいいと思うんですけど、そういうのを決めなきゃいけない。

寺嶋 へー。

深井 そこまでするアイドルさんはさすがにちょっと、あんまり見たことないですけど。だけど、そういう精神がやっぱ大事ですよね。別に労働組合を作るってね、結構大変だから、そこまでしろとまでは言わないですけど、みんなで団結して、事務所に言いたいこと言うとか、1対1だと言いにくいけど、みんなで言うとか、「給料上げてくれ」とか、「待遇もっとよくしてくれ」とか、そういうのがアイドルにもあっていいのかなという風には思ってますね。

寺嶋 なんか特にアイドルってグループ単位で動いてる子が多いから、グループの中で「今こういうことがもっと改善されたらいいよね」みたいなことをみんなで言っていけるような場があったら いいのかなって思ったり、すごくするんですよ。私はソロだから自分でやるっきゃないかっていう部分はあるけど、なんかその相談がちゃんとできなかったことで、待遇に不満とか、あとは「お給料もらえないからこのままじゃ続けられない」みたいな感じでやめちゃう子がいるなら、みんなで話して交渉したら何か変わるかもよ、みたいなのは思わなくはない。

深井 そうですね。それはほんとにね。 組合を作れとまでは言わないけれども、組合が考えている、団結すれば権利主張もしやすいと、そういう精神を使わせてもらって、みんなで事務所に言うというのは、僕はアイドル業界でもあってもいいのかなという風には思いますね。

寺嶋 それって事務所の垣根を超えたら、やっぱちょっと変な感じに?

深井 ちょっと変な感じだろうね。

寺嶋 そうですよね。

深井 組合作ってたら別ですよ。ユニオンは社外でもできるから、ほんとに組合作って、事務所外の人もアイドルさんも入ってもらって、あらゆるグループの人が1個に集まって交渉するとか。それはあっても別に構わないし、そういうのは認められてるんですけど、そこまでするアイドルさんがちょっと出てきてないということになるので、結構大変だなと思ってます。

寺嶋 なんで今までなかったんだろう。アイドルに限らず、芸能関係であるのかな?俳優連合みたいのありますね。

深井 うん。ただ、やっぱりね、その、芸能界で組合作るってこと…やっぱり組合に入ったら、「組合に入りましたよ、交渉しますよ」って通知を相手にしなきゃいけなくなるんで、「組合入ったのか」ってのが分かっちゃいますから。そうするとね、どこで、どういう風に広まって、「あいつは組合に入るようなやつなんだ。」

寺嶋 ひどい!

深井 っていうふうにならないとも限られないから。こういうのに入ると、今後使われなくなるんじゃないかっていうね。

寺嶋 裁判を起こすことと一緒ですよね。

深井 そうです。裁判なんか起こしたら今後使われなくなるんじゃないかという風に言って裁判を起こさない人いるみたいな話、前にしたと思うんですけど、それと似たような話で、組合に入るとやっぱり使われなくなるんじゃないかみたいな、そういう風に考える人多いんじゃないですか。

寺嶋 なんでなんだろうな、それは。それって、よその国でもそうですかね?

深井 いや、よその国は、結構権利主張することが普通なので。この前、フランスから来た留学生とちょっと話す機会があったんですけど、デモとか、もうそういうものは普通だと。むしろ、なんで日本人こんなデモしないんだという風に言われましたんで。

寺嶋 なんか、デモとか署名とかやっちゃダメ、危ないからやっちゃダメみたいな話する人いるじゃないですか。「そういうことする人は過激な人だから」みたいな。でも、そっから変えていかないととなると、もう本当に生きてるうちに変わるかな、でもやんなきゃなっていう感じですね。

深井 権利行使することがね、なんかちょっと

寺嶋 悪いこと?

深井 うん、ネガティブなことのみたいに捉えられてる節があるんで、「そうじゃないんだよ」ってことが広まっていかないと、アイドル業界でも良くなんないかなという風に思います。

寺嶋 権利行使、みんなができた方がいい、いいじゃんねって思うんですけど。あなたも私も、みんなで権利行使!

深井 だから、ちょっとね、そのアイドルさんも10代のね、小中学生がやってたりするんで、そもそも権利行使っていうね、概念すら、まだちょっとないみたいな、そういう子はいるんじゃないですか。

寺嶋 そっか。うん、そうだな。みんながみんな大人なわけではないんだ。すごく最近、アイドルさんでもそういう問題意識を持ってたりとか、「自分が現役の時はこういう ことを考えてたから、辞めた後はこんな形でアイドル界の役に立ちたいんです」みたいな子が増えてきて、そういう人たちの気持ちが1個に集まる場所があったらいいなっていうのはすごく思ってたんです。考えよう。仲間は増やしたい。このpodcastとかも結構ね、「聞いてます」って言ってくれるんですよ、アイドルの方。でも、あんまりtwitterとかでそれを言ってくれないのね。多分それって言いづらい何かがあるからじゃないですか。

深井 ああ、そうね。「私これ聞いてます」って言っちゃうとねえ、

寺嶋 なんか「裁判の準備してるんですか」みたいな。なんなら私も思われてる可能性あるじゃないですか。「こんなに法律勉強してどっか訴えんのかな、ゆっふぃー」みたいな。そういうんじゃないから。なんかその偏見みたいなのも含めて頑張ってなくしていかないと。なかなか大変なことだなと思うし、弁護士さんって大変だろうなと思います。うん。

というわけで、皆様ありがとうございました。今回もお聞きいただいてありがとうございます。この番組のご感想は例によってハッシュタグ「#アイドルと法律」でポスト、ツイートしていただけますと嬉しいです。
また、この番組でお話ししたことはのちにnoteで書き起こし、記事として公開しています。
noteには補足情報とか、あとは収録を終えた私と深井先生の感想などなどいろいろ書いていますので、ぜひそちらもチェックしてください。

深井先生に相談したいこと、あるいはこの番組で、匿名でも構いません、ご相談したいことなどありましたら、ぜひ深井先生にDMを送ってください。もし ゆっふぃーと話したいっていうアイドルさんいらしたら、infoのメールアドレスにメールを送っていただいても大丈夫です。
もう収録はあと数回で最終回を迎えますね。

深井 そうですね。

寺嶋 今月に最終回を迎え、 そしてトークイベントへという流れにきっとなるかと思いますので、あと数回ではありますが、ぜひポスト、ツイートなどしていただけると、取り上げさせていただきますので、よろしくお願いします。

深井 よろしくお願いします。

寺嶋 イベントは7月26日の金曜日にLoft Heavenで行います。「#プレミアムゆーふらいでー」というイベントで、 ゲストに深井先生、そして姫乃たまちゃん、「地下アイドルの法律相談」の共著者ですね、深井先生との共著者の姫乃たまちゃん、そして深井先生が顧問弁護士をされている、フローエンターテインメントの社長、里咲りさ社長が来てくれるという、なかなか盛りだくさんな会です。Loft Heavenでの会場観覧とツイキャスでの配信観覧、どちらもお楽しみいただけます。ぜひよろしくお願いします。

深井 よろしくお願いします。

寺嶋 それでは、今回もありがとうございました。次回のテーマは「弁護士へのアクセスの仕方」です。次回もどうぞお楽しみに。ここまでのお相手は、ゆっふぃーこと寺嶋由芙と、

深井 弁護士の深井剛志でした。

深井・寺嶋 ありがとうございましたー!


以下、有料部分では、深井先生があらためて、フリーランスの管理が守られていない問題を整理してくださっています。それがアイドル達にどう影響しているのかも改めて説明があります。
ゆっふぃーは、こんなにいろいろ勉強してもまだ自分に染み付いている自己責任論について、改めて向き合って感じたことを書いています。

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