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料理ネイティブの育て方

「自炊する人を増やす」をモットーに自炊料理家として活動をはじめて3年目。ほとんどが大人の方に教えてきたのですが、おうち時間が長い今、子どもたちも料理できたらいい遊びになるし、親も助かるのでは……?と昨年頃から考えはじめました。

子ども自炊レッスンができるまで

そもそも私が料理をはじめたのは7歳の頃。仕事や家事という言葉もよくわからない私は、楽しい遊びとして料理を学びました。野菜を切ったり焼いたりすること自体が楽しいし、作り終わったらおいしく食べられて一石二鳥。さらに親にもほめられて一石三鳥。そこから20年経った今でも「こんなに楽しい遊びはない」と思って仕事しています。

子どもの頃に遊びとして料理を学んでしまえば一生役立ってくれますし、将来ひとりで暮らしても、誰かと一緒に暮らしてもあたたかい食卓があることは、心の支えになってくれると思うのです。

また、子どもの頃は何も知らないし、やったことないことは出来ないわけですから失敗して当然です。自転車で転んだくらいで、テストで赤点取ったくらいで、全然平気なのです。場数が足りてないだけなので、自分の頭で考えて体を使って繰り返せば自転車にも乗れるようになり、テストの100点も夢じゃありません。料理も同じで失敗しても平気な頃に学んでしまったほうが、怖がらずに学べます。きっと子どもたちに教えたら私自身も学びが多いはず。そう思って高校生の頃からお世話になっている、子どもの好奇心をくすぐる学びを提どもする教室「探究学舎」の代表・宝槻泰伸さんに連絡し、全5回の特別授業を作りました。

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小学生から身につけられる一生もののお料理探究」と題し、家にある基礎調味料と少ない食材で作れる料理を実践型のオンライン講座で開催しました。蓋を開けてみると、日本全国だけでなく、アメリカやカナダ、シンガポールなど世界中から80人以上の参加がありました。

毎回「塩と油」「醤油とみりん」など調味料をテーマに2品ほど作り、アレンジ料理を宿題で作ってもらうのを繰り返しました。子どもたちの「料理をやってみたい!」というワクワクした気持ちと、料理の中で得られる発見がとても新鮮で「年齢は違うけれど、同じ感覚で料理を楽しむ友達」に出会えた感覚になりました

大人と子どもの料理に対するイメージ比較

講座の中で、私が感じた子どもと大人の料理に対するイメージの違いを整理したのが次の図です。大人の欄に並べている言葉はあくまでも一般的な話ですが、子どもとは料理に対するイメージがだいぶ異なると思いました。

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料理に対して知識や常識がほぼない子どもたちは、新しい遊びを知ったように面白さを感じながら実験的に料理していました。「醤油と油が分離する」「塩もみすると食材から水が出てくる」など、料理をする大人からしたら当たり前のことに子供たちは感動します。味が濃くなってしまった、野菜がうまく切れなかった、なんてことは多々起こりますが、そんな失敗も子供たちにとってはかすり傷程度。これが大人になってしまうと、「いい歳してこんなことも出来ないのか……」と落ち込んでしまうのです(教えている側の私からすれば、始めるタイミングが今だっただけで、失敗しても全然いいじゃない!と思っています)。こちらは小学校二年生の子が作った朝ごはん。

こはる

子どものうちから料理をするメリット

兄弟で参加している子は作業を取り合いになるほど「やりたい!」と能動的に料理するので、吸収力が凄まじいです。子どもたちに教えていると、いつから人は「料理は家事、手間がかかるなら省きたい」と思うようになるのだろう?と不思議に思うほど。
また、私自身が講座でいちばん感動したのは「子供はどうやったら料理がおいしくなるのか」を直感的にわかっていることでした。料理の方法論や作る場数を踏んでいなくても、直感的に「こうしたらおいしそう」と考えられているのです。子どもたちは「きっとこうしたらおいしいはず」に向かって真っ直ぐ進んでいってほぼ命中してしまう。これには本当に驚きで、人間には「おいしくする力」が生まれつき備わっているのでは、とまで感じました。
なので、好きにアレンジしてみよう!と言った後の子供たちの熱量は毎度最高潮に達します。

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そして、思わぬ副産物だったのは、自分で料理することによって子どもたちが苦手を克服できたこと。せっかく自分で作ったのであれば、ちょっと食べてみようと味見し、あれ?おいしいじゃん!と変化した子が何人もいました。

子どもにとってみれば、今まで食べさせてもらうことしていなかったけれど、自分の料理を食べてもらうとなった時に「作り手の努力や頑張り」を必ず感じると思います。子どもが産まれて親になってから自分の親のありがたみがわかった、というように家庭内でも早いうちから食べ手と作り手、どちらも経験しておくことで家族内でのコミュニケーションも円滑になると思っています

親御さんと交流する中で得られた気づき

参加してくださった親御さんからは次のような言葉をいただきました。

これまでは台所に立っても「いいとこどり」のお手伝いだったのが、レッスンのときにシンク周りを空にして渡すので、元通りに片付けるようになり、日々のお手伝いも「やりっぱなし」が減ってきています。最近は朝ごはんのときに、卵焼きかサラダを作ってくれるので、その間に母は洗濯をまわすことができてとても助かっています。
ゲストとして台所に立つのではなく自分でやりきる気持ちでやってくれるようになったのがとても大きい変化だと感じます。(小2の女の子のお母様)
娘はもともと料理には興味があってお菓子作りなどはしていたのですが、これまでは手の込んだ料理を親がサポートしながら作って一回こっきりになるか、手順がわかりきった同じものを作るかの二択でした。今回簡単なものをアレンジしながら何度も作るということを覚えて、料理の世界が急激に広がったように見えます。
本人は「思ったより簡単だった。簡単だから楽しい。でも難しいところもあって、難しいというのは複雑ということではなく、単純だからこそ難しいということ」と言っています。(小3の女の子のお母様)

他にいただいたお言葉は、
いつもは食べさせている対象である子どもが自分に料理を作ってくれると大きな喜びと感動がある。いつでも安心して風邪がひける(笑)
・子ども自身が自分の好みの味に気づくと同時に、親も「うちの子はこんな味が好きだったんだ」と気づく機会になる
・親としても料理を教えたいけれど、散らかすし作業が遅いので日常の中でお手伝いしてもらうには自分でやったほうが早くてなかなか親子で料理する機会を設けられなかった。料理レッスンと切り離すことによって「遊びの時間、失敗しても大丈夫、山口さんがなんとかしてくれる」と任せられて親も寛大な目で見守っていられた
・在宅ワーク中なので、子どもたちが料理を手伝ってくれるのはとても助かる
などがありました。

食材を自分の手で好きな味に仕上げる楽しさ、食材を切る音や焼く香りなど五感から得られる心地よいい音や香り、誰かに食べてもらう喜びと達成感。日々家事をこなす中で忘れかけていた料理の根源的な楽しさや面白さを、子どもたちの姿からたくさん教えてもらった時間になりました。

5月から子ども向けの自炊レッスンを定期開催します!

そして!この講座に参加していない方でも今から学べるように、5月から小学生向けの自炊レッスン(オンライン)を開催します〜!月2回(日曜日の13:00〜14:30)の講座で毎回テーマ料理を設けて、それについて探求していくレッスンです。子どもむけに伝え方は変えていますが、大人向けに教えている内容とほぼ同じなので親子で参加しても楽しいと思います。

詳細についてはこちらのnoteをご覧ください。

以下の日程で説明会も開催しますよ。
・4月10日 (土)11:00~12:00
・4月14日 (水)20:00~21:00
参加ご希望の方はまず以下のURLよりお申し込みください!


みなさんのサポートが励みになります。 「おいしい」の入り口を開拓すべく、精進します!