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2021年から上場企業はコーポレートガバナンスに知財活動をどう取り入れる?

東京証券取引所が取りまとめているコーポレートガバナンス・コードが6月に改訂され、その中に「知的財産」に関する情報開示が追加されました。

以下は日経新聞の記事です。これに基づけば、上場企業は知的財産の活動を積極的に行うよう指導されたかのようにも読めます。

金融庁と東京証券取引所が6月に改訂したコーポレートガバナンス・コード(企業統治指針)に、知的財産の活用などを促す内容が加わった。上場企業の経営層は知財戦略に責任を負う。知財情報の開示など「知財ガバナンス」の動きが出始めた。

<引用:『強まる知財ガバナンス 企業統治コード改訂、取締役会が監督 現場と情報交換密に』2021年6月21日 日経新聞>


一般的に、「知的財産(IP、知財)」とは「技術・デザイン・商標・ノウハウといった目に見えない企業価値」という意味、「ガバナンス」とは「統治・支配・管理」という意味があります。

つまり、知財活動(=知的財産に関する投資を含む活動)をコーポレートガバナンスに取り入れるということは、「企業の知財活動に対する健全な管理体制が求められる」、と捉えるのが妥当ではないでしょうか。

しかし、実際に知的財産に関する情報開示がコーポレートガバナンス・コードにどのように組み込まれたのかを確認しない限り、上場企業も対応案を検討できないと思います。

そこで『コーポレートガバナンス・コード(改訂前からの変更点)』の中のどこに「知的財産」というキーワードが使われているかを調べ、ここから対応案を検討するのはどうかと考えました。


①第3章 適切な情報開示と透明性の確保(P11~)

第3章 適切な情報開示と透明性の確保
→【基本原則3】
 →【原則3-1.情報開示の充実】
  →補充原則3-1③(以下一部抜粋)

上場会社は、経営戦略の開示に当たって、自社のサステナビリティについて
の取組みを適切に開示すべきである。また、人的資本や知的財産への投資等についても、自社の経営戦略・経営課題との整合性を意識しつつ分かりやすく具体的に情報を開示・提供すべきである。


②第4章 取締役会等の責務(P14~)

第4章 取締役会等の責務
→【基本原則4】
  →【原則4-2.取締役会の役割・責務(2)】
   →補充原則4-2②(以下一部抜粋)

また、人的資本・知的財産への投資等の重要性に鑑み、これらをはじめとする経営資源の配分や、事業ポートフォリオに関する戦略の実行が、企業の持続的な成長に資するよう、実効的に監督を行うべきである。


簡単に整理すると、「知的財産」という言葉は、「情報開示」と「取締役会」に関する章立ての中に追加されてます。そのため今後は知財活動に対する取締役の理解が求められるのではないでしょうか。

具体的には上記の日経新聞で取り上げられている企業事例などを参考にしながら検討することになると思いますが、これらの根拠となる現場レベルの「知財活動」の重要性も今後は高まると考えられます。