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一期一会

どこかの地で、たまたま誰かと知り合って、話してみたらとても楽しくて、一緒にはしゃいで、時間があっという間に経過して──。こんな時間がいつまでも続くといいな。別れ際に「また会おうね」と約束して、きっとまたいつか会えると再会を信じた。けど、その日は二度と、やって来ないかもしれない。

先日、両親と、息子と、私の四人で軽井沢に行ってきました。親族との旅行は久しぶり。ゆっくり紅葉と温泉を楽しもうと、大分前からワクワクしていました。

宿泊先のホテルには温水プールがあり、子どもたちに大人気。うちの息子もプールが楽しみで、チェックイン直後にジジババの手を引いて走って行ってしまいました。

そこで、息子はある兄弟と出会いました。小学校四年生のお兄ちゃんと、幼稚園年長さんの弟くん。三人はすっかり仲良くなり、何時間もプールではしゃいでいたそうです。

夕飯の時間になり、レストランに行ったら、隣のテーブルに先ほどの兄弟が。「おーーー!偶然だな!!」と声を掛け合い、一緒にごはんを食べました。食後はみんなでゲームをして(お兄ちゃんがNintendo Switchを持参していた)、お店の終了ギリギリまで過ごしました。

私は旅行が大好きなので、割と頻繁に色んな場所に行くのですが、旅先で知り合った人とここまで深く関わり合ったのは初めてです。ただ、あくまでも旅先の出会い。一緒に遊べるのは、今、ここだけ。明日にはお別れの時間が訪れる。大人になると、こんなふうについつい結末を考えてしまいますが、彼らはただひたすらに、何も考えず、一緒にはしゃいでいました。

さすがに息子は遊びすぎて疲れたようで、夜は即座に就寝。もう会えるか分からないけど、いい出会いだったなぁ……と、微笑ましく思いながら、私も横になりました。

翌朝。朝ご飯の会場には、その兄弟の姿は見えませんでした。「もう帰っちゃったのかもしれないね」と、息子は大層がっかりした様子。もちろん、連絡先は交換していないので、このまま縁が無ければ二度と会うことはできません。

こういうのって一期一会っていうんだよなぁ。寂しそうに帰り支度をする息子を見て、少し悲しくなりました。ところが……、なんと帰りに、ロビーにて兄弟一家と会うことができたのです。

最後に三人で写真を撮り、Nintendo SwitchのフレンドIDを教えてもらいました。今更だけど、「どこに住んでいるの?」と聞いたら、「小田原市!小田原城の近所!」とのこと。そう、うちは埼玉だから、遠いね。「でも、きっとまた会えるよ!」と息子。

別れ際、「今度はオンラインで遊ぼうね!」と三人は笑顔で約束していました。

家に着いてから早速Nintendo Switchを起動し、兄弟に教えていただいたフレンドIDを登録しようと試みました。すると……なんと……「そのユーザーはフレンド申請を受け付けていません」との表示。先方はセキュリティ上、IDからのフレンド申請を受けないように設定しているようです。多分、これはデフォルト設定なので、相手は気付いていない。

つまり、この時点で、兄弟くんへの連絡手段が完全に断たれたということです。息子、顔が真っ青になり「もう会えないのかな……」と涙目。

「大丈夫!ママが何とかするから!」と息子に言い聞かせる私。もうね、ダメなの。また会おうって約束したのに、突然会えなくなるっていうことが耐えられない。何とかしてあげたい。

その時点で持っている情報は、「小田原市在住」「Nintendo SwitchのフレンドID」「小学校四年生と、幼稚園の年長さんの兄弟」。以上。息子に名前を尋ねると「そういえば名前を聞いていなかった」と……!!あああああバカちん!!!!

ここからまた一騒動あったのですが……。最終的にはホテル側に事情を話し、「条件に一致するお客様がいらっしゃったら、私の連絡をお伝えしていただけないか」と丁寧にお願いしました。伝わるかどうかは分かりませんでしたが、意外にもすぐに兄弟くんたちのお母様から私に連絡が来ました(先方も、こちらの連絡先を探していたそうです)。快く設定を変更してくださり、無事、兄弟くんと息子は繋がることができました。

親の仕事は、ここまでです。あとは三人で、それぞれのペースで仲良くしてね。

あれから約三週間が経ちました。実は、三人のオンラインでの再会は、まだ果たせていません。

お互いの日々の生活があり、ゲームをやるタイミングはなかなか一致せず。私が兄弟くんのママさんに連絡を取り、調整することはできるかもしれませんが、そこまで先方に気を遣わせてしまうのもよくないかなと思い、再会は運に任せています。

たまたま出会って、気が合って、楽しい時間を過ごして。でも、その後も縁が続くかどうかは、別の問題です。

大事なのは、その瞬間に「楽しい!」という純粋な気持ちを共有できたこと。一緒にいる時間を最大限に味わえたこと。人間関係とは、それだけで十分なのかのかもしれません。

大人になると、つい、着地点や利害を考えてしまいます。継続させるために、無理をしてしまったりすることもあります。もちろん、関係性を続けることは悪いことではないけれど、一番大事なのは、繋がっている時間をいかに味わえるか、だよなぁ。

こんなことを言うと、ずいぶん刹那的だとか、無責任だとか、都合の良い関係じゃないかという突っ込みが来るかもしれないけど、究極的には、私は人間関係はそういうものだと感じます。

続くときは続くし、終わるときは終わる。どんなに努力をしても、縁は途切れることがある。逆に努力をしなくても、必要ならば縁が切れることはない。まぁ、切りたくなる縁も中にはありますが(笑)

そういう意味では、必死になって彼らの縁を繋ごうとした私の行動は、エゴだったのかもしれません。でも、後悔はしていない。子どもたちの仲の良い姿を思い出すと、そのまま縁が途絶えてしまうことは耐えられなかったからなあ。

三人がまた会える時は来るのかな。遊べる日は来るのかな。また会えるといいね。

今は焦らず、見守っているところです。

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