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夏の空は青くて広くてそして1人

暗い部屋とオーシャンブルーのコントラスト。
昼過ぎの時はいつもよりなだらかに、遠くの波に揺られて時間が進む。

座りなれたイスに腰掛け、太い木製の窓枠からみる海の景色はまぶしくて広い。
スマホが私を呼びかけるバイブ音。波が引く音と重なる心地よい世界に目を閉じて、
精神だけの身体を外に出す。

光いっぱいの砂浜に素足を乗せる。
暑さにたまらず足を進めると、
潮の香りが鼻から奥へ、
そして器官を通して体を内から包み込む。

私は火照った体を海中に浸し、思ったよりも暖かい透明な世界に身をゆだね、
今と同じように目を閉じる、体をゆだねて浮かべてみる。

浜辺で歩いた海岸線。
手をつないだ2人の手は、不思議なくらい体温が感じられなくって、
しばらく進んだ後、汗が激しいからって私から手を離して走り出す。

すぐに脱げた白いビーチサンダルは砂にまみれ、
笑顔でそれを拾ったいつもと変わらないあなたの顔が、深海のように恐かった。
いや、たださみしかった。そしてちょっぴり憎かった。

しばらくという数分を経て目を開ける。
世界は一切変わりを見せなかったが、目の前の海だけは私には遠くに見えた。

足を浸して涼んでみる。
透明な海の底には貝殻があって、思わず拾ってあなたに見せた。
夏の太陽は目視できない輝きで無情。
私とは違う貝殻を返すように見せたあなたの腕が少し焼けているように見えた。

木陰で休む、小さいカニが横切る。
また暑くなって海に入り、何度もそれを繰り返して2人は時間をやり過ごしていた。

届かない。でも私はここから手を伸ばす。
手で拾えない大きさなのに、もし届いたら力いっぱい握りつぶしたい気持ちで手を伸ばし、イスから身を乗り出していた自分が滑稽に思えて、馬鹿らしくなって、
そして1人で寂しくなった。

茜色だと思った夕日が黄金となって小さく遠くに消えていく。
波も見送るかのように満ち引きの音をしぼめ、私たちは日中と同じく手をつないでもと来た海岸線をなぞって戻る。

夜が来て、花火を静かに楽しんで、
最後の線香が落ちるより前に私たちはここで別れた。

じゃあまたね。
うんまたね。

限りない文字の中。彩ることも感傷的にあらわすこともなく、
私たちは余裕を残した文字数でこの日を終えた。

裸足で昨日の線をなぞって歩く。
どこだろう。あの人の歩いた後は。
波はいつもよりなだらかに、何も変わらなさすぎる時の刻みに身をおく自分が腹立たしい。貝を拾う。遠くに投げる。
先端で切って小さい血が流れる左手をひきずって、私は昨日に触れるよう浜辺を歩く。
カニはいない。海に入るが思ったより冷たい。
手持ち無沙汰の手を自分で握り、
そして天に向かって海水を浴びせて自分にかえって涙を隠した。

失った私とオーシャンブルーのコントラスト。
昼過ぎの時はいつもよりなだらかに、遠くの波に揺られて時間が進む。

空を見ると飛行機雲。
あなたもこの空を見ているのかな。

夏の空は青くて広くて
波は私をなぐさめるように引いては押し返す。

茜色だと思った夕日が黄金となって小さく遠くに消えていく。

夜が来て、花火を静かに楽しんで、
最後の線香が落ちるより前に私は浜辺を後にする。

うんまたね。

限りない文字の中。彩ることも感傷的にあらわすこともなく、
隣にあなたを残した文字数でこの日を終えた。


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