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黒毛和牛で熟成するのは、アリかナシか。

さっそくですが、結論はナシです(笑)

ことの発端は、熟成肉作る上で、日本の最高峰を知らないといかんでしょということで、日本で一番有名な熟成肉屋さんの一つ「さの萬」さんでお買い物をしたときのお話です。

購入したもの

【国産黒毛和牛】ドライエイジング Lボーン

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さっそく、焼いてみました。
こんな感じです。
骨付きとあって見栄えは最高ですねー。

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食べて気付いた熟成論の矛盾点

今回、購入した黒毛和牛の熟成肉ですが、ウェブ上のサンプルの肉よりも、サシがかなり多く入っていました。本来、熟成技法の発祥の要因として、「サシの少ない赤身肉を柔らかく食べやすくするため」に生まれたものです。それなのに何故、霜降りで十分柔らかい肉を熟成させるのでしょうか。ちなみにですが、我々はサシの少ないホルスタイン(乳牛)専門で熟成肉を作っています。その時の記事はコチラ。

矛盾点を簡単に説明するとこうです。

霜降り肉→油分が多く、水分が少ない
赤身の肉→油分が少なく、水分が多い

熟成肉→肉の水分を乾燥させ、旨味を濃縮させる。

黒毛和牛で熟成→??????

となります。ちなみにですが、さの萬さんのHPにも、その内容が記載されています。その他、細かく熟成肉について記載されていますが、めちゃくちゃ内容が濃く素晴らしいものですが、その一部抜粋です。

熟成が進むにつれ牛肉中から放出される水分量が減って行き、表面がしっかり乾ききってしまうためその水分を必要としていた微生物たちが自然と死滅していきます。 これが熟成期間の一つの目安です。 これは、ロースの水分含有量が70%と多いホルスタインには向いていますが、水分含有量が40%以下のロースでは、 脂肪交雑が複雑で牛肉中の水分の移動が少ない事から向いていないとされ、さらには多価不飽和脂肪酸の含有量が多い牛肉には、 強い風により酸化を促し、著しく風味を落としてしまいせっかくのお肉を台無しにしてしまいかねません。
https://www.sanoman.net/dab_aging.html
「ドライエイジングビーフ 熟成の仕組み」より抜粋

水分含有量40%以下のロース肉は熟成肉には向いてない…

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今回購入した熟成肉

つまり自社としても、霜降りの多い、黒毛和牛熟成はアンマッチというのを認識しているのではないでしょうか。それなのに何故?というのが今回の我々の疑問点です。

マーケット(市場)が求めているもの

少し話がそれますが、以前我々が、赤身が美味しくて有名なあか牛という和牛をアメリカに売り込みに行ったときの話で、こんなことがありました。

確かに、この赤身は美味しい。米国アンガス牛に比べると、個人的にはこっちのほうが好きだよ。でもレストランのお客さんが、日本の肉に求めているのは、アンガス牛と差がわかりにくい赤身が美味しい和牛じゃなく、霜降りの柔らかい黒毛和牛なんだよね

これは衝撃でしたね。普通に考えれば、そりゃそうだってなるんですが、当時の我々からすると「え?赤身のうまい和牛って最高じゃん」って思っていたのですから。そのシェフ曰く、ギャルソン(ウェイター)の方達からすると、お客様に料理の説明するときに、かなり苦戦するのが目に見えてるようです。まぁそうですね。箸で切れるとろとろの和牛のほうが、それはわかりやすいです。

黒毛和牛熟成が存在する意味

真意は謎です。あくまで憶測ですが、もしかすると上記のような、市場が求めているから、さの萬さんは、熟成の素晴らしい知見があるにも関わらず、黒毛和牛熟成を作り、販売をしているのかもしれません。そしておそらく、それが売れるのでしょう。レストランでも、霜降り和牛の熟成肉がオーダーされて、それが高単価で利益を生み出すアイテムなのかもしれません。経営者からすると、めちゃくちゃ普通ですし、そうなるのも納得です。

ただ、少し悲しいというかなんというか、彼らが残している文献を見る限り、少なくとも我々も同じ考えの・・いや、我々よりもかなり、明確に細かく、論理的に熟成方法について主張されており、めちゃくちゃ感動もした分、この矛盾点に気付いたときは、切ない気持ちになりました。

とはいえ、我々は、サシの少ないホルスタイン(乳牛)にこだわり熟成工房を作り上げていく所存です。

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