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Afterコロナの学びをデザインする#1

最初にお読みください。

このnoteをお読みくださり、ありがとうございます。最近多くの先生方と語らう機会が増えてまいりました。少しでも現場の先生方が、子どもたちのために、より未来志向な学びをお届けしやすくなれるようにと思い、作成しました。

私は、教員をしながら、関東圏の学校様のICT改革のお手伝いをしています。多くの学校で遠隔授業がスタートし、手探りで子どもたちの学びをサポートし始めた日本。

そんな中、現場で本当に多種多様な問題に、タッグを組んで立ち向かっていらっしゃる先生方には多くのことを教わります。この記事では、Afterコロナのパラダイム変化で展開される教育の、ヒントとなる情報をお伝えできれば幸いです。

このnoteを読むことで得られること

教育業界以外の方・・・Afterコロナにおける教育業界の様子を捉え、教育現場での先生方のご苦労を想像することができます。

教育業界の方・・・withコロナ期の今、どんなキーワードをテーマに、教育活動組み上げて行けば良いのか、ため息を吐きながらも、その具体的な視点得ることができます。

保護者の皆様・・・子ども達にとって本当に良い環境が何であるのか、現在のお子様の学校が、本当に子どもたちを考えた指針を採択しているかを、じっくりとお考えになる機会となるかと思います。

開疎化する日本と学校

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Afterコロナを語る前に、Withコロナの現状をよく捉える必要があるが、現状をよく表した図を、先日のWeekly 落合で安宅さんが紹介なされていた。この図は私がその内容を咀嚼し改変して表したものだ。

20世紀型パラダイムでは、資本主義の効率性に則り、Cityに密集してきたこの人類史の大きな流れ逆流させる今回のコロナ騒動により、やんわりと便利にスマートシティ化を進め、Society5.0を目指していた日本あるいは世界が、一段飛ばしでWithコロナのパラダイムを強要されてしまった。

要するに地方や家から働く、学ぶことが当たりまえ、しかも多くの人が全然それでやれちゃう事に気づいたパラダイムだ。このパラダイムに適応した団体が、一段レベルを上げるわけである。

一部の企業は次々にキャッシュが回らなくなり破綻に向かい、ハーバード大の予想が示すように、2022年まで自粛トレンドが続いた場合、終身雇用など夢のまた夢のまた夢と潰える。

一方で、個人の指導理念は種々あるが、普通科教育では概して、大人は密集したCityで効率よく働く前提で、平均を向上させるようなカリキュラム指導法が行われてきた。

Cityでの対面ビジネスの前提が崩れ、新しいものに変わったまさに今、みなさまはこのパラダイム変化をどのように捉えどのように行動するだろうか。

教師のみなさんは、これをどう捉え、Withコロナ期間に生徒に語りかけるだろうか。

5月6日に本当に非常事態宣言は解除されるだろうか。解除されれば、また元のように、集団授業、ワンウェイかつアナログな授業をするだろうか。

それはもはや、何を目指すものなのだろうか。教育の目的そのものを見つめ直す時期がまさに今だと考える。

場当たり的な挑戦

今回はそんな大義名分がいきなり見つかるはずもなく、「学びを止めない」ことを目的に様々な取り組み、実験が教育現場では行われている。

その中で遠隔授業に焦点が当てられ、とりわけICTソリューションはこの主人公と言っても良いだろう。多くの学校で手探りかつ人海戦術での挑戦が続いている。教職員のみなさまの子どもたちを想う愛には、脱帽である。

だがこれはあくまで場当たり的な、手段や可能性を模索するものだ。

このNoteでは、一旦その手段や情報共有から離れ、これらICTソリューションがどのような特性を持っていて、なぜ使う必要があるのだろうかと、考えることで、Afterコロナを語る手がかりとしたい。

情報密度を向上させるICT

ご存知の通り、PCやスマホ、タブレットなどで使うことのできるアプリケーションは従来の「情報処理」のレベルから「情報共有性」を極大化させたものに進化した。

チームで共有したデータや発信は即座に持ち主に通知され、都合に合わせて返信がなされる。例えば、Googleマップでは、知らない土地で友人と、時間通りにドンピシャで待合せることもできる。

チームのスケジュールが共有され、自分の空き時間で、運動不足を予想するAIからエクササイズをするようリコメンドがくる。

まさにデジタルネイチャー。日常に飛び交う情報量は飛躍的に増大し、単位時間内に出し入れする情報密度は高まり、働き方や学び方が変容した。

今回の遠隔授業でも、これらの共有性が高いICTを用いることで、インタラクティブな教育活動が可能となる。

まさに、教育現場でもこの情報密度を向上させるために、ICTは存在しているのだ。ただ現場には、なぜ情報密度を向上させる必要があるのか、そこがまだ腑に落ちない先生方も多くいるように思う。故に日本がICT後進国となっているではないかとも思える。

これがおそらくキークエスチョンではなかろうか。

情報密度を向上させるべき理由とは

1. 子どもたちの生きる世界がVUCAに。

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まさにwithコロナのパラダイムになると誰が予想しただろう。感染病で世界恐慌と同等の経済変動が起きると誰が予想しただろう。各国の通貨によらず、可換な経済指標がブロックチェーンを軸に実現すると誰が予想しただろう。自国の経済変動やインフレ率のコントロールは不確実なものと変化している。youtubeやfacebookを初め、SNSで注目を集めるインフルエンサーが世の中に大きな影響を与えることとなった。影響力が強い人が発信する情報は正しいかどうかによらず経済に大きなインパクトを与える。トランプ大統領のTwitterがまさにその典型。影響は現存の仕組みの力を大きく超え、これまでの常識が曖昧になりつつある。

これほどまでにVUCAを実感する世界において、子どもたちは今を生き、未来を生き抜いていく。

2. Sustainableな世の中へ。

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写真は私が住んでいたバングラデシュの首都ダッカの1シーン。写真は私が撮影したものだ。詳しくは私の別のノートで述べたが、資本主義の下で、先進国の一部の経済活動は、貧困国で目を覆いたくなるような現状を産み出してしまっている。

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そんな世の中で、子どもたちは自信の価値観に沿って、社会に役立ち生きてゆく。今までになかったスキームを生み出す。今までになかった速度感、手法で。

では教育現場が、このVUCAな世界で彼らに整えてあげるべき環境とは。

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まさにTry & Errorの奨励ではなかろうか。

そもそも答えのない問題に対して、考え、協働し、答らしきものを仮定し磨いてゆく。そんな時代を乗り切るためには、「正解を教える」ことは、芽を摘むことにもなり得ると筆者は考える。

3. 人生100年時代を生きる子どもたち

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このNoteにたどり着いたみなさまはおそらく、「Life Shift」をお読みになったであろう。そこには今生まれてきた子どもたちは107歳まで生きる、という統計が紹介されている。20世紀で飛躍的に平均寿命が伸びたことを考えれば、不思議な話ではない。人々の多くが100歳まで生きる世の中とはどんなものか、現在の指標で予想してみよう。

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これは総務省から拝借した統計に、私の視点を追加した情報だ。65歳で引退した夫婦の平均的な支出と収入だ。単純に一ヶ月5万円ほど足りなく、仮に107歳まで42年生きると仮定すると、およそ2700万円足りないという計算だ。

あくまで単純計算であるが、投資・貯蓄なしだと、退職金があっても赤になるのではないか。80歳になってアルバイトをすることは、今の常識からだとかなり辛いことになるだろう。

そんな時代に必要な視座とは。

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この図はロバートキヨサキ氏の「金持ち父さん貧乏父さん」から拝借したESBIモデルを私なりに解釈した図だ。従来の教育では、終身雇用でいかに組織に調和し、最大効率で働くか、その平均的能力を向上させる教育を主軸としてきたように思う。

ただ先述の状態である。今、子どもたちは65歳で引退しても、40年もの間、不安な人生を過ごしうる。破産しては幸せどころではない。

サラリーマンや自営業の視点でなく、ビジネスオーナーとして、投資家としての選択をしていたらどうか。お金を稼ぐためだけにこの話をしているのではない。より貢献度をあげるためには、時間の切り売りだけでない、インパクトを増大させる仕組みづくりができるのだ。自身の価値観に沿って、社会に貢献する手段は何もサラリーマンや自営業だけではないのだ。

自己実現と報酬をバランスよく作り上げ、人生100年時代を幸せに生き抜くには、図中のインカムゲイン型の働き方を知り、その中で自分でバランスを取り、貢献の仕方を選んでいく必要がある。

だが教育現場では、ほとんどの教員がサラリーマンしか経験していない。

インカムゲイン方の知識や実践を教えることができる教育者はどのくらいいるのだろう。

長くなったのでまとめよう。

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教育現場で培うべき事項は、まさに今までの教育カリキュラムに加え格段に増えたと言える。

だが、与えられている時間資源はそのままである。Try & Errorをさせるにしてはあまりに少ないリソース。

故に、情報密度を高めていかなければならないのだ。

本気で子どもたちの幸せを考えるならば、子どもたちの心理的な状態に合わせ、これらのことについて巧みに導いてゆくはずであろう。

子どもの幸せを想わない教員なんて、世界に一人もいない(はず)だからだ。

ではどうやって情報密度をあげるのか。

教育活動内の情報密度の上げ方

筆者は教育活動の情報密度の上げ方については2軸あると考える。

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情報密度を向上させる最も簡単な方法は、単純に単位時間あたりに生徒にインプットさせる情報流通量を増やす方法である。これはICTが得意とするところであろう。わかりやすいグラフィック・動画などはその典型だ。

第二に教育活動の設計の工夫である。教育者ならば感覚で絶対納得を得られるであろう。一方的に講義を続ける授業と、生徒に調べさせ、情報整理させ、表現させる活動とで、生徒の頭に残る情報密度はどちらが高いかは言うまでもない。

上図のワンウェイアナログ型とは、講義形式のオーソドックスな授業である。これが良いか悪いかは置いておいて、これを基準とする。

そこからICTで情報流通量を向上させたものがワンウェイデジタル型

一方で授業の設計を工夫したものがアクティブアナログ型

両方実現したものをアクティブデジタル型とそれぞれ呼称する。

情報密度はこんなイメージである。

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情報密度を並から濃い状態まで高めるためには、2つのルートがある。図の赤と黒のルートだ。

だが筆者は赤のルートを推薦したい。

教育者の方ならばお分かりであろう。授業の設計を工夫することは、従来のコンフォートゾーンから抜け出ることに他ならない。生徒に任せる部分も多くなるため、掌握しにくい授業となる場合もある。従来の限られた授業の中で、この授業設計をいきなり工夫することは、教員にとって億劫なのである。

では、先にICTで情報流通量を向上させればどうか。

限られた時間内に伝えるべきこと、それが短時間で共有され、頭に残りやすいピクチャーで記憶される。時間効率がよくなり、「余った時間で授業の設計の工夫をしてみよう!」と、設計の工夫をする余裕が生まれるのである。

情報密度を向上させる2軸を紹介した。だがその2軸に沿って情報密度を向上させる具体的ビジョンとは。

ICT活用のSAMRモデル

さてこのNoteも結論に入りたい。この図を見ていただきたい。

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これは参照にあるとおり、学術的に公表されている考え方だ。概ねICTの活用はこの手順で進むことが望ましいという説である。

いかにICTを使う必要性や、情報密度を向上させる準備ができても、いきなりハイテクなことはできないのである。まずは物事には何事も順序がある。

ICTに懐疑的な人ほど、「ICTを使ってすごいことをせねばならない。」「ずっとICTを使った授業をせねばならない」という誤解をしている。

実はそうではなく、「教科、単元に応じ、必要なシーンで」利用すれば、情報密度は向上するのである。

紙で行う指導にも良い部分がある。そういった取捨選択を通じ、今最も「熱く語れる授業」とすることが、子どもにとってワクワクする要因だと筆者は考える。

1. 代替

・デジタル教科書を使って情報をプロジェクターに投影する。

・文章指導などをデータで行う。

2. 増強

・生徒の成果物をみんなに共有する。同時に編集する。

・Youtubeにより、個別指導の対応数を飛躍させる。

3. 変容

・学習内容をオンラインで事前に仕入れさせ、授業では演習・検討を行う。

・学んだことをプレゼンテーションさせ、お互いに評価しあう。

4. 再定義

・自身の興味のあるテーマについて、研究をする。

・プロフェッショナルをアドバイザーに迎え、外国の学生や企業とともに、問題解決の起業をする。

これは一例にすぎないが、いきなり再定義は実現しない。まずは紙を代替えするところからだ。

校長を筆頭に、如何に学校の理念、教育目的をアップデートし、ここまで述べた視点を例に、中期戦略を打ち出すかが、この何千年も続いてきた学校をリノベイトするために、もっとも必要なことだと考える。

最後に

さて、ここまで長文にお付き合いをいただいてきたが、今回のWithコロナでは、引き続き教員は須く遠隔で子どもたちに指導をしなければならない。

先述の通り、子どもたちには一分一秒も惜しいのである。ホームページで宿題を指示するだけではなく、遠隔でFace to Faceで作ることができる学びの場があるはずである。

その遠隔の授業は、今は場当たり的な実験で良いが、Afterコロナで社会のパラダイムが変わった後も、ワンウェイアナログな授業一辺倒で、時間の切り売り型の人生を強いるような低質なものに戻ってはならない。

答えのない問いに向かい、Try & Errorをしながら、挑戦していく。そんな確かな意欲を持った子どもたちに成長させるためには、今、このNoteで述べた視点を叩き台にレベルアップし、遠隔で教育活動をアップデートさせることが必要なのだ。

その暁には、教育界としてノウハウが貯まり、Afterコロナで学校に通えるようになった時、多くの学校が本当に必要な活動にだけ時間が費やされる学校に進化するはずであろう。

今、大変な時期を共に耐え忍び、数年後の光明を、日本全土の先生方と一緒に掴みたい。何より、子どもたちのワクワクする良い学び場になっている日本を想像すると、こんなにも胸が躍る。

ここまで駄文にお付き合いいただき、皆様には感謝しかない。どうかお許しいただきながら、まずは共にWithコロナの教育に注目をして、お体に気をつけられながら、頑張って欲しいと願う。

いつも応援してくださる皆様に田中GT善将は支えられ、幸せ者です。ありがとうございます!