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高ければ良いワケじゃない!! ~適切な目標設定と達成可能感

先日、コーチをしている弓道部の学生と1on1で面談する機会がありました。この状況下でも元気に前向きに部活や競技に取り組んでくれているのを感じ、とても嬉しい想いです。

彼との話の中で「自分たちが最上級生になった時の目標」を同級生で話し合ったと聞きました。その中で、学生の組織(特に体育会などの学生スポーツ団体)で目標を立てる時の落とし穴が垣間見えましたので、本日は『適切な目標設定と達成可能感』をテーマに書いていきたいと思います。

まずは皆さんが『目標』といった時に、実はそれぞれ思い描いているものが異なっている、というところに着目してみたいと思います。これがイメージできていない中でチームの目標設定のための議論をしたとしても、なかなか話がすり合っていきません。
『目標』といった時に、思い描かれているのは、おおよそ以下の4つのうちのどれかに当てはまると思われます。
①スローガン:チームが一つになるための合言葉・キーワード
②ありたい姿(ビジョン):チームとして将来的に目指していく方向性
③理念(ミッション):チームの存在意義や周囲から期待される使命
④目標:達成を前提とした一定期間のうちに超えるべきゴール・ハードル

私の経験上は、部活動においては①や②をイメージして「目標設定」を行っていることが多いように思います。これら4つはそれぞれ違う観点で持っておくことは大事ですが、それぞれの効果も異なりますので、きちんと言葉を切り分けて考えておくことが重要です。

本日取り上げたいのは上記のうちの4つ目、すなわち、「超えるべきゴール・ハードル」としての『目標』についてです。ポイントは以下の2つ。

(1)ビジョンは大きく!でも目標は適切に
☞ここで取り上げる『目標』というのは、一定期間(例えば「今年の目標」であれば1年間)のうちにどこまで達成していれば「合格」なのかを図るための指標になります。ポイントは「この目標は『達成されることを前提に』設定されるべき」である、ということです。
良くある落とし穴としては「できるだけ高い目標を立てた方が良い」という発想に陥ることです。理想を高く持つこと自体は問題はありませんし、Moonshotといわれるように、イノベーション・変革を起こしていくならその方法もアリです。一方で、高すぎる目標に対して、現状の実力が伴っていない場合(例えば、全国大会への出場経験がほとんどない部活が全国大会優勝を目標として掲げている場合など)、途中で理想と現実のギャップが大きすぎて、努力を続けられるメンバーと諦めてしまうメンバーにチームが分離してしまうことが良く見られます。筋トレをする時に、自分が挙げられるよりも遥かに重たいバーベルを挙げようとしても、筋肉がつくどころか、怪我をするのと同じで、ある意味大変危険な行為といえます。
そのような事態を避けるためにも、目標設定の際のポイントは "SMART" を意識するようにしてください。
すなわち、
Specific:具体的に
Measurable:測定可能な
Achievable:達成可能で
Realistic:現実感があり
Time-bound:期限を定めた
目標設定を行うことです。

(2)何度も検証を重ねてセルフエフィカシー(達成可能感)を高める
☞もう一つのポイントは、目標を立てた時点で、「この目標ならある程度努力をすれば何とか達成できそうだ!」と腹落ちすることです。
目標は立てるだけでなく、「実行され、達成されること」までつながらなくては真の効果を得ることは出来ません。無為に高い目標を掲げることは、実行される可能性と達成確率を下げることにつながりますので、あまりおススメしません。
一度立てた目標について、以下の観点を意識して、チームメンバーで徹底的に議論する必要があります。
・「全国大会優勝!」などの曖昧なものではなく、「3年生*人、2年生*人のチームで、インターハイで1試合平均●●点以上のスコアを出し、××高校に勝利してベスト8に入る!」など、出来る限り具体化・明確化すること
・ひとりひとりのメンバーが、チームの目標達成のためにそれぞれが何を求められているのか、自分の成長や目標達成がチームの目標達成にどのようにつながっていくのかを理解できていること
・現時点での実力から見て120~130%程度の目標設定となっていること

一度で全員が腹落ちする目標が設定されることはありません。もし仮にそうなっているように見えても、それは一部の人たちの不安や不満が見えていないだけかもしれない、と思って、個別に良く聞いてみるようにしてください。どうしても、選手層や意識の高い層に引っ張られて目標が設定されがちですが、本当に目標を達成したいのであれば、ぜひ冷静な視点も合わせ持ってください。

目標を高く設定しようとする想い自体は決して間違いではありません。ただ、「目標は達成されてナンボ」です。達成されない目標はただの夢物語、妄想にすぎません。熱き心と冷静な視点の両方を持ち、チームを強くするための目標設定をしていきたいですね。

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