怪談師論 2 作家系怪談師


本来「怪談」というくらいだから、語り物のはず。
しかし、江戸時代から「書かれた怪談」として『耳袋』のような例もあります。
インターネット以前の昭和四十年代は、雑誌が全盛だったせいでしょうか、むしろ「読む怪談」の方が主流だった感も。
その後五十年代に至ると、「口裂け女」「人面魚」「人面犬」などの小学生を中心に流布した都市伝説系の怪談が雑誌の誌面を賑わせたりもしました。
ちなみにオカルト雑誌の老舗『月刊ムー』の創刊も、昭和五十四年です。

そうした怪談を書く作家から出発し、やがて自ら語り出す。そんなタイプの怪談師は、そのせいか、古くから活躍する大御所が多いですね。例えば、

中山市朗

1959年生まれ。ロマンスグレーの長髪をポニーテールにまとめ、丸っこい体に丸っこい笑顔。どこか人の良い仙人みたいな感じのおじさんです。
これが、実は関西怪談界の重鎮。やや早口の淡々とした口調で、自ら収集した怖い話を披露します。

もともとは、木原浩勝との共著で『新・耳・袋~あなたの隣の怖い話』で作家としてデビュー。その後放送作家として、関西テレビの『恐怖の百物語』『百綺夜想』などを手掛けていました。

「山の牧場」「なまなりさん」「のぶひろくん」などが代表作。

https://www.youtube.com/watch?v=UUBCHWxZ_iA&t=1004s


竹内義和

1955年生まれ。元祖オタクとでも言うべきか、特撮、アイドルなどを深く研究。北野誠の番組にホラー評論家として出演した頃から、怪談方向へシフト。作家、放送作家として活躍してきました。
ちなみに奥さんも作家の竹内眠さん。

もともと学生時代、某喫茶店に仲間とたむろしては、「海底人8823」『ママとあそぼう!ピンポンパン』等の独自解釈を披露して、人気を集めていたそうですから、喋りもうまかったんでしょうね。
彼らが連日コーヒー一杯で八時間ねばったせいで、この喫茶店、つぶれたそうです。ほんまかいな。


作家と言っても、放送作家を経験していると、やはり喋りはうまくなるんじゃないでしょうかね。
制作にお金がかかり、チームワークによってつくられる番組は、プロデューサーとかスポンサー、スタッフに企画を説明するプレゼン力が重要になるからです。
だから、あり得ないようなお話を説得力をもって語る技が、知らず知らず身についているのでは。

仕事で企画のアピールがうまくできない、とお悩みの方は、作家系怪談師の話を聞いてみるのも、いいかも知れません。


大御所ばかりではなく、この系統でいま最も人気なのが、

都市ボーイズ

2015年結成。早瀬康弘と岸本誠のユニットです。二人とも放送作家として裏方にいながら、自ら怪談を語り始めました。

早瀬は1988年、岡山県出身。それも横溝正史『八つ墓村』の元ネタになったことで知られる大量殺人事件が起きた場所の近くだそうです。自身にも怪異体験が多く、いわゆる「怪談」の語り手。呪物コレクターとしても有名です。

一方、岸本は1984年、新宿歌舞伎町の生まれ。際どい業界の友だちも多く、好奇心の赴くまま、怪しげな人たちに取材して、その成果を披露する「都市伝説」テラー型です。中でも陰謀論が好き。

こおのように、タイプの違う話がまとめて聴けるところに、都市ボーイズの魅力があります。単独イベントチケットは即完売で、入手困難。


最後に、作家ではないですが、隣接領域として編集者出身。
オカルトWEBマガジンTOCANAの編集長だった、

角由紀子

1982年生まれ。出版社を経て、サイゾーに入社。占いサイト「ハピズム」を担当し、オカルト系の記事を掲載したところ反響が大きく、2013年、自らTOCANAを立ち上げる。

なので、純粋な怪談師ではなく、オカルトや都市伝説に軸足があります。

とはいえ、好奇心の塊のような人で、自ら体当たりしていくその熱量が凄い。
幽体離脱ができるようになるための修練に励んだり(自宅から最寄り駅までの道程を、頭の中で逆再生するんだそうです。これがスムースにできるようになると幽体離脱ができるとか)、海外の現地トライブの宗教儀式に参加してトリップしたり(この時の様子を録音しており、公開してました)。

最近では、国産ホラー映画の企画にも携わり、去年はスプラッター『オカムロさん』、今年は三弦じゃに実在する最恐心霊スポット横沢スタジオをモチーフにしたドキュメンタリー『三茶のポルターガイスト』を手がけています。


to be continued


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