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怪談師論4 職業を活かした怪談師

怪談師になる前、あるいはなってからも、他の職業を持っている。その仕事が、怪異に極めて近いもので、必然的に自身がさまざまな体験をしたり、同僚などから聞かされたりする。そんなケースの怪談師がいます。

怪異に近い仕事、というのは、つまり、死に近い仕事。

例えば、本来釈迦は死後について一切語らなかったのですが、葬式仏教などと言われるように、特に日本ではお寺が「死」に近い場所であり、そこで働くのがお坊さんです。

そこでまず一人目は、怪談和尚の異名をとる、

三木大雲

京都、日蓮宗光照山蓮久寺の現役住職です。関西テレビの『怪談グランプリ』で優勝を果たし、有名になりました。
霊障などの相談を受けたことから、自身や相談者が体験した怪異を語るため、リアリティーは抜群です。

そもそも仏教には、信徒の獲得に怪談を活用してきた歴史があり、『日本霊異記』などの本も残されていますが、三木和尚の話はさまで説教くさくはなく、最後にちょっと一般的な教えを添える程度。
なので、壺を売りつけられるんじゃないかと心配せずに、怪談を楽しめます。でも、ホームページではグッズを売っていはいますが(笑)。

ガンジー横須賀


元、茨城県火葬場職員。これも自身が見聞きした、奇妙なご遺体の話や、ご遺族の話が中心です。

芸人でもありますから、語りは流暢……と思いきや、結構噛みまくったりします。並み居る怪談師の前で怪談を披露した時など、緊張のあまり途中で絶句。沈黙がかなり続くという大失態も演じています。
でも、その稚拙さが、本人のワイルドなキャラクターとあいまって、不思議な世界観をかもし出している。うまくはないけど、強烈な怪談師。

最後に必ず、「ピンポ~イント!」という決め台詞を言います。これは芸人として開発したセリフらしいので、必ずしも怪談に相応しくなく、MCや他の出演者からしょっちゅう「それ、要る?」と突っ込まれていますが、頑固にやめません。

ただ、怪談って、余韻を残しすことが多いので、終わったかどうかがわかりにくい。まあ、音楽ライブでもありますよね。ジャン、と歯切れのいいエンディングならいいけど、ちょっとフェイドアウト気味だったりすると、暫くシーンとして、いつ拍手したらいいか、タイミングが難しい。

そういう時、ミュージシャンも怪談師も、先に「ありがとうございました」と言います。それで、あ、終わったんだ、と安心してみんな拍手する。
とはいえ、理屈で言えば、拍手が先にあって、それに対して「ありがとう」と言うはず。先に言うのはなんだか、拍手をねだってるみたい、と言えなくもない。

だったら、「ピンポ~イント!」みたいな決め台詞の方がいいんじゃないか。
そういう意味で、少なくともガンジー横須賀の場合、「ピンポイントはむしろ、あった方がよい」と断言してしまいましょう。


下駄華緒

火葬場職員から、葬儀屋、そしてミュージシャン、怪談師。
なかなか多彩な経歴の関西人。
熱狂的なファンを持つバンド「ぼくたちのいるところ。」(略称ぼくいる)のベーシストであり、ほとんどの楽曲を作曲してもいます。

関西弁丸出しで、個性的なオノマトペを駆使するトークは軽快ですが、やはり職業体験から来る内容の迫真性でぞっとさせます。

しかし、自分の体験には限りがある。早々怖い思いばっかりしてられるか、と、近年は、未解決事件とかを調べて語る都市伝説テラー系にシフト。呪物などのオカルトコレクターとして活躍する田中俊行と、「不思議だ百科」というYoutubeチャンネルを始めて、田中の怪談、下駄の都市伝説と、ちょうど都市ボーイズのようにうまいバランスで分担しています。
心霊スポットの前まで来ながら、どっちが行くかでもめたり、関西人同士の毒舌が応酬されたりで、観ながら爆笑してしまう面白さ。


宜月裕斗

現役の看護士。つまり、職場は病院。病院と言えば、これも怪談の舞台としては定番です。
患者や看護士、さらには清掃職員まで登場するのに、案外あまり医者が出て来ない印象。そこがちょっと面白い。
何となく、科学者であるドクターは、超自然現象と相性が悪いからなのか。
それとも、医者と看護士にはヒエラルキーがあって、気軽に「びびったよた」と医者が言えないためでしょうか。


to be continued……


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