220912 10代前半・スナッチ

高い塀を右に観ながら
橋を渡り終えた僕はトボトボと
黒いランドセルを揺すり続けた
塀が終わり大きな門を通り過ぎた左手に
目的地は在って木々のアーチを抜けると
奥に身体を折り曲げて校舎が横たわって居る
下駄箱の位置は毎年
少しずつ位置が変わって
それ自体も小さくなっていった
上履きで乗り上げる床には
冷たいタイルが敷き詰められ
定期的にワックス掛けが有った
ブラスの滑り止めが奢られた
石模様の階段を上がると
後ろから元気で無遠慮な
駆け足の音が近付いてきて
更に登ると人の気配が増えていく
隣の席に手が届く距離に列ぶ机
ランドセルを下ろして中を探る
将来の番も今は未だタダの友達
仲良しも険悪も一袋に詰められている
担任が来るまでがカオス
学級崩壊など考えもヨらなかった
家では教師の謂うことを好く聞くよう指導され
教師もまた色んなモノを隠して
理想的で在らんと努めた時代
その代わりサンドバッグにはナらぬ
毅然とした態度の大人
またそれを父兄が理解する環境が有った

学制は今の方が絶対にイイですよ
昔には絶対に戻りたくない
でも
それ故に振り返ろうと想う

授業は基礎的な話から
少しだけ意地悪な問題まで
始めの話をキチンと聴けば
チャンと出来るモノばかり
僕ぁ此処で魔境に落ちたんだ
コレで大人にナるまでイケちゃうと
早合点シたんだ

授業の間には休憩が有って
わんぱく坊主やお転婆さん
1年から6年
果ては教師まで校庭で遊んでた
手繋ぎ鬼で教師が
あっ、そう言えばお前のお母さんが…
と話し掛け何だろうと足を止めた僕を捕まえた時
オトナの狡猾さにショックを受ける
まだ汚れてないツルッツルの僕も
校庭で遊んで居た

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