Yuya Shimizu | Progress Inc.
財務経理視点なしに経営視点はない
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財務経理視点なしに経営視点はない

Yuya Shimizu | Progress Inc.

財務経理知識・視点は財務経理部のみに必要なもの?

専門知識の話をしているわけではない。
減価償却費の耐用年数だとか、財務指標だとかではない。

  • 自社の貸借対照表(BS)や損益計算書(PL)を読んでなんらかの疑問を持つ

  • 財務諸表の数字の意味を理解できる

  • 利益を念頭に見積もりを作れる

  • 投資を提案するなら回収と利益への転換はいつかを試算できるなど

財務経理以外の部門にこの視点は必要ないのだろうか。

財務諸表が読めない経営者、経営陣、マネージャー

予算会議、月次報告、決算報告、個別の案件利益計画など、事業会社では当然のことながら数字だらけである。
しかし最低限の知識がないマネジメント陣の会合は、根性論や精神論に着地しがちだ。トップがこれでは、結果論でしか会社の業績を語れない。
財務経理からの数字をふまえた意見を「ネガティブだ」「後ろ向きだ」と捉えてしまう。
各々の部署での利益貢献策を議論すべきなのに、「もっと売れ」で終わってしまう。
もったいない。

社内向け財務経理セミナーの実施

かつて在籍したベンチャー企業において、財務経理セミナーを自分の部署主催で定期的に行ったことがある。顧問であった監査法人の力も借りながら。
ベンチャー企業では、財務経理知識を入れる機会がないままマネージャーになることも珍しくない。その分野においては優秀であるが、経営に必要な「財務経理」知識は欠落している。
それ自体は問題ではない。日々、それぞれの部署のマネジメントに追われ、それぞれの責務を果たすことに奮闘している。そういった知識を求められる場面もなかった。

しかし、ベンチャーから抜け出して中堅企業を目指すフェイズにおいて、彼らの知識不足は経営におけるリスクに今後なり得ると考えた。
各部門のマネージャークラスに対し、本当の基礎(BSとPLの違い、原価と販管費の違い、決算書を読むポイント、予算の作り方など)を月1回、半年間行った。
30代後半から40代前半の彼らが、専門分野外の新たな知識を取り入れるとあって、半数は歓迎、半数は否定的であった。

否定的なほうの物言いは「そういったことは財務経理がやればいい」「自分たちの部署の仕事を他部署に振っているんじゃないか」などであった。
だが、だったら出なくていいとは言わず、強制的に参加させていくうちに彼らの態度や考え方も変わっていった。
「自分の部署における経費の考え方が変わった」
「予算を積算式でしか考えていなかったが、ゴールからの逆算する方法も視野に入れるようになった」
など、少しずつ彼らに専門分野以外の視点を持ってもらえるようになった。

財務経理に無関心な社長

少しずつ成果を出し始めた社内セミナーに異を唱えたのが、一番経営に近く財務経理の基礎知識を持っているべき社長である。
「そんなことは各自が必要なら家でやれ。自分の仕事をしろ。」

彼は営業出身である。売上額しか見ず、売上の右肩あがりだけに注力していた。財務経理の素養がなく、粗利益さえも考えが及ばない。「売ること」だけが正義。
象徴的な例が、彼が営業部長時代に3,000万円の売上を年度末に新規であげて予算達成と宣うが、直接原価が2,900万円(単なるハードウェア販売であり主力自社製品の売上ではない)、さらに社内の人員を多く使っての設置や外注業者を入れての工事など、粗利益で見ればマイナス。売上予算は達成だが、利益予算は未達。

根本には「営業がお前らを食わせてやっている」があったのかもしれない。確かに売上をあげることが企業の基礎であるが、開発やバックオフィス、サポート部隊の協力の上での営業活動でもある。
本セミナーへの参加も促したがごにょごにょと断られた。あげくに中止勧告。

財務経理知識は職責関係なく必須のもの

上記、愚痴のように聞こえるかもしれないがそれは本意ではない。
私は怒りではなく、憐憫と悲しみの感情を抱いた。経営者として財務経理の重要性を理解していなくて、この先も「売上」一辺倒でやるのか、と。

企業に必要なのは売上ではなく、粗利益であり、営業利益である。

経営視点を構成する要素の一つが、財務経理視点・知識だと言い切りたい。財務経理視点も持っている経営者・マネージャーは会社がステップアップするフェイズにおいて大きな力を発揮するはずだ。
実際、セミナーをやめたあとも個人的にレクチャーをお願いしてきたマネージャーもいた。彼の提案書には技術的なことだけでなく、利益の観点からのポイントも明記されるようになった。

創業者と、後継の経営者の置かれた状況の違い

一般論として、創業者は会社の設立から事業を軌道に乗せるまで試行錯誤し、時には資金繰りで窮地に陥ったり、過去最高益を更新したりして事業を継続させてきたはずだ。人しれぬ苦悩や金銭的プレッシャーも経験したであろう。自然と財務経理視点も持って経営計画を作成したり、金融機関と交渉する必要もあったはずだ。

だが後継は(※一概には言えないが)財務・経営基盤がある状態で引継ぐ。明日の資金繰りを心配するような状況ではない。社員をそれなりに抱えていても売上も利益もある程度は安定。財務経理の視点がなくても当面はなんとかなる。
※財務経理視点を持ち、赤字からV字回復させる後継社長ももちろんいるので「一概には言えない」としている

財務経理知識は企業を強くする

自分が財務経理を生業とするからこの主張をしているわけではない。
この視点・知識の欠落が、企業が本来もっと伸びる可能性を摘んでいると感じるからだ。後継であろうと、財務経理視点はぜったいに欠くべきではないパーツである。精神論ではなく、数字から経営を考えることが出来るのは武器だ。

経営陣やマネージャークラスも専門的なことを覚えるべき、ではない。
マネージャーは各部門の戦略に財務経理視点を加えれば、自部門の成長のヒントとなり、企業全体の成長にもつながる
経営陣は、売上と同じレベルで財務経理を大事にすることで、アクセルとブレーキの踏み間違いを防げる。

まだ若い社会人や学生の方も、将来どんな職種に就こうが、この知識や視点は自分の視野を広げるのに必ず役に立つ。起業を考えている方ならなおさら。簡単な解説本やYouTube動画、web記事、オンラインセミナーなどなんでもいい。視点がひとつ加わるだけで、自分の付加価値は倍になる

株式会社Progress|清水裕矢


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