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【短編小説】宇宙旅行にあたって

2275年7月、小惑星HNN27に宇宙船が着陸した。中からは3人の調査隊が降りてきて、そしてすぐに生命の痕跡を見つけた。それはカッパのような足跡で、風の強い小惑星HNN27にあってもハッキリと形を留めていた。
まだ新しい、すぐそこにいるはずだ。隊長はそう言うと地球の1/5の重力の中を泳ぐように走り出した。
それは直ぐに見つかった。1番もたもたしていた新人が、見つけたというよりは後ろから肩を叩かれたという。
初めて見る地球外生命体は、当然意思の疎通は出来ないものの驚く程に人類に似ていた。調査隊が体の隅々まで調べたがまさに人間といった具合で、まるで人類の進化の必然性を表しているかのようだった。そして、それは突然の「取り調べ」に対して実に協力的であった。
生命体について調査船に積まれた簡易的な機器で調べても人類との違いが見つからず、調査隊は頭を抱えた。もっと精密な検査をするために地球へ同行してくれないかと頼んだところ、それは快く引き受けた。
全くもって不可思議な反応であったがこれで研究がすすむ。調査隊と生命体は地球への帰路に着いた。
家路は長く退屈であったため、調査隊は興味本位でそれに人間の言葉を教えた。それらは直ぐにそれをマスターした。地球外生命体というのはなかなかの知能を持っているらしい。彼らがすっかり仲良くなってジョークでも言い合うようになった頃、船は地球に到着した。宇宙船には3人の死体が残され、彼は姿を消した。
2305年現在、宇宙へ島流しになっている凶悪犯は20人いるが、宇宙旅行の際には全員を把握しておかなければならない。なぜ覚えておかなければならないかというと、そういうことである。