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【短編小説】待ち合わせ

756文字/目安1分


 踏切の向こう側で君が待っている。

 待ち合わせは朝。少し早いけど、この時間でしか見られない景色があるから、どうしても一緒に行きたかったんだ。
 誘う時は断られないか不安だったけど、快くオッケーしてくれた。

 カンカンカンと一定の間隔で音が鳴る。

 反対側にいる君は小さく手を振っている。それがかわいらしくて、ついにやけてしまう。
 この踏切は駅のすぐ隣にある。停車して人が乗り降りする時でも踏切が閉まっているから、待ち時間が長くなりやすい。早く開かないかな。すぐにでも君と一緒におしゃべりがしたい。

 上りの電車が駅を出発し、どんどん加速して走って行った。そのタイミングで下りの電車も駅に到着するようだ。踏切は閉まったまま。
 向こうの君は笑った顔で、また手を振ってくれている。返事をするように僕も手を振った。

 今日はとっておきの景色を君に見せた後は、のんびりと散歩をしてからランチをする。君の好きなハンバーグ。喜んでくれるかな。今から楽しみだ。

 下りの電車が駅に到着したタイミングで、上りの電車も駅に到着した。その電車が出発したすぐ後に、またも下りの電車がやってくる。
 電車が来ると君が隠れて、過ぎるとまた向こうに見える。その度に君は笑顔で手を振ってくれる。

 さすがに平日の通勤ラッシュの時間帯はこうなるか。学生だから二人とも時間をつくりやすいけど、思わぬところに落とし穴があるな。

 上りの電車が出発すると、隠れていた君が見えて笑顔で手を振ってくれる。そのタイミングで下りの電車も近づいてくるから踏切は開かない。そして電車が駅に到着すると、上りの電車も駅に到着する。出発したタイミングですぐまた下りの電車がやってくる。君は向こう側から笑顔で手を振っている。

 踏切はカンカンカンと、一定の間隔で鳴っている。



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