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【短編小説】日常

485文字/目安1分


 早起きは三文の徳って?

 そんなことは知ってるよ。本当にいいことがあるかは知らないけど、朝の五分と夜中の一時間は同じくらいの価値があるよ。
 朝起きて支度して家を出るまでの時間と寝ようと思って布団に入るまでの時間はだいたい一緒だよ。むしろ布団に入るまでの時間の方が長いよ。なんなら布団入ってから寝るまでなんかもっと長いよ。体感はほんの数分なのにさ。

 五分早く家を出られたら電車の乗り換えにわざわざ走らないし、信号無視もしないし、道に広がるのろまな集団にもイラつかないよ。
 痛む膝を無視して階段を駆け下りないし、息が上がったまま満員電車にも乗らない。

 だったら早く寝て早く起きたらいいってね。そうだよごもっともだよ。でもだからこそ貴重な朝の数分を睡眠にあてるんじゃないか。

 無理せずほどほどにって?
 それができたら苦労しないよ。

 物事は考え方次第って?
 そんな都合よくはできないよ。

 嫌なことも捉え方次第だって?
 嫌なものは嫌なんだよ。

 後悔しないようにって?
 もう手遅れだよ。

 真面目なだけじゃ幸せになれないって?
 やかましいよ。

 それでも認めてくれるって?
 ありがとよ。



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