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日誌「スイス プチ・パレ美術館展」 #498

新宿が苦手になったのは大学時代だったと思う。人の多さや駅の複雑さ、良い思い出の無さがそうさせている。そういった経緯で、SOMPO美術館にフィンセント・ファン・ゴッホの『ひまわり』があれど、これまで行く気力が湧かなかった。ところが、この度山手線沿線で用事があったため「これはチャンスだ!」と夕方過ぎに『スイス プチ・パレ美術館展』へ向かったのだ。

ジュネーブにあるプチ・パレ美術館は長いこと休館をしているそうで、現在は各国の美術館に貸出を行っているらしい。また、SOMPO美術館は常設展というものがなく、先の『ひまわり』を始めコレクションしている作品を企画内容に合わせて展示しているようだ。まず、そういう美術館の在り方もありなのだなと思った。常設もあり企画展もあるというのはかなりのスペースが必要なのだろう。

最初は1880年ごろの印象派、新印象派の絵が並ぶ。プチ・パレ美術館自体が実業家のコレクションを公開するために開設されたとのことで、その点はルートヴィヒ美術館展と近しく、その後はフォーヴィスムやキュビスムの作品が並んでいく。しかし、“フランス近代絵画”というものが中心にあるので、芸術の変遷というものはよく分かった気がしている(気だけ)。

印象的だったのはジャン・メッツァンジェの『スフィンクス』。キュビスムということだが、1950年頃からのポップアートだと言われても信じてしまいそうなぐらいハッとさせられる作品だった。個人的にキュビスムを前にすると「どっちからどう見るん!?」と心で叫んでしまうのだが、それとはまた違う。彼のWikiを見ると、やはり具象性が比較的明確な作品が多いらしく賛否両論あったようだ。

展示の最後にはSOMPO美術館収蔵コレクションが並んでいる。藤田嗣治やルノワールが展示されているなか、やはり目がいくのは『ひまわり』だ。著名な絵画の実物は意外と小さかったりするが、想像以上に大きな絵画で驚いた。暖かく陽だまりのような色調で、なんとなく作者の心情が透けてくる感じがする。「これは怪盗キッドも狙うはずだ」と訳のわからない感想を抱いて騒がしい新宿の街へ戻った。

フィンセント・ファン・ゴッホ / ひまわり