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金融市場に燻る「不都合な真実」?

先週を含めここ数週間は、経済指標の強さとそれに伴う米FRB(連邦準備理事会)高官のタカ派的発言が金融市場に大きな影響を与えており、株価は上値の重い展開になりがちです。

ただ、先週後半は株価が反発しました。足元の米経済指標は強いが早晩数字には弱さが見られ、米利上げは終了するという期待と、ボスティック・アトランタ連銀総裁が「(利上げ停止に関して)夏の半ば、夏の後半までにそうなる可能性がある」と述べたことが買いにつながりました。

米S&P500は4週ぶり、日経平均は3週ぶりに前週比上昇となりました。日本株は、米国の動きに加えて、中国景気の回復や5日に開幕する全人代での景気刺激策への期待が影響しています。米10年国債利回りは前週比でほぼ横ばい、ドル高円安が続いていたドル円は135円台に反落しています。

こんな感じの金融市場には、今、投資家にとって「不都合な真実」となり得るものが見え隠れしています。もうなってしまっているというよりは、なってしまう可能性がある、あるいはじわじわとそうなっているが多くの人は気付いていない、というものです。ここでは3つほど挙げます。

1. 大幅利上げにもかかわらず景気は思っていたほど減速していない
~ ここまで4.5%も金利を引き上げてきたのに、労働市場は堅調、消費動向はしっかり、インフレは根強い。このままだとさらなる利上げが必要で、もっと景気を抑えにかからないといけない、という「不都合な真実」の可能性がある

2. 一方で、企業利益の見通しは下方修正が続いている
~ 2023年のS&P500のEPS(一株当たり利益)見通しは下方修正が続いている。昨年9月時点では前年比8%台の伸びが予想されていたが、足元での予想は前年比2%台まで引き下げられており、企業利益はもはや株価を押し上げない、という「不都合な真実」の可能性がある

3. EPS(1株あたり利益)の下振れの割に株価が底堅いため、PER(株価収益率)が上昇するなどバリュエーションは割高
~ PERは株価÷EPSで計算されるため、分母のEPSが下振れするとPERは上昇する。昨年9、10月は15倍台だったのだが、足元では17倍台。企業利益見通しの下方修正が続く中でPERが過去10年平均を僅かながら上回っていることは、株価の調整が進んでいないという「不都合な真実」の可能性がある

しかし、今のところ市場参加者はこれらが「不都合な真実」となる可能性は見ておらず、株価には底堅さがみられます。なぜかというと、

1. 景気はこれから減速してくるはず。だからそのうち利上げは止まる、そして利下げが来るはず

2. どこかで企業利益の見通しは底打ちし、反転する

3. そうなれば、利下げ&企業利益底打ちで株価上昇となるので、今から買っておく

と見ているからです。

しかし、最初に挙げた、1、2、3が本当だとすると、このまま株価の上昇が続くかという点が怪しくなります。というのも、

− 今までの利上げで足りなければ、政策金利の到達水準をより高くし、より長く金融引き締めを続けなければならない(後々、景気に今まで以上の下押し圧力がかかる)

− そうなるといずれ底打ちと思っていた企業利益の見通しは一段と下方修正される

− EPSがさらに下振れし、金利は一段と上昇、景気により下押し圧力がかかる、となると株の魅力はさらに薄れ、下落に転じる

からです。

なお、今回の「不都合な真実」については、そうなる可能性のあることに言及しており、すでに起こっていることを指してはいません。また「不都合な真実」かそうでないかは、必ずしも0か100かという話ではなく、また途中で状況が変わる展開もありそうです。それでも、市場参加者の目が一気に向かえば、相場に大きな影響を及ぼすでしょう。

個人的には、企業利益見通しの下振れなど不都合な真実の一部に注目が集まることで、今の割高な株式相場に調整が入り、長期的な視点でみた場合の買い場を提供してくれることが望ましいですが、現在のように経済見通しが不透明で、金融当局さえも予想を大きく外す状況が続いている中では、どのようなシナリオが実現するのか、決め打ちはなかなか難しそうです。

ですので、長期の資産形成を行う私たちは引き続き、市場に参加していることが大事、無理なリスクは取らない、高値を追いかけて買わない、下がったらたくさん買えると思って怖がらない、といった心構えで臨むのが良いと考えます。

今週も楽しく増やす資産形成をしていきましょう😊

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