記事に「#ネタバレ」タグがついています
記事の中で映画、ゲーム、漫画などのネタバレが含まれているかもしれません。気になるかたは注意してお読みください。
見出し画像

舞台 「一九一一年」 観劇レビュー 2021/07/11

画像1

【写真引用元】
劇団チョコレートケーキ公式Twitter
https://twitter.com/geki_choco/status/1386619372819476482/photo/1


画像2

【写真引用元】
劇団チョコレートケーキ公式Twitter
https://twitter.com/geki_choco/status/1386619372819476482/photo/2


公演タイトル:「一九一一年」
劇場:シアタートラム
劇団:劇団チョコレートケーキ
脚本:古川健
演出:日澤雄介
出演:西尾友樹、佐藤弘幸、青木柳葉魚、吉田テツタ、岡本篤、島田雅之、近藤フク、林竜三、浅井伸治、菊池豪、谷仲恵輔、堀奈津美
公演期間:7/10〜7/18(東京)
上演時間:約130分
作品キーワード:時代劇、日本史、法廷劇、考えさせられる
個人満足度:★★★★★★★★☆☆


歴史的事実を参考にしてフィクションを作り舞台作品を創作する劇団チョコレートケーキの2度目の観劇。
今作は10年前に初演された作品の再演で、1911年に起きた「大逆事件」をモチーフとした作品となっている。

「大逆事件」は、天皇の権威が強かった時代に、天皇の暗殺を企てたとして幸徳秋水らが逮捕・起訴された事件である。
幸徳秋水らは社会主義者・無政府主義者といって、個性を重んじ自分らしく自由に生きることを主張していたが、まだまだ当時の日本は国家権力による一般市民への束縛が強かったため、激しく弾圧された。
そんな個人の尊重を否定するような事件を、今の現代人にも響くようなニュアンスを加えてオリジナルに創作された舞台作品だった。

机と椅子を高く積み上げてまるで牢獄を思わせるような舞台装置や、舞台上の明と暗を巧みに演出している舞台照明、悲劇を象徴するようなヴァイオリンの音楽といった舞台美術もさることながら、キャスト陣の良い意味で重々しく迫力のある演技が素晴らしかった。
また、個人的に作品を観劇して感じたことは、国家権力によって自由を妨げられるって形は違えども現代にも通じる点があると思ったり、「死刑制度」についても色々考えさせられた。

凄く固い印象のある作品かもしれないけど、多くの人に観てもらいたい作品。
2021年2月に観劇した当劇団の「帰還不能点」よりも個人的には好きだった、おすすめ。

スクリーンショット 2021-07-12 1.17.37

【写真引用元】
ステージナタリー
https://natalie.mu/stage/gallery/news/436348/1626837


【鑑賞動機】

2021年2月に舞台「帰還不能点」を観劇して劇団チョコレートケーキの、歴史を基にオリジナル脚本を書く作風と、キャスト陣の演技力の高さに惹かれたから。凄く舞台作品として洗練されている感じがして、あまり当たり外れのない作品を創り上げてきそうなイメージがあったから。
今作は、10年前に初演されたものの再演できっと面白い作品であろうと思い観劇することにした。


【ストーリー・内容】(※ネタバレあり)

舞台は、1946年の終戦後の田原巧(西尾友樹)のモノローグから始まる。田原は無罪であるにも関わらず多くの人を殺してしまったと。

1910年5月、当時東京地裁の判事を勤めていた田原は、同じく東京地裁の判事の潮恒太郎(佐藤弘幸)と共に大逆事件の予審判事に任命された。田原は早速大逆事件について調査を進めるが、首謀者である幸徳秋水やその妻の菅野須賀子らは天皇暗殺を企てただけであり実行には至っておらず、さらに大逆事件によってその他に逮捕されている人の多くが、この天皇暗殺に関わってないことに気がつく。
田原はその予審に関する疑問点に対して、大審院長である横田国臣(青木柳葉魚)や大逆事件本審裁判長の鶴丈一郎(吉田テツタ)に問い正すと、まるでこじつけのように逮捕された彼らを悪者扱いして罪人に仕立て上げている様子であった。田原はこのことについておかしいと異議を唱えるが、潮はそのおかしさに気づきながらも同調圧力によって横田や鶴の意見に従うのだった。

大逆事件によって逮捕された者は、検察によって予審を受けていた。幸徳秋水の妻である菅野須賀子(堀奈津美)も同様に予審を受けていた。
東京地裁検事局で大逆事件の検察を務める武富済(島田雅之)は、大声で怒鳴り散らしながら菅野を拷問していた。大声で怒鳴ることによって拷問を受ける側が萎縮して自分が有罪であるということを自白することを狙って。しかし菅野は女性をバカにするのではないと、頑なに事件について事実だけを述べた。
次に同じく東京地裁検事局で大逆事件の検察を務める小原直(近藤フク)が予審にやってくる。彼は武富と違って非常に穏やかだった。淡々と武富の性格を語ったり、彼が「小便検察」というあだ名がついた所以を語ったりしていた。それでも菅野は決して大逆事件のことについて、自分らが不利になるようなことを語ったりはしなかった。

今度は田原が菅野の予審を担当することになる。田原は菅野に対して、菅野が幸徳の前夫である荒畑へ送った復縁の申し出の手紙を突き出し、菅野が幸徳と不仲になったことを追求するが、菅野は幸徳とは既に離婚しており手紙を送ったのも離婚してからの話であると事実を語る。
その後菅野は、なぜそのような手紙を私にわざわざ突き出す必要があるのかと強い口調で責める。それに対して田原は萎縮してしまう。菅野は田原を笑い、あなたに判事は務まらない、心優しすぎると言われてしまう。
菅野は語りだす、彼女の生い立ちを。彼女は両親から酷い仕打ちを受けており自殺も考えたその時に出会ったのが、社会主義思想だった。そこから幸徳秋水らに出会い、生きる希望を見出した。自分の足で立ち、自分の頭で考え、個性を大事にする、そういった生き方が出来ればよいのにと。そしてそんな生き方が出来る時代が来てくれないものかと願っていた。

その頃、この大逆事件において天皇暗殺計画に組みしたとして、計26人の者が逮捕・起訴されていた。彼らはただ天皇暗殺のために使われようとしていた爆裂弾の製造に関与した大石という人物を知る者というだけであるにも関わらず、何かと理由をつけて逮捕・起訴されている者ばかりだった。その中には、社会主義者・無政府主義者でない人物も含まれていた。彼らは武富に容赦なく予審で拷問のように尋問され、それに萎縮して犯していない罪を犯したと語らせて有罪とさせているようだった。
田原の元に、青年弁護士の平出修(菊池豪)がやってくる。彼が田原に完全無罪な者まで有罪にさせられている事実を伝え、この予審のやり方は間違っていると言い合っていた。

ついに全員の予審が終わった。逮捕された者全員が有罪となって裁判にかけられる形となった。検察の武富と小原はよくここまでやった、あともう一息だと言い合う最中、田原はこんな予審のやり方は間違っているとまるでちゃぶ台返しをするかのように反論する。武富は田原の態度を激しく叱責して口論になる、潮はその喧騒を取り押さえる。
そこへ小原が、我々は家族を養うために仕事をしたまでだ、検察として責務を全うすればそれで良いのだと言う。そして小原が武富に対して予審は楽しかったかと問うが、首を横に降っていた。
武富と小原が去った後に潮は田原に対して、なぜ大人しくしていれば無事に済むものを最後の最後で反論を唱えたんだと強く言う。
その後、潮は26人全員が有罪であるという予審の報告書に対して署名がないと武富、小原から指摘され、渋々署名する。そして田原の分まで署名させられる。

ついに大逆事件に関する大審院第1回公判が開始される。検察側は、26人が予審を行った結果全員が有罪であり死刑に処するべきと唱えたことに対して、弁護士側の平出が死刑にかけられている者のほとんどが事件と関与のない無罪である人間で、天皇暗殺を企てた人間も企てただけで実際に決行されておらず、決行されるかも分からない状況で死刑に処すべきではないと唱える。
しかし、弁護側の主張は通らず判決は全員死刑と決定した。

判決も終わり、武富、小原、潮、田原らはシャンパンを開けて打ち上げをしようとしていた。田原は自分らが楽しんでいる間に、死刑判決を受けて獄中で生活する人々がいることを考えると全く楽しめる気持ちにはなれずにいた。そこで田原は横田に対して土下座をしながら、死刑にかけられる24人全員を特赦ということで無期懲役にさせてくれと懇願した。死刑にせずに無期懲役になったという天皇様の懐の深さを知る機会にもなり、より天皇への忠誠心も深まるのではないかと。
それに対して、武富や潮まで土下座してその要望を支持し懇願した。司法省刑事局長の平沼騏一郎(浅井伸治)は、半分の12人を特赦として無期懲役とし、半分を死刑にするならば良いだろうということになり、全員という訳にはいかなかったが多少田原の意見を汲み取られた形となった。
そこへ元老の山県有朋(谷仲恵輔)が現れる。判決が終わった後に判決内容が変わるとはと。

結果、大逆事件で逮捕・起訴されたうちの12人は死刑となり、その中には菅野須賀子もいた。残りもうち5人は獄中で死亡した。山県は死ぬまで頂点に君臨続けたが、平沼は半年間だけ内閣総理大臣の座についただけでその後失脚した。田原は判事をやめて田舎に戻って農業に従事した。
1946年、田原はようやく大日本帝国憲法から日本国憲法に変わり新しい世の中になったことを、菅野の墓場にやってきて天国にいる彼女に伝えた。ここで物語は終了。

最初は凄く歴史的背景を知らないとストーリー展開についていけないような内容かと思っていたが、歴史に詳しくない私でも理解出来るような分かりやすい構成だったかと思う。
心優しい人間にお国の仕事は務まらないのか、心を殺して冷徹な人間だけが上にのし上がることが出来るのか、そんなテーマがぐっと突き刺さる辺りが劇団チョコレートケーキの作品らしくて好きだった。
さらに今回の作品は、死刑制度ということについても考えさせられた。人の命をそんないい加減に国が扱って良いものなのだろうか、そしてこれは未だ死刑制度を導入している現在の日本にも言えることだと思う。
凄く考えさせられるテーマで興味深かったし、ストーリーとしても飽きさせる要素が少なくて終始見入っていた。「帰還不能点」よりも満足度が高い作品だった。


【世界観・演出】(※ネタバレあり)

劇団チョコレートケーキの舞台美術は、豪華という感じではないのだが物語の重厚さに相まって非常に洗練された印象を受けて個人的には大好きである。
今作も決して豪華ではないのだが、余計な演出は全く無くて全てが研ぎ澄まされていた。舞台装置、照明、音響の順に見ていく。

まずは舞台装置から。目を引くのが何と言っても舞台上にドンと設置されている木造の机と椅子を垂直方向に積み上げたオブジェのようなもの。このオブジェの下にローラーのようなものが付いていて、舞台上奥から手前に移動させることが出来る。このオブジェの存在感が今作品では凄く良い世界観を醸し出していた。個人的にはこの装置がある種牢獄を想起させる感じがして、例えば武富がこの装置の奥で誰も座っていない椅子に対して拷問のように脅して予審をしていたシーンが印象的で、ある意味この装置が恐怖を煽る効果を持っていた感じがあって凄く良かった。
また装置ではないが、大逆事件で逮捕された者が全員桶のようなものを頭に被って顔が全く見えない形になっていた演出が好きだった。凄く恐怖を感じるし、自由を奪われたという印象がより強く感じられた気がする。

次に照明、今回の舞台照明は派手ではないものの個人的には印象に残るものが多くて好きだった。
まず1つ目は、菅野須賀子のモノローグのシーンの照明、田原に対して自分がなぜ社会主義に傾倒するようになったのかを語る時、生きる希望という言葉が出てきた時、照明が物凄く白く明るくなって希望の光のようなものが差し込んでいた演出が好きだった。あのシーンは菅野須賀子の一番の見所シーン、終始重厚で重たい話が続くのだがこのシーンだけ紅一点な存在なので、凄く感性に訴えかけてくるような印象があって好きだった。良い意味で目立った。
もう一つが、武富が誰も座っていない椅子に向かって怒号しながら拷問するシーンの青い照明。机と椅子を積み上げた舞台装置を挟んで舞台後方側で演じられ、そこだけブルーの照明が差し込んでいたのは印象的だった。素晴らしかった。
あとは、菅野須賀子が最後に死刑となって田原の元から、例のオブジェと共に後ろにローラーで下がっていくシーンで、徐々に菅野須賀子に当たる照明が暗くなっていく感じが凄く上手いと思った。まるで希望の光が消えていくような感じ。切なくなるが好きだった。

そして音響。
まず音楽は、要所要所で挿入されるヴァイオリン(またはチェロ?)の音楽が印象的だった。たしか前回の「帰還不能点」でも似たような音楽が流れていた気がする。劇団チョコレートケーキの重厚な歴史ドラマにはこういった弦楽器のもの悲しげな音楽が物凄くマッチしている。今度は、ぜひ奏者とコラボして生演奏で劇団チョコレートケーキの作品を観たいと思った。
そして効果音に関しては、一番最初のシーンの「ゴトゴトゴト」というまるで牢獄の扉が開くような厳しい効果音が非常に良かった。それと共に徐々に照明が差して例のオブジェが前方へ迫ってきて、その後ろに桶を頭に被って顔が全く見えない逮捕・起訴された人々が登場するシーンが非常に素晴らしかった。

スクリーンショット 2021-07-12 1.17.55

【写真引用元】
ステージナタリー
https://natalie.mu/stage/gallery/news/436348/1626836


【キャスト・キャラクター】(※ネタバレあり)

劇団チョコレートケーキの作品に出演されるキャストさんは皆渋い演技が上手いというか、凄く洗練されていて味わい深さがあるのが特徴的。そのキャストさんがというよりは、作風がそういう雰囲気を作っているのかもしれないが。
特に際立ったキャストをピックアップしてみる。

まずは主人公の田原巧を演じた劇団チョコレートケーキ所属の西尾友樹さん。「帰還不能点」で一度演技を拝見したことがあるが、ちょっと記憶が薄いので前作の演技との比較は出来ないが、非常に良いキャラクター設定だった。
若さも相まって凄く正義感が強くて、曲がったことを許さないというかこれぞ主人公といった言動をするのだが、そこを上手く演じきっていたと思う。
特に面白かったのが、菅野須賀子に完全に予審で打ちのめされるシーン。あなたには心優しすぎて判事は務まらないわねと言われてしまうあたりが、田原の人の良さがしっかりと出ている象徴的なシーンだと思う。
また、26人全員の予審が終わった所で武富と小原に噛み付いてくるシーンも好きだった。凄くハラハラさせられた、それ言っちゃヤバいよって観客も凄く思ってしまう。そんな下りはたしか「帰還不能点」にもあった気がする。人によっては爽快に思うのかな、個人的には潮みたいな立場を取ってしまうかな。

次は紅一点で活躍していた菅野須賀子役の堀奈津美さん。堀さんは谷賢一さん主宰のDULL-COLORED POPに所属する女優。今作では物凄く芯が強くて力強い女性を演じられていた。
こういう時代劇って凄く女性のたくましさみたいなものが際立ってくる、前回観劇した扉座の「解体青茶婆」の砂田桃子さんが演じた蘭もそうだった。特に予審を武富や小原、田原から受けるシーンのひるまない強さが非常に格好良く感じられた。
そして、田原に語った自分が社会主義に傾倒していった理由をモノローグで語るシーンがなんとも良い。あそこは凄く会話だけが進むシーンなのだが惹きつけられた。

検察役を演じた、武富済役の島田雅之さんと小原直役の近藤フクさんも良かった。
島田雅之は演技を初めて拝見したが、怒号しながら激しく拷問する辺りの迫力が凄まじかった。だからこそ、予審終了後に田原がこんなのおかしいとちゃぶ台をひっくり返した下りで叱責する辺りのシーンにも緊迫感を与えられたのだと思う。
近藤フクさんは、iakuの「逢いにいくの、雨だけど」で初めて演技を拝見したが、今作ではあまりにも雰囲気が異なり過ぎて全く気が付かなかった。小原は武富と対照的で凄く落ち着いて客観的な人物で、あまり熱くなることのないキャラクター設定だが、こういう人物凄く官僚にいそうだなと思ってみてた。終盤のシーンで、田原が全員を特赦にと土下座したシーンで最後まで土下座しなかった小原という人間性は凄く納得感があった。この人が一番仕事を仕事としか捉えていない人物だったと思う。判事・検察の中で一番冷酷な人間に感じた。

個人的に凄く好感のあったキャストは、弁護士の平出修役を務めた菊池豪さん。不器用そうながら凄く人間味のありそうな役がしっかりとハマっていた。
一番の見せ所は、公判のシーンで大逆事件で捕まった26人の死刑に反対するシーン。非常に説得力があって、凄く意見に人間性が感じられて生き生きしていて好きだった。


【舞台の考察】(※ネタバレあり)

今作品を観劇して感じたことは、「国家権力による一般国民の意志を無視した行使は無くならない」ということと、「死刑制度の問題」である。それぞれ個人的に感じたことをつらつらと書いていこうと思う。

まずは、「国家権力による一般国民の意志を無視した行使は無くならない」について。大逆事件が起こった1910年、11年は明治時代末期ということで、天皇は神様のような存在として考えられており、天皇を暗殺しようと計画した段階で死刑が確定してしまうという時代だった。
そしてこの大逆事件によって、天皇暗殺を企てた人物だけでなく、多くの社会主義者・無政府主義者が死刑となる羽目となった。まだこの時代は、個性の尊重や個人の自由なんてない時代だった。そんな強い国家権力を強いていたがために、個性を尊重し自由を求める運動は当然のように広まり、社会主義者や無政府主義者が増えていたのだろう。ある種そういった思想を持つ人々を一掃しようと、大逆事件を利用して罪を着せて死刑に追い込んでしまったというのが事実のようである。
これは、完全に国家の都合によって政府を脅かす存在を始末したと言って良い。ある意味国によって何の罪もない人間が殺されたと言って良い事件だった。まだ明治時代ということもあり政府が市民の反乱によって転覆することを恐れた処置だったのだろう。
ただそういった一般国民の意志を無視した国家権力の行使というのは、残念ながら今の日本社会においても残ってしまっている。その最たる例が東京オリンピックの開催である。日本国民の多くが東京オリンピックの開催に反対していた。にも関わらず国は東京オリンピック開催を強行しようとしている。
この作品は、本当にこのタイミングで観てしまうと、東京オリンピックのことが頭から過ぎらざるを得ないから、物凄く強烈な主張をしているような感じにも受け取れる。
劇団チョコレートケーキの作品は、過去の歴史を扱いながら上手く現代社会を婉曲的に批判することが上手いと感じる。

そしてもう一つが「死刑制度の問題」である。
この作品では大逆事件によって12人の人間が死刑となっているが、ここに関して問題は大きく2つあると思っている。一つは罪のない人間が有罪にさせられて死刑となっていること、そしてもう一つは人の生死が権力者たちによって安易に決定されていることである。
一つ目の問題に関しては、「冤罪」という形で現代も問題視されている事柄である。日本でも「冤罪」によって無罪であるにも関わらず何年も刑務所に入っていた人や、無罪であるのに死刑が執行された人も存在する。こうした問題は、今後発生しないように取り組みを考えて行かなければいけないと思う。
個人的にはもう一つの問題、即ち人の生死が権力者によって安易に決定されているということの方が重大だと感じている。これには、「死刑制度」の問題とも直接関わってくる。勿論大逆事件が起きた時代は、裁判自体もなかなか人権が保障されていないような今では考えられないやり方だったので、そういった問題も今以上に深刻だったとは思うが、現代の日本においても「死刑制度」がそもそも存在する限り付きまとう問題なんじゃないかと思う。
「死刑制度」は世界的には廃止の方向に向かっていて、日本のように未だ導入している先進国は少ない。個人的には「死刑制度」自体反対なのだが、そう思う理由としてどんなに慎重に死刑か否かを議論したとしても、死刑とするという判断が必ずしも誰が見ても正しいという状況にはならないからである。
以前、法務大臣が変わったことによって死刑判決が増えたということを聞いたことがある。もしそれが、法務大臣が変わったことによる変化だとしたら大問題だと思う。人の生死の決定が法務大臣の志向に依存していることになるから。
さらに、2018年にオウム真理教の死刑囚がまとめて死刑執行された。個人的にこれも大問題だと思っている。勿論オウム真理教が行ったことは非道なことだとは思っているが、平成最後の年に大事件の清算を行うかのように執行されるべきことではないと思う。その辺りも考えて、日本の死刑制度には大きな欠陥があると思っている。

このように、日本の歴史から現代社会への疑問を観客に投げかけるやり方がとても上手い劇団だと思っている。今後も公演があったら観に行きたいと思う。


↓劇団チョコレートケーキ過去作品


↓近藤フクさん過去出演作品


この記事が参加している募集

舞台感想

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?