父と母と東京タワー🗼
「このあと東京タワーに行くぞ」
生まれてからずっと地元に住んでいる父。
遠出するにしてもほとんど九州内なので、今回の顔合わせで東京に来てもらうのはきっと腰が重いだろうと思っていた。
東京に来て2日目の夜
母がもんじゃ焼きを父にも食べさせたいとのことで月島で食事をしたホテルへの帰り道。
その一言は父の東京で初めての意思表示だった。
1日目、両家顔合わせ食事会の後、母は同窓会へいき、残された父と私。
父は物心ついたときから無口で、大人になってからも色々あり、私たちは母やペットの犬無しでは会話ができない状態になっていた。
また普段いかないような格式高いお店で、義家族への気遣い、緊張から解き放たれてからはドッと疲れを感じたので、その日は解散した。
2日目は朝から両親をつれて高尾山へ。
「やまのぼりにいきたい!」と言っていた幼い私を、父はよく山に連れて行ってくれた。最後に一緒に登ったのはおそらく10年前だ。
ほんのり赤に色づいてきた山道を進んでいく私。
振り向かずとも、後ろから聞こえてくるはぁはぁという息で、父の様子を想像しながらペースを調整する。
昔、二人で福岡タワーに行ったこともあった。
その日は歩き疲れて、私が不機嫌になってしまった記憶がある。
あんなに小さかった私が、今では父を引っ張って歩いている。
そんなことも灌漑深かった。
無事に登り終えて、父は電車で爆睡していた。
月島もんじゃを堪能したあと、夫婦二人にしようかと思っていたが、せっかくなので私もついていくことにした。
近づくにつれて父が高揚している気がした。
「東京タワーなんて外から見た方が綺麗よ」母はそういっていたが、22時まで受け付けしていたので展望台へいくことに。
オリンピックの時によく知らない男性とデートできたことを思い出した。
私はその時よりも確実に楽しんでいる。
日曜の夜だが以外と人がいて、エレベーターには私たち家族以外みんな外国人だった。
「東京タワーなんて外から見た方が綺麗よ」私もそう思っていたが、夜の東京タワーから見る都内の夜景はキラキラと輝いていて幻想的だ。
感動と同時に「家族と離れて自分はこの東京に住んでいるんだ」そんなことを実感して少し寂しくなった。
記念に写真を撮ると顔が真っ暗で、3人で昔のように笑い合う。
そして「コーヒー飲みたい」という父の要望で東京タワー内のカフェへ。
「カフェラテかな…いやコーヒーちょびっとアイスつきかな」
「何それ!私もそれにする!」
「あなたたちは本当同じもの好きよね~」
私の好みは、お酒を飲まない甘党の父にそっくりだ。
帰りの電車は反対方向だ。
「気を付けて帰ってね」母に言われるとなんだかグッとくる。
「明日帰るのは夕方だよね。それまでふたりとも何するの?」
「どうしようかな~築地に行こうかしら」
「明日は有給とったから、私も朝起きれたら行くよ!」
ばいばいするのが名残惜しくなって、翌日も一緒にいることにした。
いつも気を張って、色んなことを考えて悩んで…
親といると自然と子どもの頃みたいに戻った気がする。
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