見出し画像

採用はマーケティング③ ~お祈りメールのその後~

人材募集に応募していた会社から、お祈りメールが届いた。
書類選考で落ちたということだ。
人気企業で、しかも大々的に募集していたので、ものすごい倍率なんだろうなとは思っていた。それでもやっぱり、せめて面接には進みたかった…というのが本心。あぁがっかり、と肩を落とした。まあ、仕方ない。「面接にさえ呼んでもらえなかったよー」と、友人に愚痴った。

数日後、ぽちった覚えのない小包みが届いた。
送り主を見ると、先日お祈りメールを受け取ったその企業。物販もしている会社なので、「あれ、何か買ったっけ?」と思ったが、いや、何も買っていないはず。
宛先が間違いなく私なので、箱を開けてみた。出てきたのはその企業で販売している製品。3つも。
社長さんからのお手紙も入っていた。
「会社の思いを正面から受け止めて真剣に応募してくださったことに、こころから感謝しています。」

感動!と思うと同時に、正直、ぎょっとした。
これ、何人に送ってるんだ…ここにいくら投資してるんだ…。
製品代は原価で考えればそれなりとしても、送料がとんでもなくかかっているはず。そして、求人に応募して断られることなんて、一般的に考えてそれほど珍しいネガティブ体験でもないはず。それでも応募者1人1人に贈りものをするなんて。

やっぱり採用活動ってマーケティングなんだ。
特にBtoC企業、顧客体験大事。

その会社への応募にはかなりのボリュームのエントリーシートを書く必要があった。応募者が何時間もかけてそれを書いたことへの配慮もあるのかもしれない。
「すっごく時間かけて応募したのにさー。面接にさえ呼んでもらえなかったよー」という愚痴に対するカウンターパンチ。私もさっそく前述の友人に連絡した。「プレゼント来たー!やっぱりあの会社すごい、あの考え方好きー!」。ここでその会社に対する印象が大逆転したわけです。

国民総発信者のこの時代、BtoC企業の採用活動にとって、お断りした後のイメージ保持は本当に大事。そして難しい。応募者は少なからずその企業のファンである、または良い印象を持っている(=だから応募してきている)ことを考えると、その人たちに嫌われるわけにはいかない。でもお断りしないといけない。気持ちよく、今後もファンでい続けてもらわないといけない。

その方法は必ずしもプレゼントでなくて良いと思うけれど、そのイメージ保持に対してガツンと投資しているその姿勢が本当にすごいと思った。実際、この体験を私は何人かの友人に話した。こうやってnoteにも書いている。そうやって1人1人に目を向けることで、「くっそーあんなに時間かけてエントリーしたのに落ちたー」というネガティブ発信を払しょくできる可能性が大幅に上がるというわけだ。ネガ分がゼロに戻るだけでなく、ポジが生まれる可能性さえ上がる。

なんて分析されるのは、企業にとっては不本意なのかもしれない。「応募してくれてありがとう」の思いを伝えるためにプレゼントを送ってくれたのだと理解して、これからもファンでいようと素直に思えば良いのかもしれない。

でもやっぱり、学ばせていただきました。
採用は顧客との大事な接点、マーケティングなんだ、って。

今日も読んでくださりありがとうございました。

(今日の1枚は、2017年2月、パリにて。)


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?