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山と海

職場の誰もいない部屋でわんわん泣いた日、明日は絶対どこか遠くへ行こうと思った。物理的な距離ではなく、気持ちがなるべく現実から遠ざかる場所がいい。

「山へ行こう。ハイキングだ!」と飛び起き、ひとりハイキングを決行した。意気込んだものの、下調べせずに山へ向かえるほど無鉄砲な性格ではない。「○○(地名) ハイキング 初心者」。出てきた一覧から、景色のよさそうな場所を選んだ。

まずはブランチから。ちょっとした観光地のお蕎麦屋さんって、しゃんと背筋が伸びる感じがする。お上品な食べものランキングがあれば、間違いなく上位に入るだろうか。

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前の席にカップルが座った。彼女のほうに先にお蕎麦が運ばれる。「先食べなよ」「いいよ、待つから」「食べなよ」「一緒に食べたいから待つの!」この会話をファーストフード店で聞かされようなら白目になるところだが、ここはお蕎麦屋さんである。全く気にならないのが不思議だ、蕎麦はすごい。

そこから少し歩いて、山道に入った。倒木を超えるところからスタート。

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なかなか険しい道。そして誰もいない。もう少し人っ気のある場所だと思っていたが、辺りからは虫の音と風にそよぐ草木の音しか聞こえてこない。「そういえば虫、嫌いなんだった。」とやや後悔しながら速足で森の中を進んだ。根はビビりなので、頭の中ではずっと「ここで遭難したら誰にも知られず死んでくのか?」などと考えていた。

しかし、暑い。500mlの水では到底足りなさそうにない。それでも引き返すわけにはいかないので、ただ前に歩を進めた。

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途中、聞いたこともない動物の鳴き声が聞こえてきて心臓が飛び出しそうになったり、雑草に足を取られたりしながら、なんとかゴールらしきところにたどり着いた。が、登山ではなく、ハイキングコース。頂上の見晴らしがよいというわけではなく、小高いところから登ってきた方向をやや見下ろす程度のゴールだった。拍子抜けしたものの、充分にリフレッシュできた気がする。


着いたところから海も近かったので、バスに乗って海岸へ向かった。

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サーファーやビーチバレーをしている人たちを見て、海を楽しめる人と、山へ向かいたくなる人は、たぶん一緒じゃないんだろうなと、なんとなく思った。アウトドア、で括れば同じだろうけど、そこに行こうと決めた理由に違いがあるような。少なくとも私の中ではそうだった。

ともあれ、そこが山だろうが海だろうが、遠くへ行くことで私はいくらか心が落ち着く。なるべく現実から離れて、離れていくと「いつでもここまで逃げてきていい」と思えるからだ。「帰る場所を再確認できるから旅はいい」と言う人もいるが、どちらかといえば私は逆で、「こんなところにも私の居場所はつくれる」と思うことで、毎日を頑張るパワーになんとか変換している。

話が飛躍したところで終わります。つぎはどこへ行こうかなぁ。


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