天国一丁目/水庭まみ
文学フリマ東京35で購入。
「天国一丁目」、筆者は水庭まみ(@njamena22)
14篇の詩と、20首余りの短歌が収録されています。
詩集なのでページ数は40頁と少なめですが、14の詩の14の世界がいちいち新鮮で、緻密に選ばれたその語彙の連なりが、1篇の詩に充分なふくらみと豊かさとかおりと音を吹き込み、夢の球体のようになっていて、たくさんの夢を通過する、そんな感じの読書体験でありまして、大いに満足致しました。
抜き出して書けば、
素晴らしい異化効果ですね。それに加えてこれで始まるこの詩のいいこと!
『蝸牛』は文量が1頁しかないほど短いものなのですが、かなり好きですね。最後のアスパラガスのところで唸ってしまいました。
これもいいですね。ファンタジックでありながら実際に思い浮かんできそうでもあり、チャーミングなすぐれた比喩だと思いました。絶対自分じゃ思いつかない。
冊子のタイトルを冠するこの詩は、独特の息づかいがテンション感が最初から終わりまでいきわたっておりますが、私としてはここのリフレインが好きでした。
総じて上手なのですが、個人的に「あ、これいいな、好き」と思ったのは、『誕生』、『AはりんごのA』、『春菊を揚げる日』(最後のリフレインがとてもいい)、『蝸牛』(これめっちゃ好き)、『いい冬休み』(8センチCDのくだり最高です)
短歌でも私の琴線にふれるものがいくつかあったため、ふたつ紹介いたしますと、
この発想よ……(自分で思いつかないのが口惜しい)! そして、あまやかされよがいい味を出してますね。となると思うのは、人間も子供の頃に桃色の闇に惹かれているけれど怖いという経験をするものであり、虫歯の子をたとえばなんらかの問題のある子と読み替える可能性も生まれてき、短歌の奥行きというのをしらしめされました。
これはあのマヨネーズとかのベイビーのことですよね。あのベイビーはずっと昔からいてちょっとレトロな影も纏わせつつ、確かにいまだに近未来っぽくもあり、あの世界は夏でしょう。ズバッと軽快な短歌ですね。「王国は夏」というのが、またいい。いいフレーズです。僕は浅井健一のボーカルであるバンド「シャーベッツ」の楽曲『Baby Revolution』を想起しました。何万人のベイビーがひたすらハイハイする歌なのですが。それと余談ついでと言いますか、『旧霊長類の誤った標本ができるまで』にラジオのアンテナが出てくるのですが、なんとなく筋肉少女帯の大槻ケンヂを思いました。大槻ケンヂもラジオのアンテナをやけに出しますからね。
どうも、ありがとう。
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