手紙。

まさかお前と高校まで一緒になるとは思わへんかった。
小１から一緒やけど、特別に仲良いってわけじゃなかった。
ぼちぼち仲良い感じでずっときた。

高校一緒になったとはいえ、クラスも違うし、そこまでつるまへんかなって思ってた。そしたら、案外つるんだ。俺、結構嬉しかったんよ。おもろいお前が絡みにきてくれて。

お前、高校入学当初、特進のやつらをさ「どうせおもんない奴らばっかりや」って、斜に構えて下に見てたやろ？

そういうところ、嫌いじゃない。実際、お前、おもろかったし、俺らみたいに人並みの笑いで満足するタイプ違ったもんな。

＊

小中高、お前が噛んだところを見たことがない。頭の回転も速いし、普段の会話からサラサラと気持ちのいい関西弁を喋るやつやった。冷めたボケもツッコミもできる。トゲのある悪口で、ちゃんと笑いをとるやつやった。

お前みたいな奴が、芸人になるんやろうなって。

俺は、そう思ってたよ。
高校卒業のとき、進路のこと話ししたやん。
そんときに話したことはマジやで。

「え？芸人ならへんの？」ってさ。
俺、なんの脈絡もなく、お前に言うたやん。
お前笑ってたけど、まんざらでもない感じやったやん。

あれな。
俺、お前が普通に大学行くの寂しかってん。
しかも立命。
それってさ、むっちゃ普通やん。
らしくないな〜って思っててん。

＊＊＊

お前、死ぬ前に一回会ったやん。
あいつの結婚式二次会で、超久しぶりに会ったやん。

あんとき、お前が話しかけてくれてさ。
俺、むっちゃ微妙な反応してんよな。

結局それが、最後の会話になったわけやけど、俺、あのとき、マジで素気なかったやん？

で、お前が死んでさ、あんときもっと喋っておけばよかったなぁ、、、とか思ったりした。

なんていうかさ。

あんときは素っ気なくてごめん。。。

・
・
・

って言いたいところやけど、言われへん。

だってさ。
あんときはお前が悪いわ。

あれは喋れへん。笑💦
お前、そういうオーラ出してたもん。

いや、お前さ。
結婚式の二次会にあの格好は、あかんで。

髪の毛ボサボサで、髭生やして、スーツも着てへんし。

服。
あれなんやねん。
なんで全身カーキで決めてんねん。
どっかの田舎のイオンで買ってきましたみたいな服。

結婚式の二次会やで。

・・・

いやわからん。
今となってはお前死んでもうたからわからん。

やから、教えてほしい。

あれ、ボケやったんか？
あの時点でできる唯一のボケやったんか？
病気の進行具合的に髪の毛もカツラやったんやろ？
お前なりに考えて、ボロボロの服着てきたんか？

浮浪者みたいな風貌してさ。
怪しさしかないあの格好なんやってん。

みんなにツッコんで欲しかったんか？
目立ちたかったんか？
お前なりの挨拶やったんか？

あと数ヶ月の命、最後の最後、みんなの記憶に自分を残すための渾身のボケやったんか？

あぁ、そういえば、お前から話しかけられて、俺はすごい嫌な顔して「お前、その格好どないなってんねん」ってツッコんだとき、お前ニヤっとしとったな。俺、それがすごい気味が悪くて、ささっと会話済ませてテーブルに戻ったんや。

今でも二次会でお前と喋ったシーン思い出す。
すっごい気味が悪くて、なんなら夢に出てきそうや。

なるほど。
してやられてたんは俺の方やったんかもな。
最後にお前と絡んだときに感じた不気味さ、今でも強烈に残ってる。

なんや分からへんけどさ。
今日note書こうってなったとき、別に今日、お前の命日でもないけど、あの気持ち悪い感じ、思い出してもうたやんけ。

なんやねん、うざいのう。
なんで死んでんねん。
なんで結婚式の二次会で全身カーキやってん。

死んだらわからんやんけ。
アホやのう。

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・こぼれ話　

「お前」が死んでから10年くらい経ちます。
が、いまだに最後の会話の気持ち悪さが拭えません。

別にダサいやつでもなかったし、あんな格好するやつではなかっただけに今だに謎で不明です。真意は全くわかりません。

あの浮浪者みたいな格好になんの意味があったのか。。。

強烈な思い出として残っているので、あの世で会った時に速攻で聞こうと思います。

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・最後に一曲