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地上から改札階に降りるだけのエレベーターにて。

地上から改札階へと向かうエレベーターにベビーカー付きの30代男性が乗り込んだ。

ベビーカーには、次女と呼ばれる1歳半の赤子を乗せているらしい。

スヤスヤと寝ているかと思いきや、いつの間にやら目をパチクリと開けていた。

同じ空間には、70代後半くらいのお婆さんと70代前半くらいのお爺さんがいた。

二人は他人同士だ。

ただ、二人とも老後を楽しんでいるタイプのご老人だ。二人のことを全く知らないが、それだけは、なんとなく分かる。

二人は他人同士だが、属性が似ている。

二人とも笑顔が素敵だった。
とても柔和な笑顔をお持ちだった。

というのも、お二人とも次女に対してニコニコと微笑んでくれたのだ。

次女を見るなり、柔らかな笑顔で、かわいいね〜かわいいね〜、と声をかけてくれる。

「いやー!きゃわいい〜!」の「かわいいね〜」ではなく、「いやぁ、かわいらしいねぇ〜」の「かわいいね〜」だ。

落ち着いていて、品のある「かわいいね〜」だ。

感情がこぼれるって、こういうことなんだろうな、と思った。心から漏れたような「かわいいね〜」だった。

ご老人になっても、ひょんなことから感情をこぼすことができるなんて、今を楽しんでいる何よりの証拠だ。

経験的に、地上と改札をつなぐだけのエレベーターは、無機質で人間味のない空間になりがちだ。

しかし、今回は、お二人のおかげさまで、あたたかで優しい空間になった。

さて、当の次女ときたら

残念ながら、ニコッとしていなかった。目をぱちくりさせて、ポケ〜っと不思議そうにお婆ちゃんとお爺ちゃんを見つめている。

お婆ちゃんもお爺ちゃんもにこやかにしているだけに、こちらもニコニコ笑顔を返したいところだったが、彼女的には「誰だろう?」が勝ったのだろう。

親のこちらからすると、少し申し訳ない気持ちになる。

お婆ちゃん「かわいいね〜」
お爺ちゃん「ほんまやね〜」
よよ「ありがとうございます〜。かわいいいうてもろてんで〜。よかったね〜。」
次女「・・・(ポケー)」
お婆ちゃん「かわいいね〜」
お爺ちゃん「ほんまやね〜」

エレベータートーク

てな具合。

改札階についた。
ドアの向こうには、エレベーターを使わず、階段で降りていた嫁さんと4歳の長女が待っていた。

ドアが開いた。
お先にどうぞとお婆ちゃんとお爺ちゃんをうながす。

ドアに近かったお爺ちゃんが先に降りた。
お爺ちゃんは、別れ際一言「バイバイね〜」と優しいさよならしてくれた。

次にお婆ちゃんが降りた。
お婆ちゃんは、「ありがとうねぇ〜」といって降りていった。

最後にベビーカー付きの私が降りた。
嫁と長女と合流し、切符を買い、ホームで電車を待った。

その間の私は、嫁さんにエレベーターでの出来事をニコニコしながら話した。



・こぼれ話

上品な「かわいいね〜」を使いこなせる大人になりたいものです。お婆ちゃんが別れ際に言ってくれた「ありがとうね〜」という言葉にこちらも癒されましたし、とても嬉しい気持ちになりました。

こちらこそありがとうございます〜
って気持ち

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