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今の自分を、旅先に置いていく。

僕は旅が好き。大好き。
大切な人との旅ももちろん楽しいし、
1人でふらっと見知らぬ地を歩き回るのも好き。

歳を重ねるごとに、旅に求めるものが変わってきた。

小さな頃、それこそ小中学生の頃
旅は田舎生まれの僕にとってただのステータスでしかなかった。

うちはあまり家族で旅行に出かけるタイプの家では無く
夏休み明け、友人たちの旅話を聞いてとても羨ましく思っていたのを覚えている。

そんな僕もヨーヨーを始め
大会に出場する為に遠征で他県に行く機会も増えた。
福岡、大阪、京都、愛知、東京。
高校生になる頃には、皆が羨む多くの大都市を訪れた事があるという
ただそれだけで優越感に浸っていた。

足を折って松葉杖で学校に来るとヒーローになれる、あの感覚と同じだと思う。


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初めての海外は高校2年生。
修学旅行で訪れた中国が最初だった。
初めての飛行機。初めての海外。
多くの初体験や文化の違いに触れ、とても感動したのを覚えている。

今思えばこの頃から僕は、純粋に旅を楽しめる様になっていった。
見た事ない物を見る。知らなかった文化に触れる喜びを
そしてそれによって自分が成長していく感覚を楽しんでいた。

それから十数年。
ありがたい事に、本当に多くの国や都市を仕事で周った。
全ての都市にそれぞれの思い出がある。
もちろん辛く、苦しい思いも沢山したけど
今となっては全てがいい思い出だ。

度重なる旅の末、また僕にとっての旅の価値は変わっていく
今の僕にとっての旅とは、
『今の僕を未来の僕の為に置いていく行為』となった。


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20歳の頃、シンガポールで開かれたアジア大会で全力を尽くした上で
2位になり悔しい思いをした事

23歳の頃、アヴィニヨンでだいちさんの大道芸を見て
打ちのめされた悔しさと同時に、とんでもない物を見てしまった喜びが混ざり合い
言葉に言い表せられない想いに襲われた事

25歳の頃、ドイツで初めてオファーを頂いて訪れたゴータという小さな街。
ショーが終わって外を散歩すると街中の人に声をかけられて
言葉はわからないけど、楽しんで貰えた事だけは伝わった事。

27歳の頃、ブリュッセルのホテルでプロポーズする前に
サプライズで用意していたプレゼントを彼女が先に見つけてしまい
それでも、とても喜んでくれた事。

書き出すとキリがないけど
どの思い出も、街の名前を見たり聞いたりするだけで僕の頭をかすめる。

どの街にも当時の僕が居て
全ての僕が今の僕を支えてくれている。

今まさに、クルーズの仕事で沢山の街をめぐっている
僕は今後ストックホルムの名前を見聞きするたびに
半年ぶりにショーをして、心が震えるほど感動したあの感覚を思い出すだろう。
今の僕を、ここに置いていったのだ。

久しぶりに旅が出来て、見知らぬ地を訪れて
改めてこの状況下で安全に旅とショーを出来る幸せを実感。

今まで通り、もっと気楽に行きたい場所に行ける日が
早く戻って来る事を切に願う。

Naoto

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