イジン伝~桃太朗の場合~まとめ(XXII~XXVIII)
目が離せなくなった。「何か悩みでもあるのかよ」
「あるけど。でもそんなんじゃないんだ。運命とか、そういうものなんだと思う」
「運命だって。冗談だろ」
猿野は苦笑して木地川の顔を覗き込んだ。彼はにっこり微笑んで答える。
「うん。冗談」
猿野は気味が悪くなって膝を抱え込んだ自分の手をきゅっと握った。力んだ拳はあの女と同じように白く濁った色をしていた。目をつぶる。「俺たちは若いんだ。死ぬなんて分かってたまるか」
木地川も拳を握ってもう一方の手で感触を確かめるように撫でて言う