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言葉が光るそのときに

言葉を手渡そうとすることは、心の中を分かち合おうとする優しさの営みなのだから、想いの込められた言葉たちは、自ずとひかりを放つ。贈る者の気持ちが蓄光し、贈られた者の胸の内で静かにひかりを灯す。ふしぎなことにそのひかりは、いつまでも絶えることがなく、時に光量を増し行く先を照らし、時に熱量を増し冷え切ってしまった魂を暖めてくれる。 

なるべくなら難しい言葉はいらない。容易く理解できるほうがいい。空虚な遊びに陥らぬよう、素直な想いを写しとったものであればそれでいい。 


ただ、想いを正しく伝えたいのなら労を惜しんではならない。心の奥底まで深く潜り、問いを立て自ら答える作業を通じて、見つけ出さなければならない。暗い深海へ沈潜し、探しに行かなければ得られぬものがある。そうして、いくつもの不正解を選り分けながら手にした原石を、粗く強く、柔らかく細やかに磨き上げて、ようやくひとつの言葉にたどりつく。それは実に単純で陳腐な、使い古された言葉であるかもしれない。それでも、確かに自分の心の中を映したものであるならば、自ら磨いたものであるならば、そして本当に伝えたい気持ちを載せたものであるならば、きっとその言葉はひかりを放ち、相手の心を永遠に照らす灯になる。 


言葉にはそんな力があると信じている。

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