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山行記その4 前穂高岳 〜It's a wonderful life〜



節目の歳を迎えて思い立ち、幾座かの山行を目標と定めたのであるが、思うに任せぬものはやはり天気だった。
こんなに身近な山なのだから、晴れの日を選んで行けばよいと、伸ばし伸ばしにしていたらもうすっかり秋である。天気がいい時は仕事の都合がままならず、青空に映える晩夏の山並みを、スーツ姿で恨めしく見上げることもしばしば。

いつかも書いた通り、時間と天候、諸々のしがらみが、山行の前に立ちふさがる。こんなふうにもたもたしているうちに、何も為すことのできぬまま年老いてしまう。
山は決して逃げないが、機会は逃げる。握った砂のようにさらさらとこぼれ落ち、いつか何もなかったことになる。

今回も旅の始まりは上高地
正面にまっすぐ進み、写真右の前穂高岳を目指します


とはいえ無理をして安全を犠牲にするつもりもなく、必ず帰ってくることを優先事項としているので、天候は最も考慮すべき事由ではある。
しかしどれだけ好天予報の日を選んだところで、実際行ってみなければどうなるかは分からない。今回もそんな日だった。

一時間程登って振り返るとさっきまでいた上高地
ヒコーキ雲がなんだか気持ちいい


さらに30分位登ったところ
見たとこあんまり変わらないですね
この先、ぐいぐい標高を上げていきます


この辺で標高2,500m位
上高地からは1,000m程登ったことになります
正面右の焼岳を少しだけ見下ろす感じ


上高地は、はるか下に。
もう焼岳の標高は超えてますね
まだまだ登ります
ここまで来ると、上高地は完全に真下
ほぼ空中散歩


紀美子平から西穂高岳方面


紀美子平から奥穂高岳方面
この後一瞬でガスに覆われてしまいました


前穂高岳山頂  3,091m
なんにも見えません
この後テント場まで下山するのですが、雨が強くなりました

前穂高から吊り尾根、奥穂高へと二泊三日でゆったり回ることを計画していたが、どうしても二日連続で晴れ予報にならず、台風情報もあったので行程を一泊に短縮し、奥穂高はまたの機会にすることにした。雨を回避しようとしたのに、結局山頂からの下りは雨模様になってしまった。

一枚岩を鎖を頼って下るような、急な斜面。慎重に足を置いてもスリップしそうな濡れた岩。足を滑らせれば数百メートル落ちていく。そうなったら助からないだろうな、ヘルメットから雨粒を滴らせながら、妙に醒めた気持ちで生死を考えた。万全な準備をして臨んでいるつもりでも、易々と自然は僕の命をどこかへ連れて行ってしまう。生きているか死んでいるかなんて、ほんの紙一重の差でしかない。

何とか無事にテント場に到着したら天気回復
雨の苦行のご褒美に最高の景色が待っていました


これだからまた登りたくなる


今度は晴れた日に再挑戦したい


言葉が見つかりません


夕暮れの岳沢劇場
一時間で缶ビール二本
幸せな山行を堪能しました



確かに、思うに任せぬものは天気なのであるが、その時になってみなければ分からないのも天気。
いい時も悪い時もある。それが登山。
人生も同じ。



















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