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おすすめの詩

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noteで見かけたおすすめの詩を取り上げて、勝手に感想を書かせて頂いてます。
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2022年7月の記事一覧

おすすめnote詩「月の夜側」

まずタイトルにやられました。うわー、「夜側」かー、すごい言葉の使いかただなあ。そして、場面は夜の散歩からはじまります。

全体は四連になっています。行分けを細かく繰り返し、余白を多く作っています。それは夜の静かな雰囲気を感じさせます。

一連目。「闇」という単語にどきっとしました。どういう詩がはじまるのだろう、そんな感じです。続く「きみ」で、子供かな、恋人かな、と安堵をしながら進みました。「星ばか

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おすすめnote詩「声」

恋人かな、夫婦かな。自分は「僕」と「君」のレストランでの待ち合わせの場面をイメージしました。それらしい説明を省いているので、言葉の配置、言葉のイメージが活きていて、この場面の奥行きを感じます。

「食べて」の配置で、テーブルに置かれている皿への目線の動き、箸の動き、前後の動き、を感じました。奥にある「食べて」の位置に「窓から」が配置されていることから、目線のちょっと先に窓があるのかな、と想像します

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おすすめnote詩「朝食」

三連で構成されていました。まず一連目の意外性に自分は惹かれました。

一連目。「怒りに満ちた/蛇の頭」おもしろい!そっか、「蛇」って「頭」があるんだよなあ、って当たり前のことに気づかされました。「蛇」ですでに全体が描写、イメージが喚起されるけど、あれって「頭」なんだよなあ。しかも「怒りに満ちた」だって?「怒りに満ちた/蛇の頭」ってどんなものなんだろう、蛇ってそもそも大体怒ってるような気がするな、と

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おすすめnote詩「それ そのもの」

全体は三連での構成です。タイトルが好きです。「それ そのもの」。どこに強く惹かれる言葉なのか自分にはうまく説明できません。意味が閉じている、ループしている、だからなのでしょうか。言葉に方向性があるのなら、「それ」が「右向き矢印」で、「そのもの」が「Uターン矢印」といった感じです。

作品自体は、自分自身、あるいはヒトの存在や生命力と生物とのそれが対比されていて、生物に対してヒトのそれは希薄であり、

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おすすめnote詩「心象X

全体は三連から構成されています。失恋の詩なのかな、と思って読みました。

一連目。リズムを感じます。三つ並べて、最後の「が」の強調を感じます。どれもこれもあるけど本当に欲しいのは「あのこの毎日がほしかった」なのではないでしょうか。いいですね。あのこの毎日。

二連目。ある光景が描写されています。「砕けたガラス瓶/中には雨のしずくたんまり」からキラキラとした印象を受けます。つづく「フロアマット」とい

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おすすめnote詩「朝の回廊」

何か節目となることがあったように感じられます。そして、その過ぎ去った歳月の記憶がたまに自分に落ちてきたり、沈んだり、する。それらはきっと忘れがたく、毎朝、回廊のように自分を取り囲んでいて、巡ってくるものなのではないでしょうか。

冒頭部分の描写に惹かれます。朝、玄関をでる時に感じている小石の感覚。言葉にしないまま、ただ感じているあの一瞬。そう。たしかに靴が持ち上がるとき「ぱらぱらと/小石が落ちてく

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おすすめnote詩「私の中の水」

全体は六連からなっている。

まずこの一文がとても好き。「私のからだは/誰にも見せたくない部分と水だけで/構成されている」すぐに思い出したのはヒトのカラダは70%くらいが水分だという話。そうか、残りの30%くらいは「見せたくない部分」なのかな、あ、ちがうな。ヒトのカラダは、見えている部分のどこら辺が水分で、どこら辺が本当は「見せたくない部分」なのだろう。面白いなあ。

それと「君の横顔は卒業文集み

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おすすめnote詩「鳥の埋葬」

一読して何だか違和感を感じる。なぜだろうって思い何度も何度も読み返しました。

「鳥が落ちていた」を何度か読んで、落ちていた?普通、そんな言い方しないなと気づく。「小さな血」を何度か読んで、小さな血?とまたまた気がつく。そして気にしているのは「この子の内蔵はどうなっちゃってるんだろう」となる。内蔵?気になるのそこ?なんだか奇妙なズレを感じました。

そして中盤のテンポの良さと繰り返し。「そして埋葬

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おすすめnote詩「駅と蝉時雨」

導入部に惹かれました。面白いなあ。「蝉が一斉に鳴き始めるのを聞いて、わたしは、人が行き交う大きな駅の構内の光景を思い出す」面白いなあ。そんな風に思ったことがない。

「自動販売機の中身が入れ替わるのと同じくらい頻繁に移り変わっていくのだ」ここも好きです。自動販売機の中身は入れ替わってるんだよな、たまたま入れ替わる所を見ていないだけで、ってことをしみじみ思い出させてくれる。

「他人事」という言葉が

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おすすめnote詩「煩わしき全てから逃げた」

リズムがとても心地良い。思考のリズム、かな。それと、思わず自分のことのように読んだ。

「私はどこにも属さないことで/どこからも逃げていた」そのうち気がつくことになるのかな。「どこにも属さない」というところに「属してる」ということに。それまでは「逃げられる」と思っている、「逃げている」と思っている。逃げられる場所は何処にもないのに。

「傷つくことから逃げて/からに籠っていること」
もしかすると最

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おすすめnote詩「夏の葬列」

全体は六連で構成されています。各連に共通のリズムがあるように感じます。語尾や促音の効果かと思われます。

タイトルから少し重苦しい印象。「蝉の呻き声」のところは「鳴き声」じゃない。「呻き声」。外国人の人には虫の鳴き声って騒音にしか聴こえない、と聞いたことがある。作者には「呻き声」に聴こえている。「湯を抜いて立ち上がりシャワーで全てを流す」とあって、流したものは何だろう。髪の毛とか、そればかりじゃな

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おすすめnote詩「祈るものたちに残された氷の幻想」

構成は二連。神秘的な何処でもない場所の物語に心地よく心酔。とても不思議な詩でした。でも不思議に感じたのは何故だろう。

まず、例えば昨日起きたような日常のことを書いているわけではなさそうだし、何かの比喩として書いているわけでもなさそう。たぶん物語なのだろう。SFのように読めるし、近未来のようにも感じる。あるいは、何処か中世の雰囲気もある。

「その他に何も与えられなかった国で」という文章がとても素

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おすすめnote詩「帰途」

全体の構成は三連からなっています。タイトルの「帰途」の通り、きっと何らかの帰り道の描写からのはじまり。自分としては、この詩は「途中」というものに焦点を置いた詩であると読みました。私たちは「生きている途中」なのだ、ということを感じさせてくれました。

一連目。「見覚えのある名前だと思ったら昨日見た求人情報に載っていた会社だった」きっと自分にもこういう風に感じたことがあるだろうなあ、という導入に惹かれ

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おすすめnote詩「猛暑の詩」

「太陽」「夏」「愛」が擬人化されています。そのどの文章も素敵です。自分は特に「夏が人のかたちを無くそうとして」のところが好きです。

中盤に「間違いみたいで」が繰り返され、「間違い」が「いっそ正しく嘘の色に」という逆説めいた一節につながっていきます。

「太陽」や「夏」「愛」という大きくて全体の見えないものに意識が向いてしまうのは、うだるような暑さのせいなのかもしれません。

猛暑の詩なのだけど、

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