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ブードゥー/ディアンジェロ

 こんにちは。みなさんたくさんの良いねありがとうございます。

 今回は好きな音楽について。
 選んだのはディアンジェロの「ブードゥー」。2000年にアメリカのシンガーソングライター、ディアンジェロが発表したアルバムで、彼の2枚目のアルバム。

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 前作から5年の歳月が経っているが、これは彼らがスタジオにこもり、セッションを行い、過去のクラシック・ソウルやR&Bを研究・吸収しようと試みていたから、ということらしい。
 所々それらの楽曲からのサンプリング(「プラヤ・プラヤ」はオハイオ・プレイヤーズの「プレイヤーズ・ボーリング」、「センド・イット・オン」はクール&ザ・ギャングの「シー・オブ・トランキュイリティ」など)が見られるのも、聞きけば聞くたびに発見があるほど作り込まれているのも、この5年のセッションの影響なのだろう。
 
 私がこの作品を初めて聴いたのは、恐らく大学二年生くらいの頃で、Corneliusが「お気に入りのアルバム」として本作を挙げており、気になってチェックしたのがきっかけ(だったと思うんだけどなあ)。

 元々、ジャズ・ファンクやエレクトリック期のマイルス・デイヴィスなど、ドロドロした音楽が好きだった私は「なんだこのめっちゃかっこいい音楽!」と思ったものの、「ほとんどを理解できていない気がする」という感想も同時に抱いた。
 つまり、好きなタイプの音楽、ということで片付けられないほど、混沌としていて、情報量が多かったのだ。

 ふにゃふにゃしてて、メロディなのか呟きがわからない声を発するディアンジェロ、タイミングがあってるんだか外れてるんだかわからないようなギターやベース…。全てが未知の領域だった。
 後で知ったことだが、このアルバムは各々の楽器があえてタイミングをずらして録音されており、グルーヴの「人間が演奏することで生まれる不正確さとずれの心地よさ」を極限まで極めたものだったのだ。おかげでこのアルバムを再生すれば最後、一生体の横揺れが止まらない。

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 このアルバムのオープニングを飾るのは、呪文のような歌の一端(?)と不思議なSEから突然こってりとしたR&Bに切り替わる「プラヤ・プラヤ」だ。歌メロ自体は同じフレーズを繰り返す単調なものだが、グルーヴは従来のブラック・ミュージックに通じるものがあり、聴いていて飽きない。むしろどんどん気持ちよくなってくる。個人的に一番好きなトラックだ。

 前半はこの曲をはじめ、ドロドロ系R&Bやヒップホップ調の楽曲が中心となっているが、5曲目の「センド・イット・オン」で彼はいきなり王道バラードを披露する。
 それまでファンクやソウルなどと通じるところを感じるものの、まだいまいち答え合わせできていないなと感じていたリスナーを、ここで一気に惹きつけていく。甘い。とにかく甘いナンバーで、甘美なホーンアレンジはAORやソフト・ロックのようなニュアンスすらある。カーティス・メイフィールドとかがやってそうな感じ。

 そこからファンク界の大御所、ジョージ・クリントンが褒めたという、スーパー・かっこいい・ナンバー「チキン・グリース」に続き、ジェームス・ブラウンばりのストイックなギターが聴ける。


 また、ロバータ・フラックの名曲「フィール・ライク・メイキン・ラヴ」のカバーも収録されている。このヴァージョンはオリジナルにソウル味をかなり加えており、人気が高い。そのため、Suchmosをはじめ、このヴァージョンに影響を受けたと思われるカバーを多くのアーティストが演奏している。

・ Suchmosのヴァージョン

・ジョシュ・ターナーさん(Youtuber?)の比較的ディアンジェロ に近いヴァージョン。めっちゃかっこいい。


 これらアルバム後半の楽曲はジャズ風の少しマニアックな曲や、ジャムっぽいのもあって、少しペース・ダウン感はあるが、「アンタイトル」や「スパニッシュ・ジョイント」など、聴きどころは多く、聴き終わった時に「あっ、良い音楽聴いたな」と思わせてくれる。

 ディアンジェロはデヴュー作が高く評価された際、ソウル・ミュージックを担っていく責任を感じたらしい。この作品の作り込みようは恐らくそれを受けてのものだろうから、彼は真面目なんだろうなあ(もちろん一作目も素晴らしいけど)。
 私が彼の立場だったら、その評価に味をしめてしばらくは同じような作品を作り続けてしまいそうなのに。

 そんな作り込みの成果もあってか、私は出会って数年経った今でも、この作品について理解していない部分は多いような気がする。
 ディアンジェロは寡作で、1995年から現在までで3枚のアルバムしか出していない。しかし、リスナーが作品を理解していく期間を考慮すると、そこまで少ないような気もしない。

 でも、私はこの作品でノることもできるし、いつ聴いてもかっこいいなって思う。
 そう思うと、音楽における情報やバック・グラウンドは二の次で、聴いて良いと思うか否かなのではと思ってしまう(しかしそうすると、さっきのディアンジェロの対する理解がどうのこうのが意味をなさなくなってくる)。
 そして頭を抱える。音楽に対するまとまった答えは、私にはまだ出ない。

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 あと、このアルバムを携帯で聴くと、ロック画面を開く度にムキムキのディアンジェロ が目に入るので、筋トレのモチベになりますね。

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