90歳、『筒井康隆』が見る世界、そして日本。「時代遅れの大阪万博なんてやめたらいいのに――」
作家・筒井康隆は、長く神戸と東京の二拠点生活を続けている。
東京の邸宅は、渋谷区のど真ん中。外国人観光客の人波をかき分けて小道へ入ると、その屋敷だけは時空を超えたような静けさを保っていた。
「もう小説は書かない」と言い張るが、毎日、午後になると2階の書斎でパソコンを開く。
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■時代遅れ……大阪万博なんてやめたらいいのに
筒井が職業小説家を志して上京したのは1965年。
東京オリンピックの直後だった。
1970年の大阪万博では、筒井の盟友である小松左京がブレーンとして活躍。
経済は成長を続け、当時の日本は、まさに昇竜の勢いだった。
時は流れ、新型コロナウイルスに翻弄されつつも二度目の東京オリンピックが開催された。
日本は少子高齢化で人材不足、円安も進み、経済政策への不満は高まる一方だ。
そんななか、2025年には、大阪で再び万国博覧会が予定されている。
「日本は最高だけど……今また<万博>なんていうのは時代遅れだね。もうやめたらいいのに、あれは。日本には金がないし、来る国にもないしね。大阪の人は万博好きなんて言うけど、あれは昔の夢が忘れられないんでしょうね。確かに楽しかったけれども、今とまた時代が違うわ」
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作家人生にやり残したことはないが、気がかりや、つど思い返すことはある。
2020年、画家だった一人息子を食道がんで亡くした。
「今も悲しくて仕方がないですよね。芸術家は定期検診なんか行かないから、見つかった時はもう末期だった。それがしゃくでね。しょうがない。それで『川のほとり』という小説を書いたんだけど、まあ、あれは嘘っぱちなんですよ。実際に見た夢ではないしね。でもこういう風に書けば泣くだろうって。読者から『泣いた』なんて反応があれば、ザマミロと思ってるんですよ。そんなもんですよ」
悪ふざけやいたずら好きは、子どもの頃から筋金入りだと胸を張る。
ブラックユーモアの隙間から、そこはかとなく情愛が見え隠れする。」
などと感じるのは、これまた筒井の術中にはまっているのかもしれない。
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