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精神科。製造中止になったクスリたち。ハルシオン、ベゲタミン・・・。

心療内科に通って二十年以上になります。精神科クリニックでもいいのですが、「心療内科」のほうが聴こえが良いので。院長先生も「精神科の看板を出すより、心療内科の看板を出すほうが客が多くなるねん」「で、先生は大学病院ではどの科で働いていたのですか?」「うん?精神科やでぇ」

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二十年も心療内科に通っていると「処方されなくなるクスリ」も多々ある。製造中止になる薬もある。

今回は3種類の「消えた精神病系経口薬」をご紹介しよう。

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■ハルシオン(睡眠導入剤・超短期間型)

日本ジェネリック株式会社から、今年の6月にゾロ薬の販売中止の通達が行われました。富士薬品ではゾロ薬の自主回収が行われています。

ハルシオンは大量に摂取したのち、眠くなるのを無理にガマンして起きていると、非常に「ハイ」な状態になるといわれています。このハイな状態が病みつきになり、ハルシオンをさらに多めに接種・・・最後には「ハルシオン中毒」になり、身体を壊して、入院したり、最悪死んだりする人がでてきた、という歴史があります。

ハルシオンという睡眠導入剤は「超短期型」と呼ばれ、発売された当時は、服用した翌朝、まったく薬が残っておらず、スカッと起床できることから「ハルシオンの朝」という言葉が生まれたりしました。

いまでは、手に入らないでしょう。危険ですから。

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■ロヒプノール(睡眠導入剤・長期型)

外国で、ロヒプノールは、しばしば性的暴行に悪用されてきました。被害者を抵抗できない状態にする目的で使用されるため、「レイプ・ドラッグ」と呼ばれています。

ロヒプノールの使用者によれば、この薬物には心身を麻痺させる作用があるとのことです。その作用は薬を取ってから20~30分後に始まり、2時間以内にピークを迎え、8時間から12時間も続くことがあります。その場にへたり込み、動けなくなる場合もあります。目を開けたまま横たわり、周囲の出来事を観察することはできますが、全く動くことができません。記憶力が損なわれるため、後になって起こったことを全く思い出せません。

使用者は、筋肉の麻痺、意識の混乱、眠気、記憶喪失などを経験します。

日本では「ロヒプノール」は販売中止になりましたが、同じ「フルニトラゼパム」という成分が含まれている「サイレース」は販売されています。

青い色をしています。青いクスリには気を付けろ。

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■ベゲタミン(強力な睡眠薬)

ベゲタミン錠は、睡眠薬の中では最強といっても過言ではないお薬でした。

1957年発売と、非常に古くからあるお薬で、その効果の強さから「飲む拘束衣」と呼ばれたりもするほどです。ベゲタミンは3種類の成分の合剤となっていて、その中にはフェノバルビタールという安全性の低いバルビツール系成分が含まれています。

依存性も強く、ベゲタミンは薬物乱用につながってしまうことも少なくありませんでした。公益社団法人日本精神神経学会から、「薬物乱用防止の観点からの販売中止」の要望が製薬会社である塩野義製薬に出され、2016年度いっぱいでの販売中止となりました。

ここでは、ベゲタミンの販売中止となった理由をみていきたいと思います。

ベゲタミンの販売中止は、販売元の塩野義製薬から以下のように発表されました。

公益社団法人日本精神神経学会から「薬物乱用防止の観点からの販売中止」のご要望を提起いただき、社内検討を進めた結果、2016年12月31日をもちまして弊社からの供給を停止し、以降は流通在庫品限りで販売中止とさせていただきたく、謹んでご案内申し上げます。

日本精神神経学会とは、精神科で一番大きな学会になります。私も所属しておりますが、精神科医であれば入っていない人はいないと思います。学会は公的機関ではありませんが、大きな発言力があります。

精神科のお薬は乱用されることがしばしばありますが、ベゲタミンは乱用されやすいお薬トップ5の常連薬になります。

またベゲタミンは、安全性の低いお薬になります。ベゲタミンを大量に服薬してしまうと、脳の機能が一気に落ちてしまいます。中脳が抑制されると意識消失します。脳幹の延髄が抑制されると、呼吸中枢や血管運動中枢が働かなくなります。こうなると呼吸が止まってしまい、血圧が一気に下がってしまいます。

それではベゲタミンは、どうして乱用されやすいのでしょうか?それには、2つの要因があります。

・ベゲタミンの成分としての要因
・ベゲタミンを使うほどの難治性不眠の患者の要因

ベゲタミンには、フェノバルビタール(商品名:フェノバール)というバルビツール酸系睡眠薬の成分が入っています。耐性(薬が効かなくなってしまう)と依存性(薬がやめられなくなること)があるため、薬の量がどんどん増えてやめられなくなってしまうのです。

また、ベゲタミンを使うほど頑固な不眠の患者さんでは、何らかの精神疾患が背景にあることが多いです。そしてその精神疾患も、症状が慢性化して複雑になっていることが多いです。このような患者さんでは、どうしてもお薬に対しても短絡的になりがちです。その結果として、薬物乱用になってしまいます。

ベゲタミンは非常に強い鎮静作用があるので、「今の現実から逃れたい」という気持ちで過量服薬してしまうことも少なくありません。

これを受けて、2016年をもって製造中止となりました。

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みなさん、病院で処方される薬にも「キケン」なものがありますから、ご注意ください。

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