トマトは和食だ。
夏になると、一人で訪れる町がある。山あいの小さな町だ。この町は、冬こそスキー客でにぎわうが夏はとても静かだ。
いつも泊めてくれる宿がある。通りに面した二階建ての古びた宿だ。
朝起きて、窓を開ける。通りに人はまばら。正面は散髪屋さん、隣に食堂、斜め向かいに赤い郵便ポスト。外を確かめてから、また寝転んで、文庫本を読む。本に飽きたらお散歩だ。
林道を越えて、小川にでる。釣りをしている人をしばらく見る。小川に渡された小さな板を渡る。田んぼの畦、お地蔵さん、ブロックでできたバスの待ち合いで折り返し、ほんのりと汗をかく。
宿の裏には、山から水が引いてある。青いホースの先には、銀色のバケツ。畑でとれたトマトときゅうりが浮いている。
「おばちゃん、このトマトもらうわ。」
バケツからトマトをすくいあげ、がぶっと一口、まるかじり。
「うまい。」
トマトは、別名、六月柿というらしい。
なら、トマトのまるかじりは、和食でいい。
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