不登校変化グラフ

今不登校にあるみなさんへ 不登校の対策論 親編 1

 前章では社会や学校といった広い視点での不登校の改善案について書いていきました。この章では目の前の一人の不登校について、親、本人がどんな対策を取っていくといいか書いていきたいと思います。
 不登校が急増しているのが中学校で不登校の多くが中学生な為、ここから先の文章は主に中学生の不登校生を対象に書かれていますが、小学校の高学年でも充分に応用が効くかと思います。

 一部の教育関係者から「学校なんかいかなくていい!」という声もよく聞かれます。逆にいかに学校に戻るかという点で書かれている不登校の本も多くあります。なので、最初に私の不登校に対するスタンスを書いておきます。
 私の不登校に対するスタンスはこうです。

「できるだけ学校に近づいた方がいい」

 こう書くと、学校が一番だと思ってるのかと思われるかもしれませんが、そうではありません。あくまでできるだけです。そのできるだけは人によって違います。ある人によっては学校にまた通うことでしょうし、フリースクールなど居場所を見つけた人は学校との関係を保つくらいになるでしょう。
 学校に戻る戻らないではなく、できるだけ学校にに近づく。ただし、その距離は人それぞれ全く違う。それが私の学校に対するスタンスです。


最初は無理にでも行かせた方がいい?

 お子さんが学校に行きたくないと言って休みだした、もしくは病気でもないのに調子が悪いと言って何日か休みが続いた。そんないわゆる不登校になりかけの時期に無理にでも学校に行かせた方がいいのか。それともよくないのか。これは多くの人が聞きたい疑問ではないでしょうか。
 この問いへの私の答えはこうです。

 「不登校になり始めた時は無理のない範囲で登校刺激を与えよう」

 え?と拍子抜けしてしまいましたか。でもこれはかなり大事なことです。これから不登校のお子さんと向き合う中で色々な二択の選択を迫られるように感じるかもしれませんが、こういったAかBの問いに直面した時の正解はAかBではありません。正解はAとBの間、AからBの直線の中のどこかにある点です。この意識を常にどこかで持っていてください。
 不登校は学校に行き慣れた状態から外れてしまったようなものです。すぐまた行き慣れた状態に戻してしまえば復帰しやすいという面もあると思います。現場でそういう風にすぐに学校に戻っていった子は確かに少なくありません。
 ただ、一方で行けない子はやはり行けないし、無理に行かせようとして親子関係が悪化したり、子どもが頑なになることも珍しくありません。行けなかった場合、親子で向き合う時間が増えることも忘れてはいけません。
 何より、お子さんの心身の状態が悪い時に無理強いするのは重大な問題を引き起こしてしまう可能性もあります。心の不調は体の不調以上に後を引きずることもあります。
 なので、学校休み初めの登校刺激は子どもの様子を見ながら、子どもとの関係を悪くしない範囲で慎重に行う必要があります。当然、親子によってその度合は違います。誰にとっても通用する正解はありません。
 といってもその加減が分からないという方も多いかもしれません。迷ったら控えめにするくらいがちょうどいいかと思います。

不登校になってまず目指すものは

 ここからは不登校が長期戦になった前提で書いていきます。
 子どもが不登校になったら、学校復帰を目指すのはもちろん(?)ですが、いきなりそこだけを目標に色々なことを考えると苦しくくなります。学校復帰できるかどうかも分かりません。
 私は不登校の保護者のみなさんへこういったことを目標設定として伝えています。

「まずは優良不登校生徒を目指しましょう」

 優良不登校生徒とは不登校ながらもいい方向へ向かってると思える状態のことです。学校や外部との距離感、勉強、生活リズムなどその中身は多様です。少しずつで、できるところからでいいので、学校復帰という目標よりは力を抜いてやっていけるはずです。
 なぜ、このような目標を設定するのか。重大なネタばらしをしてしまいましょう。
 不登校になったら親は待つことが大事、待っていればいつかいい方向に行くという言葉が昔からよく聞かれました。これは私もけっこう当たっていると思います。
 私が関わった不登校の子ども達の多くは、学期の切り替わりで急に学校に行くようになったり、進学先で自分の居場所を見つけたりと、どこかのタイミングで急にいい方向に行くことが比較的多かったように思えます。おそらくみなさんは少しずつよくなるイメージなのかもしれませんが、どこかのタイミングで一気にという方が現実は近いのです。もちろん水面下で色んな変化があったのでしょうが、それは「そういえばあの頃・・・」と後づけでしか分かりません。
 そして、その時がいつ来るのかも後づけでしか分かりません。いい方向に進んでから、振り返ってみてそういえばということはよくありますが、一喜一憂することも多く何とも言えません。いつか突然いい方向にグッと行くことが多いけど、それがいつどんな形でかまでは分からないのです。
 だからこそ、親御さんには待つという姿勢が大事になります。しかし、このアドバイスがあまりよろしくないのもまた事実です。不登校になった我が子をただひたすら待つというのがとてつもなく大変だからです。いつまで待ったらいいのか分からない中じっと待ち続けるのは苦しいのです。さっきから書いているようにいつになったらいい方向に行くのか、いつまで待ったらいいのかを私たち支援者は約束することはできません。
 待つしかないのはつらい。だからこそ、その間に目標や取り組むことが必要なのです。もちろんそれはただの時間潰しではありません。やがて来るいつかをより良いものに、そしてできれば早く来る為にやった方がいいことはたくさんあるのです。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?