プレミアムフライデー1周年に思う ~浸透する政策の差異はどこで生じるか~

2017年2月24日から提唱されたプレミアムフライデーが今月で1周年を迎えた。プレミアムフライデーという単語は浸透したが、各企業で早帰りが浸透したとは言い難い。1周年を機に改めてプレミアムフライデーについて考えてみたいと思う。

COOL BIZとの違い

国が提唱した施策で企業にも浸透したものといえばCOOL BIZ(クールビズ)である。夏に半袖シャツとノーネクタイで過ごす社会人は珍しくなくなった。COOL BIZとプレミアムフライデーはいずれも強制力のない施策であり、国も企業も「励行しましょう」と呼びかけているに過ぎない。ところがCOOL BIZに比べるとプレミアムフライデーは企業文化として根付いていない。両者の違いについて考えてみる。

・企業の経営者視点で、企業にメリットがある政策は根付きやすい。具体的には「売上が上がる」「コストが下がる」「利益が上がる」「従業員が活躍する」というメリットである。COOL BIZは軽装になることでオフィスの空調費を節約することができ、従業員が快適に過ごせるようになって活躍しやすくなった。ではプレミアムフライデーはどうか。時間給の企業であれば従業員が早帰りすることで人件費の節約が見込めるが、完了すべき業務が完了せず売上が落ちるリスクもある。

・企業の従業員視点で、従業員にメリットがある政策は根付きやすい。具体的には「企業から得られる賃金が増える」「日々の負担が減る」「労働環境が快適になる」「上司から褒められる」というメリットである。COOL BIZは軽装になることで日々の服の手入れが手軽になり、仕事中に快適に過ごせるようになった。ではプレミアムフライデーはどうか。上司から早帰りを促されても抱えている業務量は変わらない限り、早く帰ることができないのである。また時間給の場合は早帰りしたら企業から得られる賃金が減ってしまいデメリットとなる。

・ある年代より上では「長時間働くことが美徳」「企業になるべく長く仕えるのが従業員としてあるべき姿」「休まず働き続けることこそ素晴らしい」と考えている人間が少なくない。「俺が若い頃はお前よりずっと大変だったんだぞ」と言ってくる上司がいる職場ではプレミアムフライデーは浸透しない。

本気で浸透させるなら、アメとムチだ

国が本気でプレミアムフライデーを浸透させるなら、企業に対して利益を与えるか罰則を設けるかして、経営者の目の色を変えさせるしかない。以下は一例である。

・企業の全従業員の勤務管理システムのデータから「全従業員が早帰りを実現できている」と証明できた企業に対しては、法人税を減免する。

・企業に対して従業員の勤務状況の公表を義務付ける。長時間勤務が顕著な企業には就職希望者が寄り付かなくなり経営者に対する改善を促す効果がある。

プレミアムフライデーの本質

そもそもプレミアムフライデーという政策が始まったのはなぜか。長時間勤務による従業員の心身への悪影響を避けるため、という側面もあるが、本質は日本人は働きすぎて消費している時間もエネルギーもなく社会全体で消費行動が落ち込んでいるのである。勤務時間を減らしプライベートの時間を増やすことで従業員は街で消費する機会が増え、社会全体で消費活動が活発になり景気回復につながるのである。ところが百貨店が閉店する時刻以降まで勤務してコンビニで手短に買い物を済ませて会社と自宅を往復するだけになってしまっているのが実態である。

経営者は「従業員を長く働かせることで売上が上がる」と志向するのではなく、「利益率を上げて業務量を減らすことで売上を維持しつつ従業員の勤務時間を減らす」よう努めるべきである。そうすることで従業員は消費者として街で消費し、そのカネが社会を巡って自社の売上として還ってくるのである。

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