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人間失格について

これまでの人生で2回読んだ。
1回目は学生の時。たぶん大学生時代。
2回目は今週のことだ。

学生時代に読んだとき、主人公の葉ちゃんの心理が自分にもわかる気がして、そうか私も人間失格なんだ、と思って怖くなったのを覚えている。
そしてバアのマダムの最後の一文が衝撃的で、かつ意味不明に感じられて、「あれは一体何だったんだ」と思って、思ったまま、疑問は放っておいていた。

今週はなぜか人間失格のことを思い出して、また読んでみたら今度はわかるかもと思い立って、なぜか読んでみた。
ずいぶん感想が変わった。
マダムの言っていることがわかった気がした。
葉ちゃんは、どこもまでも自滅的に、利他的な人なのだ。

本編は、葉ちゃんの一人称で話が進む。
本当にもう、どうしようもなく、暗い内心について書かれている。
救いがないほどに、暗く、自信がなくおどおどしていて、人の顔色や気持ちを気にしながら生きている。
自分も人も、どこかバカにしていて、下にみている。
そんな内心を気取られないように、生きていくための術として身につけたのが彼のお道化である。
自分の気持ちはともかく、人を笑わせ、冗談をいって、自分の希望を蔑ろにしても人の期待に応えようとする。

周りから見た彼がどんな人だったかを想像してみたら、マダムの言うことがよくわかる。
きっと、他人からみた葉ちゃんは、どこまでも優しくて、人の気持ちがわかって、気のきく楽しい人だったに違いない。
そして、誰も望んでないけれど、彼は自滅していく。

たぶん、葉ちゃんみたいに極端でなくても、こういう人はたくさんいるんではないかと思った。
過剰なまでに人の期待を敏感に感じ取って、応えようとしてしまうのは、私にも心当たりがある部分である。

私は、相手に自分の気持ちをうまく言葉で伝えられるようになるというのが、大人になるということのひとつの意味なのではないかと思う。
そして、すべて期待に応えることはできないけれども、それでよいのだと自分を許してあげられること。

葉ちゃんが少しでも、自分の弱さを他人にさらけ出すことができていたら。
自分の心の中を人に話せていたら。
自分を許せていたら。

他人を巻き込みながら自滅したりなんかせず、人間失格になどならずに済んだのかもしれない。

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