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2017/08/18『チック』(初演)@シアタートラム【400字演劇レビュー】

こんにちは、演劇ソムリエのいとうゆうかです。

2017年、私が大学2年のとき、「現代日本における公共劇場の役割」というテーマで観劇をしていました。

というのも、大学で観劇助成金をもらうため。観劇助成金をもらえる対象者に選ばれたら、1本400字程度のレポートを提出する必要があった。

その一連の観劇レポートのひとつに、2017年8月18日にシアタートラムで上演された、『チック』という作品で書いた短い評があったので今回公開してみます。

実はこの観劇レポートシリーズは他にも出してます。ご興味のある方はこちらも是非。

なぜこのタイミングで出そうと思ったかと言うと、先日この『チック』を手掛けた演出家小山ゆうなさんが演出した『願いがかなうぐつぐつカクテル』という作品を観たから。

両作品とも可愛らしさあり、現代社会を斬るような鋭さありの大変面白い作品だったので、もう一度『チック』も思い出したい!そしてこれを読んだ人にも思い出してほしい!更に観ていない人にも少しでも良さを共有したい!と思ったのです。

今以上に未熟な19歳の私が書いた本当に短い文章ですが、記憶のほんの手掛かりになればと思い公開します。


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篠山輝信と柄本時生が演じるマイクとチックという14歳の少年の瑞々しさが眩しい舞台だった。
2人は複雑な家庭環境や生い立ちを抱えており、学校でも馴染めない。そんな2人がふとしたきっかけで旅に出て、その道中に個性的な人々に出会う。彼らの純粋でセンチメンタルな感性や価値観を通して表現される世界は、微笑ましくも、はっとさせられるような鋭利さも孕んでいる。
この世界観を創り上げた演出家・小山ゆうなの功績は大きい。ヒットソングの使用や、観客いじり等によって観客と物語世界の距離を近づけていた。ビデオカメラでその場の映像をスクリーンに映しだす演出も、斬新だった。また、ドイツが抱える事情を重苦しくなく、しかしはっきりと描写していたのは、演出もさることながら、小山が自ら手掛けた生き生きとした翻訳も一役買っていた。
少年たちの爽やかな友情と思春期特有の切なさが、この世界は思ったより悪くないと思わせてくれる。時に理不尽な日常に対するカタルシスが観客にもたらされ、文化芸術が豊かな心を育む助けになるという点で、この作品が公共劇場で上演された意義があるだろう。


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原作本はこちら。


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