売れる!営業トーク(初級編)
営業で最も重要なスキルが「コミュニケーションスキル」であると考えている人が圧倒的に多いわりには、営業コミュニケーションに関する本やSNSにはあまり深く考察したものはなくて、「これだけやれば」を売りにした「楽して売る」的なものか、精神論的なものが多いと感じます。
ここでは、営業パーソンの真の実力向上を目指して、再現性が高くなるように「そうする理由」にもしっかりフォーカスを当てて、売れる営業トークづくりをお話ししたいと思います。
1.準備体操
①主語の入れ替え
どんな営業パーソンでも商品知識を得たらならば、お客さまの前で商品のプレゼンは可能です。だから得意か不得意かがわからないままプレゼンが繰り返されていきます。
そして、売れない営業パーソンは「何か足りない」と感じて悩むか、「何も不足はないはず」と言って成約率の低いコミュニケーションを繰り返すか、のいずれかになるのです。
実は売れるトークと売れないトークの差は、よく観察しないと分からないほどに小さいものです。しかし、その差から生まれる結果の差はものすごく大きくなります。その一つが「主語の間違い」なんです。
売れない営業パーソンは「当社・弊社」「当社の商品・サービス」を主語にすることが多いのですが、売れる営業パーソンは「御社」「○○様(○○部⻑・〇〇課⻑など)」を主語にして話すことが多くなります。
あるテレアポを主業とする会社で、この主語の入れ替えを担当者に徹底させただけで、窓口・受付突破率やアポイント獲得率は5倍以上になったそうです。
②「聞きたい話を、聞きたい時に、断る自由をもって聞きたい」
「売れない営業」の典型で最もいただけないものの一つは、挨拶を済ませると、いきなり企画書やパンフレットを開いて、商品の説明を始めてしまう、というパターンです。しかも、ご丁寧に最初から順々にページをめくり、20分、30分と最後のページが終わるまで一方的に説明し、そこから、「ご不明な点、ご質問はございますか」と一方的に聞くパターンが実に多いのです。
お客さまがその商品に既に興味があり説明を聞きたいと強く思っている場合、あるいは圧倒的な商品力で一気にお客様の関心を引きつけられる、という場合はこのパターンでも成約は可能です。質問を受ける場合もあるかもしれません。しかしそういったケースは極めてまれです。多くの場合は信頼関係のないまま説明をし続け、人間関係の緊張感がますます高くなり、説明後に「いかがですか?」「ご質問は?」と聞いても「あ、大丈夫です」とつれない返事が返ってくることになるのです。
5分、10分しか時間がもらえない中の営業でも、30分、1時間の時間が取れる場合でも、「いきなり説明」のスクリプト構成ではいつまでも成果は出ない
ことをしっかりと頭に入れておくべきですね。
「営業スクリプト=説明スクリプト」ではありません。きちんと分かりやすく説明すれば、お客さまは興味、関心を持ってくれる、というのは幻想です。お客様は「聞きたい話を、聞きたいときに、断る自由を持って聞きたい」と思っていることを頭に叩き込んで欲しいのです。大切なのは「聞きたい」と思ってもらうプロセスを踏む、ということなのです。
③売れる営業トークあれこれ
その他、「売れる営業トークの特⻑」をいくつか挙げておくので参考にしていただければと思います。
2.売れる営業トークの構成
①セールスプロセス
売れる営業マンが実行しているセオリーに「セールスプロセス」(別の機会に詳しく解説します)というものがあります。
・見込客の発見
・アプローチ
・初期訪問
・ニーズ喚起
・提案、説明
・クロージング
・紹介依頼
・フォローアップ
という8つのプロセスで構成されているものですが、その最重要事項は「それぞれのプロセスを順番どおりに実行する」ことです。
②売れる営業トークの「9段階プロセス」
何日もかけてプロセスを順に実行できるのであればよいですが、会った初日に提案やクロージングをしなければならない場面もあります。そんな時に展開される短いトークの中にも順番通りのセールスプロセスが埋め込まれていると、売れる営業トークになる、ということに注意しながら見てください。
(表の下に、各番号の解説をします)
1.挨拶
しっかりと明朗快活・清潔・誠実・謙虚・親しみやすさをイメージして振舞います。
2.商談のための場づくり、雰囲気づくりのために雑談
雑談のコツはこちらに参考になるサイト情報をリンクしたので参考にしてください。
本番の商談モードに入ってしまうとなかなか教えてもらえないお客さまの真意や機密性の高い情報などは、雑談の一環として投げかけてみると有効なヒントが得られることもあるので雑談の場は大切に使いたいですね。
「売れる営業」は雑談の場面を巧みに使って有益な情報を得ているものです。
3.お客さまに役立ちそうな情報の提供へ展開
手短な雑談ネタである天気の話の後に、すぐに企画書やパンフレットを開いて商品説明を始める営業パーソンが散見されますが、成約率にはよい影響を与えないので、このフェーズにしっかりと時間を取ってください。
ここでお客さまに役立ちそうな情報が提供できるかで、その後のヒアリングの「量と質」に明暗が分かれます。
お客さまは、有益な情報が得られたらその営業パーソンを「使える人間」と判断し、そして話を聞く態勢となり、コミュニケーションも深いものになっていきます。さらに言えば「役に立つ情報」ではなく、「役に立ちそう」というところがポイントで、情報の質に関してはハードルを下げて、持っていける情報の幅を増やすスタンスでよいと思います。決め打ちで範囲を狭めると、その情報が的外れだった場合に他の情報を持ち合わせていないことになるからです。
一つの雑談にかける時間が5分から10分として、雑談ネタは3つ程度までが限度でしょう。その雑談が「いつも情報を持ってきてくれる営業パーソン」というポジションの獲得という目的を果たせるものならベストです。
4.最近感じている課題や現状のヒアリング
ここでの成果は実は(3)の出来によっても左右されます。「お役立ち」の話題が不十分なまま商品説明をしてしまうと、お客さまは営業パーソンの力量を見透かし、真剣モードでは対応してくれなくなります。
予め提案する内容が決まっている場合(一定程度ニーズがあると想定される場合)では、その提案で解決できるかもしれないお客様の課題について、お客さまの現状(事実)や認識(感情)を知る質問を準備しておき、ここでヒアリングするとよいでしょう。
5.現状の課題に対する役に立てそうなことを明示
ここも「役に立つことの明示」ではなく「役に立てそうな」レベルで可能性を広げておくのがコツ。理由は(3)と同じです。
6.(5)に対するお客さまのリアクションの把握
お客さまの感触を把握した上でまんざらでもないようであれば、次のステップに進みましょう。
7.商品やサービスの説明、提案
いよいよ提案です。ツールの内容順に拘らず「お客さまの知りたい(と思われる)順に」「お客さまのベネフィットを意識して」「お客さまを主語に」話すよう心がけましょう。
「お客さまの課題に対するご認識に、お役に立てる手段の一つではないかと思うのですが・・・」という入り方も一つの方法です。
8.質疑応答
(7)までの段取りを踏めば、全く関心がない場合以外はお客さまから諸々の質問が出てくるでしょう。ここで「コスト」「導入事例」に関する質問が出ればよい傾向。宿題をもらい、次のステップに進みたいところです。
9.次回訪問の約束、締めくくり
しっかりとお客さまの興味の度合いを測りながら、それが最高点ではなくとも必ず挽回の機会として次回アポは決めて辞去しましょう。時期だけ決めて、というケースがありますが出来れば日時をきちんと決めてください。アポ取得に時間を要するばかりか、お客さまの熱が冷め「今忙しい」と予め決めた時期にも会えなくな ることもあるからです。
3.難しく感じる人向けの「3段階シナリオ」
「営業トークのプロセスが9つもあるのか〜泣」と思ってしまった人向けには「3段階シナリオ」も用意しましたのでご安心ください。この3段階を踏めば、その面談や電話では成約に至らなくても、次の面談には必ず繋がりますのでしっかり取り組んでいきましょう。
3段階シナリオは、次の3つのプロセスで構成されます。
1.つかみ
2.話題を広げる・会話を深める
3.お客さま満足度を高める
では、一つずつ見ていきましょう。
①つかみ
営業トークも「お笑い」と同じで、「つかみ」が大切です。3段階シナリオでは、かなり重要なので詳しく解説します。
挨拶の後のトークとしては「雑談」が一般的ですが、この雑談に「つかみ」の役割を担ってもらうのです。
しかしこの「雑談」、よくよく準備をしないで始めてしまうと「最近暑いですね」「寒くなりましたね」などの天気の話からスタートしてしまうことが多いのではないでしょうか。
天気の話が提案したいことと関連性があるならよいのですが、全く関係ないとしたら「つかみ」としては役割は果たしていません。
そもそも「つかみ」とは、何でしょうか?なぜ必要なんでしょう?
漫才で言えば、観客は芸人がネタを始めるまでは「何をするんだろう」「スベるんじゃないか」などと感じ、緊張して笑いが起こりづらい状態になっています。
観客の緊張感を振り払うためにも、まず最初に笑わせることが重要な課題となりますが、ここで必要なのが「つかみ」です。
ネタが始まる前、起承転結の「起」の部分で、観客を笑わせることによって観客の緊張感を減らしつつ、ネタや芸人に対して安心感や興味を持ってもらう、ということですね。
私たちは芸人ではありませんからお客さまを無理に笑わせる必要はありませんが、営業トークでも「緊張感を減らし、これから自分が話す内容に興味を持ってもらう効果のある話(雑談)」が必要です。
そして、私たちにとっての「つかみ」として「お客さまが喜ぶ話題」「素朴な疑問」や「共通する話題」を使ってみてください。もちろん事前リサーチは必要です。
「そういえば、この間の新聞に載っていましたが・・・・」というように直近で報道されたその会社や業界のニュースなどは最適なものの一つです。
それが提案したい内容につながりを持つ話題であればなおベターです。
②話題を広げる・会話を深める
結論から言います。話題を広げる、会話を深めるためには、傾聴の姿勢に徹することです。とにかくお客さま自身やお客さまの話に強い関心を持って聴き切ることが大切です。話題を広げる=こちらからどんどん話す、ではなく、
傾聴と共感のスキルをフル活用して、お客さまの話を引き出すことに集中しましょう。
「お客さまが黙っていたらどうするの?」
聴き切る、といってもお客さまが話題を提供してくれなかったら、聴きようがないよ、という声が聞こえてきそうですね。以下の「質問」を投げかけることで話題の提供してみてはどうでしょうか。
◆(「つかみ」で話題になった企業や社会の課題等に)ホームページには***が紹介されていましたが。御社はどう取り組んでいらっしゃいますか?
◆御社のニュースリリースを拝見しました。あれは**様の***部で取り組まれているんですね!かなりご苦労されたのではないですか?
◆御社の業界でも人材採用にご苦労されていると聞きます。特に2024年からは労働時間の制限が厳しくなるので、当社でも工夫していかないといけないと思っています。採用は進んでいらっしゃいますか?
◆***のようなことをやって解決しようとしている企業もあるようですが、これについてどうお感じになりますか?
その他、質問のスキルあれこれ、をまとめておきましたのでこちらも参考にしてみてください。
③お客さま満足を高める
やっと面談にこぎつけたと思ったら、次回までの宿題も出されず、次回の訪問の約束もいただけずに面談を終えてしまったことはないでしょうか。次回アポを面談時に取らなかった、というあなた自身のミスならば次から気を付けていただきたいと思いますが、そもそも「そんな雰囲気ではなかったので」ということであれば、その原因は、その面談でのお客さま満足度が十分ではなかった、ということだと考えられます。
お客さまが聞きたい情報を提供できたか、お客さまが課題を感じていることに対し何らかのヒントを提示することができたか、がお客さま満足度の尺度と言えますが、これは準備次第で必ず高めていけます。
そもそもお客さまは「この人は自分にとってどんな役に立つのだろうか」という疑問や関心を持ってあなたと話をしてきたわけです。しかし面談でその兆しも示すことができなかった、質疑応答の場面で満足のいく回答が出来なかったという場合は、当然お客さま満足は低迷してしまい、その結果お客さまは再会の価値がないと判断してしまうでしょう。
カンのいい読者の方はもうお分かりだと思います。お客さま満足度を高めるための準備とは、雑談から導き出されたお客さまの関心に対して正確に回答する用意をすることです。
4.売れる!営業トークまとめ
営業トーク、というと「どうやってうまく話すか」「どんな話術でお客さまをその気にさせるか」というように「話す」ということを意識してしまいそうですが、営業トークが上手い人は「話す」というより「聴く」ということに意識があると言えます。
(ここまで読んでいただいた方は、「聴く」とは「質問」によってお客さまの話を引き出すこと、そしてその話を聴き切る、そして新たな質問をするというサイクルだということはもうお分かりだと思います)
そもそも営業には、特に企業営業ともなれば言葉での説明だけでは伝えら
れない複雑なことだらけです。その複雑なことを額に汗して口頭で伝え、結局成果が上がらない営業パーソンは残念ながら本当に沢山います。
まずは「説明」より、サンプルやデモ画面、ビジュアルやイラスト、導入事例の方が、お客さまに伝わるということは押さえておいてください。その上で、あなたの販売する商品やサービスをより魅力的に伝える基本的な方法をを再確認して、このnoteを終わりたいと思います。
検討を祈ります!
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