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市内RPG

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福井丘県子郡市。市役所発の魔王討伐に、高校生勇者がゆるーーく挑む。不定期連載中。
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#日記

市内RPG ②仲間

二師鉄電車と二師鉄バスに乗って、明仙高校へ行く。夏休みなのに、補習があるなんて。進学校だからしかたないが、つまらない。 大穂駅からヤスが乗ってきた。 「おはよう」 「おぃーす」 ヤスのテンションは朝はこのくらい。いつものことだ。本人曰く、低血圧らしい。ひくいテンションのヤスとはなかなか盛り上がれない。無言で、電車に揺られている。ぼくらは電車の一番前に乗る。混まないし、乗客の先頭にいるということは何かうれしい。 次の足坂駅からはヒラが乗ってくる。いきなりヒラが尋ねてきた。

市内RPG ⑨スライム

戦士のヤスはバトルステッキを装備している。 魔法使いのヒラはアツッの魔法を身に付けている。 勇者のぼくはヒノキボー。勇者のはずなのに。何か頼りない。まあ、とりあえず、ケータイに登録して装備した。 ヤスが言った。 「装備したら、戦いたくなるな」 「スライムくらいなら、勝てるかも」 ヒラもやる気だ。 子郡駅前噴水広場にそいつはいた。 小犬くらいの大きさで、水色の半透明のボディは形を変えながら動いていた。目や口は見当たらない。ただ半透明のボディの奥に核と呼ばれるソフトボー

市内RPG 12強くなるパーティー

ぼくら勇者、戦士、魔法使い、僧侶のパーティーは、子郡駅から電車に乗って、1つ北の小保駅で降りて、アスファルトの道を歩いている。 「ちょっと遠くない?だから、明日にしようと言ったのに」 さっきパーティーに加わった僧侶のカナは、文句をたらたら言いっぱなしだ。 「明日、自転車でって言ったのに」 戦士ヤス、魔法使いヒラ、勇者のぼくはそれを聞き流しながら歩いた。 広い県道が真っ直ぐ伸びている。片側は住宅地、もう片側は田んぼが広がっている。風はあるのだけど、日差しが強い。目的地は運動

市内RPG 13カゲとの遭遇?

レベル5になったぼくらは、市役所での情報をもとに、子郡運動公園に向かっている。 レベル5の戦士、勇者、魔法使い、そして僧侶。 もうスライムやジャンボタニシは恐れない。 市役所の尾林さんは、子郡運動公園にいるカゲから情報を聞くようにと教えてくれた。無事にカゲに会えるのだろうか。 カゲ。市役所の探索部。一般市民を装って、勇者を支援する。 子郡運動公園にそのカゲがいて、魔王の情報をつかんでいるらしい。 子郡運動公園。市民の憩いの公園である。 プロ野球チームの福井丘ソフトバ

市内RPG 14蛙とコンビニ

ピンクの帽子を被ったおじさんランナーは足を止めない。 ぼくら、つまり、勇者と戦士、魔法使い、僧侶の4人は何とかおじさんに追いついた。 「おじさん、おじさん、止まってよ」 ぼくらは走りながら話しかけた。おじさんは止まらない。ただ何かつぶやいている。小さい声だ。 ぼくらは伴走しながら耳を澄ました。 「魔王は蛙神社。魔王は蛙神社。魔王は、、、」 蛙神社。 蛙がたくさんいる神社。ここからそう遠くはない。小高い丘の上にあり、敷地の真ん中には小さな池がある。たくさんの蛙の置物

市内RPG 15決戦、蛙神社!

蛙神社に着くころには日が傾いていた。 蛙神社に飾られた風鈴の音は、蛙の鳴き声に少しずつ押されていくのが感じられる。 ぼくら勇者、戦士、魔法使い、僧侶パーティーは、蛙神社の鳥居をくぐり、石畳みを踏みしめながら奥に進んだ。 蛙が鳴いている。ゲコゲコ、ゲコゲコ。 竹林に挟まれた小道。右手に池があるらしい。蛙の鳴き声もそっちの方から聞こえてくる。 少し開けた場所にぼくらは出てきた。池も見える。太い木の柵で池は囲まれていて、「入るな、キケン」の看板が立てられている。 「どこ

市内RPG 17レベル8

蛙神社で青いウシガエルを倒したぼくらのパーティーは全員レベル8になった。 戦士ヤスは相変わらず呪文を覚えない。 勇者のぼくは、火の呪文アツッと回復呪文ナムーを覚えていた。 しかし、今回のレベルアップでは何も覚えなかった。こんなこともあるのだ。 魔法使いヒラは呪文がそろってきた。 火の呪文アツッと強化呪文メチャアツッ。 水の呪文ツメタ。 雷の呪文ビリー。 どれも攻撃魔法だ。しかもビリーは金縛りの効果も期待できる。 僧侶カナも呪文が増えた。 回復呪文ナムーとその全体呪文ナ

RPG 18勇者、横熊山遺跡へ

蛙神社の青いウシガエルを倒したぼくら勇者パーティーは、次の目的地、横熊山遺跡を目指す。 レベル8になり、自信もちょっとついてきた。 「蛙こわかったー」 お寺の娘の僧侶カナは首をすくめて言った。 「木魚が戻ってきてよかったね」 そんなカナに魔法使いヒラが言った。 「う○こ花火買っててよかったな」 戦士ヤスは自分の手柄のように言った。  さて、目指す横熊山遺跡。 横熊山遺跡は光沢にある小さな遺跡だ。 住宅地の真ん中にある。 遺跡とは、わからないくらい。 二師鉄電車の

市内RPG 21平岡パンに行け

横熊山遺跡で、巨大アブラゼミを倒したぼくら、勇者、戦士、魔法使い、僧侶のパーティーはレベル9になった。 次の目的地は、小保駅そばにある平岡パン工場だ。 パン工場といっても古びた工場ではなく、カフェテラスのあるおしゃれな工場だ。ランチ時には、OLさんの姿も見られる。 ぼくらは二師鉄子郡駅に10時に集合した。 「ここからは1駅ね」僧侶のカナが言った。 「トベルーは使わないの?」魔法使いのヒラが言った。 レベル9でカナが覚えた空を飛べる呪文。 「あれはなかなかきついから

市内RPG 29野良勇者

ぼくら、レベル9.勇者、戦士、魔法使い、僧侶の高校生パーティー。 エオンショッピングセンターのキンタッケーチキンで、カゲから情報を得た。 『段ボール回収箱段ジョンに魔王』 ハンバーガーの包装紙にメッセージ。 ハンバーガーを急いで食べて、出口Dに進む。 「ここから出ると、段ボール回収箱が近いわ」 僧侶のカナが言った。 段ボール回収箱はすぐに見つかった。 「どこに、段ジョンがあるんだ?」 戦士ヤスが言った。 段ボール回収箱は、入り切れないほどの段ボールが積まれていた

市内RPG 31 宝箱は拾えるか

ぼくら、レベル10。戦士、勇者、魔法使い、僧侶の高校生パーティー。 エオンショッピングセンターの段ボール回収箱段ジョンを探索している。 まさか、エオンの真下に段ジョンがあるなんて。 ぼくらは、4mほどの幅の通路を進んでいる。足元と頭上には、オレンジの小さなライトが灯されている。この灯りのおかげて、10m先くらいはぼんやりと見える。 真っ直ぐに進むと、十字路に出た。段ジョン特有の迷路だ。 「どっちに進む?」戦士ヤスが左右の通路を見た。 「ケータイ出して」僧侶カナがぼ