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むし歯ができる本当の理由【Happy SMILE】

「キスをしたらむし歯がうつる」「大人が使ったスプーンを子どもの口に入れたりするとむし歯がうつる」――このような話を、誰でも一度は聞いたことがあるのではないでしょうか。
皆さんは、むし歯は「うつる病気」だと思いますか?

むし歯は「感染症」なのか?

結論から言うと、むし歯は「感染症」ではありません

正確に言うと菌はうつることがあるのですが、菌がうつること=むし歯発生の原因ではありません。

長い間「むし歯は感染症」「むし歯はうつる」という考え方がされてきて、「大人が使ったスプーンなどの食具を子どもと共用する」といったことでむし歯がうつる――という話もすっかり有名ですが、現在では「食具の共用は、むし歯を増やす原因にはならない」という研究結果もあります。
もちろん一人ひとりお口の状況は様々で、どんな菌が移行するかわからない点では一概に”心配ない”とは言えませんが、むし歯を予防するには、食具の共用以上に気をつけるべきことがあります。

「菌がいること」≠「むし歯ができること」

「むし歯がうつる」という考えは、従来、むし歯が「特定の原因菌による感染症」だとする説に基づいて言われてきたことです。
ミュータンス菌、と聞くとピンとくる方もおられるかもしれません。
ミュータンス菌は、むし歯の原因菌の一つとして知られています。

ところが、実際には、ミュータンス菌が明確に存在していなくてもむし歯が発生することもあれば、逆に、ミュータンス菌が歯の表面にたくさんいる状況にもかかわらずむし歯が発生しないこともあることがわかってきました!
これについては、実感がある人も多いのでは……?

なぜあの人はむし歯にならないのか?

つまり、これまでは「むし歯菌がうつる→むし歯になる」と考えられていましたが、次第に「むし歯菌が口の中にいることと、むし歯ができることは別」ということが明らかになってきたのです。

大切なのは 菌の「存在」ではなく「バランス」

現在、最も妥当とされている考え方は、
むし歯は、口の中の細菌のバランスが崩れることによって起こる】
というものです。

この考え方では、これまでむし歯の原因だといわれてきたミュータンス菌は「常在細菌」であり「健康なお口の中に普通にいる」と考えます。
常在細菌のうち”酸を出す菌”や”酸に強い菌”が増えると、その結果として引き起こされるのがむし歯だということです。

つまり、むし歯の原因菌は誰の口にもいて、普段は悪さをせず暮らしているが、甘い物をたくさん食べたり、歳をとって唾液が減ったりして、プラークのpHが低下し酸に強い菌が暮らしやすい環境になると、菌のバランスがむし歯の原因菌に偏るようになり、その菌が出す酸によって歯が溶ける=むし歯ができてしまう。そんなふうに考えられています。

”酸に強い菌”を増やすような変化を起こさないこと!

お口の平安を守るには?

お口の中の菌の秩序――すなわちバランスを保つことができれば、むし歯の発生はコントロールすることができます。

お口のなかの平和な環境づくりのポイントは
【ブラッシング・食事・フッ素】
この3つです。簡単にご紹介します。


1.ブラッシング

そもそも歯の表面にプラーク(細菌)がなければ、むし歯にはなりません。

1日2回は磨きましょう

2.食事

砂糖をはじめとする発酵性糖質は、むし歯の原因菌の勢力を強めてしまいます。

甘いものの種類、頻度、量は重要

3.フッ素

フッ素(フッ化物)は、むし歯の発生を防ぐ効果が明らかになっています。

フッ素配合の歯磨き粉や洗口液を取り入れよう

”環境づくり”でお口は変えられる!

特定の菌の存在が問題ではなく、良好な環境を整えられるかどうかこそが現在の「むし歯予防」のキモであるといえます。

「子どものころからむし歯が多かったから、 自分はこれからも一生むし歯に悩まされる」
「自分がむし歯が多いせいで、子どもにもその苦労をさせることになるのではないかと不安」
このようなお悩みがあった方もおられるかしれません。
しかし、いつでも、どなたでも行動次第でお口の環境や未来は変えられる可能性があり、大部分のむし歯は生活習慣で防げるのです。

国民皆歯科健診も近い将来実現することとなり、お口の健康はぐっと身近な話題になってきました。予防に歯科医院を活用して、健康なお口と体を維持していっていただきたいと思います。

最後まで読んでいただきありがとうございました!
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今回の記事は管理栄養士の道盛が担当しました。

参考
・Wakaguri S et al. Association between Caregiver Behaviours to Prevent Vertical Transmission and Dental Caries in Their 3-Year-Old Children. Caries Res 2011;45:281–286
・「歯科衛生士」クインテッセンス出版. July 2019 vol.43 18-32
・「カリエスブック」伊藤直人. 医歯薬出版. P12
https://www.shien.co.jp/book/sample/s3/9661.pdf



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