【サカナクション】毒親とミュージック

私の父は俗にいう毒親だ。

「古い物は尊い」主義の昭和クソ頑固親父で、私が平成以降の音楽に
触れないように育ててきた。
テレビはNHKのN響アワーと古典芸能の番組。
ラジオもNHKのクラシックと映画音楽の番組だけ聴かせてくれた。
流行りの音楽に触れるチャンスは年1回、これもNHKの紅白歌合戦だった。

さながらウィリー・ウォンカのパパだ。

「最近の音楽は有害で耳が腐るから、絶対に聴いちゃダメだよ。」
と言われて育った。

そんなあなたの方が有害じゃないか。と思い始めたのは、ここ数年の話。

さて、そんな父だが、私が12才のときに突然、
サカナクションミュージックって曲がおもしろいよ。」
と言ってきたのだ。

どうした?熱でも出たか?というくらい青天の霹靂。

おすすめされたので、とりあえず聴いてみた。
そしたらもう、なんてこった。

イントロ、歌詞が入り、だんだん音数が増えていく。
弱火でチョロチョロあたたまってきたかと思ったら火力が少し強くなり、
かと思えば一瞬で全てが消え、瞬間で強火になり、また弱火に戻る。
そして曲の最も爆発する部分が最後に来るなんて!

シンセも打ち込みも初めて聴いた。もう革命だ。

ただ、狭く深くしか音楽に触れてこなかった私には、サカナクションを
楽しむ感受性が育っていなかった。楽曲をすっかり持て余してしまい、
それ以上ハマることはなかった。

そして、ミュージック以外にはサカナクションの曲も流行りの曲も
聴かせてもらえなかった。


それからしばらくして高校生になった。
スマホを買ってもらった。Mステを観てもいいことになった。

この2つはビッグバンだ。音楽の世界が一気に広がった。
これまで聴けなかった分を埋めるように、たくさん聴きまくった。

さながらウィリー・ウォンカだ。


そうこうして、くるりにハマり、サカナクションに行き着いた。

そのときの私の感受性は、十分にサカナクションを受け入れた。
くるりを通って受け入れやすくなったのもあるだろう。

入り口はばらの花×ネイティブダンサーのマッシュアップ。


2022年末にマハラージャンYONA YONA WEEKENDERSでLIQUID ROOMに行ったときは喜びもひとしおだった。
私が犬だったら尻尾がちぎれるほど振っていただろう。人間で良かった。

大学生になって夜ふかしが増えてから、サカナクションは夜に合う
バンドだとも気づけるようになった。

・グッドバイ
・夜の東側
・アムスフィッシュ

父は今でも最近の曲を聴いていると機嫌が悪くなる。
ドアを強く閉めたり、テレビをつけたり、
私の音をかき消すように、自分の耳に入らないように邪魔をしてくる。

だから私は家でもずっとイヤホンで曲を聴いている。
音楽はもちろんだけれど、耳栓代わりとしてもつけている。
「口寂しい」と感じたことはないが、「耳寂しい」は私のデフォだ。

そんな私にサカナクションはぴったりだった。
打ち込みの音も、生の音も、密封された私の脳に直に響いてくる。

父をシャットアウトしてくれる。


毒は毒をもって制す。


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