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読んで疲れて柔軟な頭に【ラ・ロシュフコー箴言集】岩波文庫チャレンジ60/100冊目

約500の箴言集が収録、どれも2行ほどで短く読みやすいものが多い。が、一気に読むと疲れるので1日100個ずつと決めて読んだ。


頭が良くなる

読み終わった後に知った事だが「読んで疲れる」のはそれだけ頭を働かせた証拠であり、認知能力や柔軟性を伸ばすのに良い本らしい。

詳細はこちら「ちょっと読むだけでも頭がよくなる本」をご参照ください🎵

その他、頭が良くなると言われる類の本がポエム。読んで字の如く分かる訳ではないポエムや名言集は「どういう意味だろう」と必死に考えることで、そのまま考える力に繋がる研究結果があるとの事。

頭の良さには色々あるが、ここで言う柔軟性が何に良いかというと、流行りで言えばメタ思考や一般化できる能力、という事だと思った。

動画に登場した「ワーズワス詩集」・・!!
難しすぎて評価1になっている。これを機に評価を少し見直してみる。いずれにしても振り返り節目の冊数であるためちょうど良い。)

善人面をこき下ろした、大いなるネタ帳

全部が全部的を得ているとも思わず、ツッコミながら読める所も楽しい。自分はこう思うが、あなたはどう?と聞いてみたくなるネタが満載。

基本的には善の面を被った知識人や権力者を揶揄、こき下ろした言葉が多い。主題は人間の美徳の虚偽性

人々に愛され親しまれる古典と言うよりも、ルソーからサルトルに至るまで、後世の多くの高明な読者に反発、怒り、苛立ちを感じさせ、槍玉にあげられる光栄に属してきたあくの強い刺激的な古典

解説より

岩波文庫の表紙の絵は、仮面を持った天使が賢者セネカを指さしている所で、初期刊行本の扉絵になっていたらしい。

「人は各人各様に偽物」と言われれば身も蓋もないが「人は物事をあるがままに正しく見ず、その値打ちを過大か過小に評価し、自分の境遇や性質に都合の良いようにこじつけてしまう」のは、脳の性質のため乗り越えるしかない。

訳注に多く登場するクリスチナ女王*評「私はそうは思わない」「嘘だ」「なんたる滑稽な弱さ!」「なんと感嘆すべき、真実な定義だろう」など賞賛と反対が相乱れていて面白い。

*スウェーデン女王、デカルトを始めフランス学者を宮廷に招くなど、教養を積む事に熱心

価値観や環境、周りにどんな人がいるかで評価が分かれる、大いなるネタ帳

これが私のトップ3

🥇頭の良い馬鹿ほどはた迷惑な馬鹿はいない
🥈罪はずいぶん庇い立てされるが、無実のほうはそんな庇護を見出せるどころではない世の中である
🥉女は初恋では恋人を恋し、次からは恋を恋する

理由
1)世の中は「正しいが正しさのあり方が間違いで、間違いでも間違い方が正しい」場合がありますよね。正しさを決めるのが馬鹿では生きづらい。
2)被害者の人権を想起
3)恋してる自分が好きと言うキラキラ感

番外編的に好きなものはこれ。削除された箴言集として入っているのが笑える。
・外で浮気をしたばかりの時は、必ず恋人の顔を見るのが怖い

これらは自身の「好み」です。箴言集の「考察」にあるように「人は正しく判断できるだけの感性を持たなくても、〇〇を好きになれるし、正しく判断できる良い感性を持ちながら、〇〇を好まないこともある」のです。

色んな人の「好み」も知りたくなりました☺️

感じた事など

箴言集はこの言葉で始まる。

我々の美徳は、ほとんどの場合、偽装した悪徳に過ぎない

高明な文化人を怒らせた(笑)その内容は、先に自分が書いたように環境や周りの人に影響される部分もあるのではないか。

確かに1個人としての自己保存本能はある。どうしようもない言葉が多く並ぶ分、期待しなくなり、良い事を見つけた時の反動は大きくなる事もあると思う。

が、これはヨーロッパ、フランスでの箴言集。日本で訓示めいたものと言えば何があるだろうと考えた。言いたい事は同じであっても、言い方は変わるのではないか。

自分なりに思いついた所は葉隠などの武士道や禅。これを古いと、世間の人は言うだろうか。ノーベル文学賞授賞式で川端康成が「美しい日本の私」と題した講演の心。

ついで、子供の頃に見ていたマンガで今でも好きな言葉がある。(どの作品かは忘れてしまったけど)

「勝つためにじゃなく、負けないために」

遡れば塚原卜伝という武士が残した言葉であるよう。どの作品かは忘れてしまったが、一見古い言葉が現在のポップカルチャーに踏襲されて、今でも日本人の心をときめかせてくれているのだと、知った時は震えるほど感動した

なんだかんだ言って、そんな簡単に、文化に根付いた心は変わらないのかも。

グローバル化が進めば当然のように西洋化される、世界共通語は英語だからだ。ツールとしての西洋化は便利だと思うが、文化としての西洋化はそこそこが良いと思う。昔の人が大切にしていた心は今でも十分美しい。

箴言集15選(頭の体操にどうぞ)

自己愛こそは、
あらゆる阿諛追従の徒の中の最たるもの

情熱は、
しばしば最高の利口者を愚か者に変え、またしばしば最低の馬鹿を利口者にする

慎ましさとは、
妬みや軽蔑の的になることへの恐れ

謙虚とは、
往々にして他人を服従させるために装う見せかけの服従に過ぎない。それは傲慢の手口の1つで高ぶるためにへりくだるのである。

幸運に耐えるには、
不運に耐える以上に、大きないくつもの美徳が必要

不在は、
並の情熱を冷まし、大いなる情熱を募らせる。ちょうど風が蝋燭を吹き消し、火事を煽り立てるように

人間は、もしお互いに騙され合っていなければ、到底長い間社会を作って生き続けられないであろう

大きな欠点を持つ事は、大きな人物にしか許されない

我々に感嘆する人々を、我々は必ず愛する。そして我々が感嘆する人々を、我々は必ずしも愛さない

栄達を伴わない偉さはあるが、何らかの偉さを伴わない栄達無い

ちゃんとわかる人にとっては、わけのわからない人たちにわからせようとするよりも、彼らに負けておく方が骨が折れない

自分への箴言集

小さなことに熱中しすぎる人は概して大きなことができなくなるもの

おおらかさと見えるものも、実は少利に目をくれずに、大利を狙う偽装した野心に過ぎないことが多い

それ自体不可能な事はあまりない。ただ我々にはぜひとも成し遂げようと言う熱意がそのための手段以上に欠けている。

真の雄弁は、
言うべきことを全て言い、かつ言うべき事しか言わないところにある

箴言の中には入っていないけれど、心に留めたい言葉(がんばれ自分)

自分に関係のないことだと万事において有能でありながら、自分に関わる事はたいそう下手な人がいる一方で、逆に、自分に関わりのあることに限って有能で、あらゆることの中に自己の利益をうまく見つける人がいる。

頑張っても分からないもの

500ちょっとある箴言の中には分からなかったものもある。
「極度の退屈は、退屈しのぎになる」・・???

「優雅さは肉体にとって、精神にとっての良識に当たる」
分かりにくいとされたこの箴言を次のように解釈した人がある。

「優雅を欠く肉体は、良識を欠く精神と同じように不愉快」
こう言われればスッと入てくる。

自分なりに解釈する事が、頭の体操になるのはこういう事だと思った。岩波チャレンジでウンウン唸っても理解できなかった「重量の恩寵」「啓蒙の弁証法」「ワーズワス・・」解説本を手に取るのも一つだけど、いつか自分なりの解釈を見つけるため再読したいとまた燃えた。

岩波文庫100冊チャレンジ、残り40冊🌟

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