日記的な恋を2

 夏服だけではもう動けない夜がやってきた。おすすめの音楽は"andymori"そう言って『クラブナイト』をかけて君は僕に軽めのキスをした。今度秋服と冬服観に行こうねと約束して君は布団に潜り込む。僕はタバコを吸ってからひと段落つけようとキッチンへ向かおうとしたが布団から伸びた手にそのまま引き摺り込まれた。

「抱き合いながらだと寝付けないね」

 そんなことを言われるから僕はゆっくり手足を解いた。にもかかわらずまた君の手足は侵略を繰り返していて結局は2人くっついてしまう。あったかいねあったかいよと油取り紙よりも薄く裏側の透き通るような愛情表現をした。それでも2人は楽しんでいたし、その薄っぺらな感じが僕達をうまく受け止めていた。

 小説や映画のような山場のある恋愛なんてしたくない。クライマックスなんていらない。ただ今のこの2人がダラダラとゆっくり続いていけばいいのになんて思っている。そんなことではうまく行かないと言われればそうなのかもしれないと考え込んでしまうものの、結局今の2人の心地よさに溺れている。僕は君が好きだと思っているけれどこの気持ちをうまく言葉にできない。『好きよりいい言葉が見つからない』ってJ-POPでは使われがちだけど実際言葉で表すには大きすぎる感情は僕の脳みそでは持て余している。『ことばは心を超えない』チャゲアスがそう歌うように僕の心は今人生で一番大きな気持ちを収納しているだろう。「君の好きなレコードをかけるよ」と『クラブナイト』最後のフレーズが終わった頃には2人とも口付けを交わし半分めくれた布団は邪魔になっていた。また寝るタイミングもタバコを吸いに行くタイミングも逃したけれど心は至って順調に満たされていた。


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