やまのくま どんぐりのぼうし
くまは、ゆめをみました。
くまがもりのなかをあるいていると、カサカサ、カサコソ、と、おとがしました。
くまが、まえあしのほうに目をやると、地面には、ちゃいろやきいろやあかい、落ち葉がいっぱい。
こんなにたくさんの落ち葉があるんだから、あきのゆめかもしれません。
木の枝には、もう葉はついていませんでした。
大きな木の幹の間から、明るい太陽の光がサンサンと差していて、まぶしくて、あたたかい日でした。
そのまま、もりをすすんでいると、ひろばがみえてきました。
ひろばの奥には、おおきな屋根のついた屋台がありました。屋台になにか、まるいものをたくさんならべて、売っているようです。
ちゃいろやきいろやあかい、まるいもの。
くまは、それがなにか知りたくなって、屋台のほうへあるきました。
屋台の前までいくと
「やあ、いらっしゃい」
屋台のかげから、おおきなどんぐりがでてきました。
鼻の下にひげをはやしたどんぐりで、ひげのさきはくるりと巻いていました。
くまはすこし、びっくりしました。なぜなら、どんぐりの背丈がじぶんとおなじくらいあったからです。
くまはいいました
「こんにちは。どんぐりさんは、わたしの知っている、どのどんぐりよりも、ずうっと大きいですね」
前足のてのひらをみせました
「いつものだと、このてのひらのうえに、5個はのるもの」
どんぐりはいいました
「ああ、きょうは、ぼうしを売りたくてね。それで、屋台を引いてきたから、大きなすがたのままで、もりにいるんだよ」
くまはなにもいわず、屋台の上にならんでいるまるいものをみていました。
よくみると、どんぐりのかさぼうしでした。
かさぼうしのうえに、ちゃいろやきいろやあかい葉の飾りがついていて
毛糸のつばがついているものや、耳あてがついているもの、あかい木の実の飾りがついているものも、ありました。
いろいろなデザインのぼうしがあり、くまは、かわいくて、すてきだな、これをかぶってもりあるきしたいな、とおもいました。
「うらじはぜんぶ、けいとだよ。あたたかいよ。ぜひためしにかぶってみてよ」
くまは、白いつばとピンクの耳あてがついたぼうしをかぶってみました。
ふんわり、あたたかい、とおもいました。
そうして、かがみをみてみました。
「とてもいい、とてもよくにあっていてすてきだ」
くまは、とてもかわいいぼうしをすきになって、どんぐりのおじさんも、よろこんでいました。
くまは、ぼうしをかいました。ぼうしをかぶって、また、もりのなかをあるきだしました。
カサカサ、カサコソ、カサカサ、カサコソ…
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