インターネット

インターネット・オヤゴコロ

この記事の要約:『ルビィのぼうけん インターネットたんけん隊』を翻訳しました。子どもが安全に知識を持ってインターネットの良いところを体験するために、大切な本だと思うので、よかったら手にしてみてね。


インターネットを爆破したいと思うことがある。

いま二歳になったばかりの君が、いつか少し大人になって、インターネットで詐欺にひっかかって、親に隠してお小遣いを全部振り込んじゃったり、楽しい動画を見るつもりで残虐動画を見せられて何年も悪夢にうなされたり、友達とかいう名前の、実は同い年っていうだけで寄せ集められた学校ってところのLINEグループで悪口を書かれていじめられたり、彼氏に送った裸の写真をみんなに回し見されたりすることがあったらと想像するだけでインターネットを爆破してやりたくなる。君が触れるすべてのインターネットを監視しフィルターをかけて送受信を制限し記録し保護するべしという気持ちが高まる。おかーさんはすこしヤンデレの気質があるのだ。

けれどそれはできない。なぜならば君とインターネットを愛しているからだ。インターネットは自由でなければならない。君の魂も、髪の毛の一筋から指先に至るまでの身体とその行動すべても、君の意思と責任において自由でなければならない。たとえ今は、お風呂上がりに走り出す君を、バスタオルではがいじめにしてパジャマを着せることがあってもだ。

そして君とインターネットを信じているからだ。インターネットには無限の可能性と、人間の善意と叡智があり、新しい形の、あるいは人間が人間の関わりの中で脈々と受け継いできた形の、人間のつながりがある。君は自分の意思と責任とそして愛をもってその中に入り、新しい世界を知り、知恵を学び、君の機知や優しさで誰かを笑わせたり、ときに傷つけてから謝ったり、ふいに分かり合う喜びを知ったりする。それは親が手取り足取りガイドしていてできることじゃない。君はこの、いつでもどこでもインターネットとつながっていて、「リアル」の半分がネットワーク上にあるような世界で、たった一人の君として生きていく。

たくさんの子どもたちがそうだ。そんなふうにインターネットともに生きていくだろう。だけどインターネットは、知識のない者に、不平等だ。子どもが知識で劣るのは当然のことなのに、知識のない者を嗅ぎあてて牙を剥く悪意があちこちにある。はじめに想像したような「悪いこと」に、今このとき苦しんでいる子どもがたくさんいることを考えると心がぎゅっと痛くなる。しかたない爆破だ。ちがう、知識だ。

博士みたいに詳しくなくていいんだ。ただインターネットについて、どんな仕組みで動いているのか、どこに気をつければいいか最低限知っておくことは、君を守る。知識は、わたしが仕掛ける監視ログやフィルターや爆弾よりずっと確かに君の力になる。

だからわたしは、わたしの翻訳のしごとに、『ルビィのぼうけん インターネットたんけん隊』が加わってとてもうれしい。この絵本が、まずインターネットの楽しさと、インターネットがみんなで創り上げるものであることを語ってくれるのがうれしい。それから、次のような内容のページがあるのがうれしい。大事なところをまとめるね。

安全なインターネットのルール:

・全部が本当ってわけじゃない
・個人情報はその人だけのもの
・インターネットは、どんなことも忘れない
・いじめは最悪だ(反応しないで、頼れる人に相談しよう)
・パスワードは大事
・悪いソフトウェアは、かくれてる

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こんなページもある。事実と、意見を区別しようってページ。

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本にはない、「ルビィの安全なけんさくのヒント」もインターネットには公開されているから、PDFをダウンロードすることもできる。https://www.shoeisha.co.jp/book/rubynobouken/play/23

ヒント1: 記事を書いている人の名前、日付、かたがきをチェックしよう

ヒント2: たった一つの新聞やウェブサイトだけがその話を伝えていない?

ヒント3: 情報の出どころが2つ以上ある?

ヒント4: URLはあやしくない?

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たったこれだけの知識と心がまえだ。でもこれだけで、どれだけの悪意や不幸やまちがいを避けることができるだろう。インターネットは、どれだけ人間の幸福に役立つ場所になるだろう。

もちろん、ぜったいに失敗しちゃだめだなんて言わないよ。何かあったら相談してほしい。わたしも、君に相談してもらえるくらい、信頼できる大人になれるよう努力する。でももし君がわたしではなくて、他の信頼できる大人を頼るなら、そんな関係を見つけられた君のことを誇りに思うことにするね。

ちょっと前にさ、アメリカのお母さんが、こどもにスマートフォンを持たせる時に渡した約束が話題になったの、知ってる? 「スマフォ18の約束」とかでググったらでてくる(「ググる」って言葉も君がこれを読むころにまだ残ってるんだろうか)。いいんだけど、気持ちはわかるんだけど、ちょっと聴く音楽にまで口を出すのはしんどくない? って思っちゃった。別にパズルゲームも、しなくちゃだめってことはないと思う。わたしが願うのは、ただ、君ができるだけ安全で、幸福で、悪意と狡猾さから身を遠ざけていられること。それから君が悪に加担しないこと。

わたしはインターネットが好きだよ。インターネットで出会ったたくさんの人たちや、その言葉や、表現が好きだ。人のつながり方や、やさしいまなざしが好きだ。インターネットの外で出会ったいろんな人たちや、言葉や、表現と同じにね。君にもこれから、インターネットがそういう場所だったらいいなと願っている。

君や、君みたいなたくさんの子どもたちにとって、この世界がよい場所であってほしいと願っている。それだけなんだ。


『ルビィのぼうけん インターネットたんけん隊』(翔泳社、2018/12/21 刊行予定)

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翔泳社ページ:https://www.shoeisha.co.jp/book/detail/9784798159867

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