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5men out の思想 得点期待値の高い場所には立つな。


先日、ボストン・セルティックスの優勝をもってNBAファイナルが幕を閉じた。その中で、ボストン・セルティックスが「5men out」という攻撃戦術をとっていた。従来、バスケットボールでは、少なくとも1人は3ポイントラインの内にポストアップさせるのが定石であった(例えば、センターをローポストに配置していた。)この戦術(いや選手の初期配置といった方がいいだろう。)は、3ポイントラインを取り囲むように5人の選手を立たせるものである。
なぜ、ゴールから最も遠い場所に選手を立たせるのだろうか。
バスケットボールで最も得点期待値が高い場所はどこだろうか。それはもちろんゴール下である。それならば、ゴール下にセンターを立たせ、そこにボールを入れ、シュートを打つのが一番ではないだろうか。

しかし、2000年代に入りスポーツ統計学が進化し、「ペース&スペース革命」が起こった(詳細は、後に、書評として公開したい。)
この「ペース&スペース革命」の要諦は、
①まず相手方守備をゾーンからマンマークにさせる(選手間の距離を広げる)。
②マンマークにさせた後、最も1対1のマッチアップで優っている選手に、得点期待値が高いゴール下でシュートを打たせる。
③そのため、ゴール下にその選手が飛び込む、あるいはカットインドリブルをするスペースを空けておく。ここで、注意が必要なのは、ゴール下に自チームの選手を立たせないこと。すなわち、ゴール下から相手ディフェンダーを除くということである。
以上のシンプルな思想である。

ここで、少し強引ではあるが、この思想をサッカーにあてはめ、プレミアのトップチームがいかに攻撃時に選手を配置しているか、見てみるのも面白いと思う。

例として、現マンチェスター・シティー監督ペップ・グアルディオラがバルサに持ち込んだとされる「偽9番(False nine)」の思想(その起源については、様々な説があるが、ペップの言葉では友人の「水球」の試合をみていて思いついたらしい。ここでは起源については争わない。)をあげたい。

サッカーにおいて最も得点期待値が高いのはどこだろうか。大体の人がペナルティー・スポットのあたりだと言うのではないだろうか。
そう、ここでシュートを打ちたいのである。ゴール下と同じく。
その仕組みを説明する前に、前提としてマンマークをしなければならない絶対的なストライカー(メッシ)が必要である。
この絶対的ストライカー「偽9番」は、ペナルティーエリアに入らない限りで、フィールドの中央レーンに立つ。もし、「偽9番」にセンターバックがついてこれば、単純化すればペナルティー・スポット付近はディフェンダーが1人少なくなる。逆に、マークがついて来ないのならフリーとなりシュートするなり、ドリブルするなりして得点すればよいのである(メッシなら可能である。)
特に、逆足の絶対的アタッカーをウィングに置くチーム(例えば、アーセナルで言えばサカ)なら、「偽9番」がペナルティーエリア内に入って、マークをつれてきたらペナルティーエリア内が混雑して迷惑駐車状態になる。
もちろん、「偽9番」以外の選手もポゼッションの初期配置としてペナルティーエリア内に入ってはならないのが前提である。
ペナルティーエリアを取り囲むように、左右ウィング、「偽9番」、インサイドハーフ2人を計5人を配置するのである。

サッカーの攻撃戦術には、タームとして「5レーンの活用」という思想がある。いわゆる「ハーフスペースうんぬん」という話である。筆者は、この「5レーン」という考え方を「5men out」と呼んでみるのも面白いのではないか、と考えている。というより、分かりやすいのではないか、と考えている。

これは、どのスポーツにおいても頻出する「スペース」をスポーツ間で横断的に適用してみた論考である。
スポーツ戦術には、意外と共通する思想を発見することができるのである。

このような観察(spectete)をしてみるのも一興である。

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