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慢性的な痛みの軽減、睡眠の質を高める認知行動療法

今回は、下記文献をベースにまとめていきます。

文献の紹介

タイトル

Sleep Disturbances in Chronic Pain: Neurobiology, Assessment, and Treatment in Physical Therapist Practice

著者

Jo Nijs

はじめに

・慢性疼痛患者の不眠症は非常に多く存在します。
・認知行動療法は、慢性疼痛患者における睡眠の開始、効率、維持、睡眠の質の認識、日常活動に対する痛みの干渉の改善に有効です。
・慢性疼痛と不眠症の併存する患者に対する単独治療ではなく、運動療法や疼痛に対する認知行動療法などを組み合わせるとよいとされています。

不眠症の基準とは?

・30分以上の眠るまでにかかる
・眠ってから意図しない時間に起きる
これらが、3ヶ月以上、週3日以上ある場合は、不眠症と判断されます。

慢性的な痛みを抱えている人の53~90%は、不眠症を抱えているとの報告があり、非常に多いのがわかります。

睡眠をさらに細かく評価するには、睡眠日誌、不眠症重症度指数、ピッツバーグ睡眠質指数、エプワース眠気尺度などの質問表で判断していくことになります。

では、一般的な質問項目とその解釈をみていきましょう。

睡眠に関する質問と解釈

質問: 起床時に爽快感を感じますか?

解釈
しっかり回復できない睡眠は睡眠に問題を抱えている可能性があります。

質問:24時間のうち、どれくらいの時間をベッドで過ごしていますか?

解釈
ベッドに入った時間と出た時間、そしてベッドで起きていた時間(つまり、睡眠効率)を考慮して解釈する必要があり、夜間のベッド滞在時間だけでは治療対象とはなりません。

質問:夜中に何時間くらいベッドから出ていますか?もし、患者が夜間に30分以上ベッドから出ているようであれば、ベッドから出ている間に何をしていますか?

解釈
一般的に、この問題は睡眠の質の低さと関係している可能性があります。夜間のベッドを離れている間の活動は、肉体的・精神的な刺激を与えず、リラックスできるもので、さらに睡眠を妨げないことを目的とする必要があります。

質問:寝付くまでにどれくらい時間がかかりますか?

解釈
理想的には、睡眠潜時は30分以内であるべきです。
寝付くまでの時間が30分より長いようであれば、 寝付くまでを短くすることを目的とした治療をすべきです。
治療
・就寝時間を遅らせる(睡眠圧を上げる)
・刺激的な活動や食事(エネルギー)摂取量を減らす
・寝る前の1時間にリラックス法を用いる
など

質問:入眠後、ベッドで起きている時間はどれくらいですか?

解釈
もし、患者が入眠後にベッドで起きている時間が30分以上であれば、この問題に対処する必要があります。
治療
・寝室を出て、再び眠気を感じるまでリラックスできることをする
・行動変容を促すために、動機づけ面接を行う
など

質問:予定した起床時刻より前に目が覚めますか?

解釈
ベッドから出る前にベッドで起きている時間は、できるだけ短くする必要があります。理想的には、最終的な覚醒後、できるだけ早くベッドから出ることです。
治療
・起きたらにベッドで眠ったままではなく、できるだけ早くベッドから出る
・行動変容を促すために、動機づけをします。

質問:夜中に目が覚めますか、覚めるとしたら何回ですか?

解釈
平均して、決められた睡眠時間内に意識的に目覚める回数は2回以下であるべきです。
一晩に1回(例えば、トイレに行くため)目が覚めても、問題ありません。
治療
・認知行動療法で覚醒を減少

質問:睡眠効率はどのくらいか?

解釈
睡眠効率は(総睡眠時間/総就床時間)×100で求めます。
睡眠効率は90%以上が理想的ですが、十分な睡眠時間があれば85%以上でも可とされます。
治療
・睡眠効率が低下している場合は、就寝時間の制限(表2)が必要な場合がある。現実的な睡眠時間との妥協点を見出すことが重要である。

質問:ベッドで起きている間、時間を気にしていますか?

解釈
就寝中に時計を気にすると睡眠の開始と維持を乱す可能性があります。

質問:就寝前に刺激的な飲み物を摂取していますか?

解釈
カフェインなどの刺激的な飲料の摂取は睡眠の開始と維持を乱す可能性があります。

質問:就寝間際に集中的に運動していますか?

解釈
就寝前の激しい運動は睡眠の開始と維持を乱す可能性があります。

質問:寝る前に何を食べますか?

解釈
カロリーの高い食べ物や消化管での吸収過程に影響を与える食べ物は、睡眠障害を引き起こす可能性があります。

質問:日中や夕方に寝ているか、寝ている場合はどれくらいの時間、どれくらいの頻度で寝ているか?

解釈
不眠症の患者には、一般的に昼寝は勧められていません。
しかし、仮眠時間が20分以下で、概日リズムに適したタイミング(15時30分以前)であれば、許容されています。
そうでなければ、昼寝は睡眠圧を下げたり、夜間の睡眠を妨げたりする可能性がある。

質問:あなたの寝室は十分に暗いですか(例えば、日の出後でも)?

解釈
周囲の明るさは睡眠の質と継続を妨げる可能性があります。

質問:寝室の温度は何度ですか?

解釈
理想的には、寝室の温度は16℃~19℃が推奨されています。

質問:寝室は十分な静けさがありますか?

解釈
寝室は騒音から隔離されている必要があります。

質問:睡眠に満足していますか?

解釈
満足していれば、問題はありません。
そうでなければ、睡眠の質をモニターしていく必要があります。

質問:日常的なストレス要因に対処するのに苦労していますか、苦労しているとすればどのようなストレス要因ですか?

解釈
ストレスが問題である場合、ストレスが睡眠に影響を与えるかどうかを判断していきます。
治療
ストレスが睡眠に悪影響を及ぼす場合、認知行動療法の治療にリラクゼーショントレーニング/ストレスマネジメントを取り入れていきます。

質問:睡眠のために何らかの薬物治療を行っていますか?使っている場合、それらは有用だと思いますか?また、そのような薬物療法を行うか中止しますか?

解釈
睡眠薬の単独投与は慢性不眠症の治療には推奨されていませんが、一時的な効果や治療反応の改善が得られる場合があります。

これらの質問に答えることで、睡眠のどこに問題が生じているかがわかります。
では、どのようにして睡眠の問題を解決するかみていきましょう。

慢性的な痛みと不眠症がある人ができる認知行動療法

そもそも認知行動療法とは、物事のとらえ方(認知)や行動に働きかけて、ストレスを軽減する心理療法のことです。元々「認知療法」と「行動療法」が別々に発展しましたが、近年では「認知行動療法」と合わせて呼ばれています。

簡単にできる方法

「何時だから寝ないと」などの固定概念をなくし、眠くなったらベッドに入ることが重要になります。
自分の睡眠に対する認識を変え、行動を変えていくことが、痛みの軽減、睡眠の質向上に繋がります。

では、具体的にすべき行動をみていきましょう。

①就寝時間を1週間の平均睡眠時間と同程度に制限する。
 平均が睡眠時間が7時間であれば、7時間のみベッドにいるようにする。
 起きる時間は同一にするとさらに効果的です。
②睡眠の効率が良くなったら、総睡眠時間を週単位で徐々に増やしていく。
 ベッドで起きている時間が減ってきたら、睡眠時間を徐々に増やす。

これらの行動がなぜよいか

・体内時計を整えることができる
・ベッドは寝る場所と脳に認識させることができる
からです。

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